今日の早朝、日仏合同遠隔授業の第二回目が行われた。
昨年度の反省を踏まえて、今年は日仏合同チームでの作業をできるだけ早く始めることができるように、今日の授業以前にすでにチームは教員の側で構成してあり、今日からブレイクアウトセッションを使って早速チーム内での話し合いを始めさせた。ブレイクアウトセッションの間、教員は原則介入しないので、話し合いの中身はセッション後の各チームの代表からの報告によって知るほかないが、その報告によると、どのチームでもかなり活発に話し合いができたようで、まずこちらの狙いどおりのすべりだしと言ってよい。
それぞれのチームが今後来年二月にストラスブールでする発表に向けて今日から準備を始められるように、各チームの発表テーマも今日決定した。
この決定までの過程についても、去年の反省を踏まえて、学生たちに自由に決めさせるのではなく、教員側があらかじめ四つのテーマを提示し、事前に日仏それぞれのグループ内で希望優先順位について話し合っておくように指示し、今日のブレイクアウトセッションで希望優先順位を日仏合同チーム内で決めさせ、セッション後に各チーム代表に発表させた。その結果を見て、最終的には教員側でテーマを決定した。
私が準備し日本側の担当教員の承認を得てから学生たちにあらかじめ伝えおいた四つのテーマは、環境問題、生命倫理、動物倫理、肉食主義の四つである。それぞれのテーマごとに、学生たちが優先順位決定の際の参考になるように、いくつかキーワードと一冊の参考文献を挙げておいた。
環境問題については、生態系(エコシステム)、環境倫理、森林破壊、気候変動、SDGs、自然と技術、人間中心主義、媒介者(médium)としての人間、絶対的他性としての植物、ガイア(地球という生き物)。参考文献:今道友信『エコエティカ―生圏倫理学入門』講談社学術文庫,1990年。
生命倫理については、生命権(生存権)、個体性、生物多様性、種差別主義、反種差別主義、死生観、生命(zoè)と 人生(bios)、生命(vie)と〈生きる〉( vivre)、生命科学。参考文献:エマヌエレ・コッチャ『植物の生の哲学: 混合の形而上学』勁草書房,2019年。
動物倫理については、動物の権利、アニマルウエルフェア、ヴィーガニズム、動物虐待、感覚性、 人間の責任・義務、他者としての動物、動物としての人間、主体性、植物と動物の区別と関係、ペット、家畜、野生動物、害獣。参考文献:田上孝一『はじめての動物倫理学』集英社e新書、2021年。
肉食主義については、菜食主義(végétarisme)、植物主義(végétalisme)、食文化、食産業 培養肉、民俗、風習、宗教、共生(convivialité)、カニバリズム。参考文献:ドミニック・レステル『肉食の哲学』左右社、2020年。
優先順位発表の結果、生命倫理と肉食主義を第一位としたチームがそれぞれ一つ、二チームが動物倫理を第一位とした。こちらの当初の目論見としては、四チームにそれぞれ別のテーマに取り組んでほしかったのだが、環境倫理はどのチームも優先順位が三位以下だったので、それを無理強いしても今後の共同作業のモチベーションを低下させることにもなりかねないと教員側が判断し、二チームが動物倫理をテーマとして選ぶことを許可した。環境問題については、私がストラスブールでの日仏合同ゼミのどこかで発表することにした。
上掲のいずれのテーマを選んでも、同じような問題に行き着く可能性は大いにあるが、それはそれでよいと教員側は考えている。むしろそのほうが二月の合同ゼミの際にチーム間での活発な議論をもたらしてくれるだろうと期待してもいる。
というわけで、ここまではほぼ順調に作業計画が進んでいる。