内的自己対話-川の畔のささめごと

日々考えていることをフランスから発信しています。自分の研究生活に関わる話題が多いですが、時に日常生活雑記も含まれます。

今日からパスカル

2023-10-01 20:57:51 | 哲学

 最初に読んだ哲学書が何だったか、もうよく覚えていない。多分、高二のとき、倫社の課題図書として読んだ『ソクラテスの弁明』。
 授業とは無関係に、高校を卒業するまでに読んだ記憶がある哲学書といえば、ショーペンハウアー『自殺について』。私が高二のときの十二月に癌で亡くなった父が、その死の数ヶ月前、私の勉強部屋の本棚に角川文庫版の『自殺について』を見つけて、「おまえ、なんでこんな本読んでいるんだ」と心配そうに聞かれた覚えがある。なんて答えたんだっけ。「いや、べつに」とか、曖昧な返事をしただけだったかな。
 そのとき自殺を考えていたわけではない。思春期にありがちな煩悶に苦しんでいたに過ぎなかった。そもそも、ショーペンハウアーの自殺論、ただの一行も理解できなかったしね。
 大学入試が終わって入学までの二ヶ月あまりに毎日読んだのがパスカルの『パンセ』だった。なんでそうだったのか、もう覚えていない。読んだのは新潮文庫の津田穣訳だった。肝心の中身については、情けないことに、何も覚えていない。
 大学入学後、大学図書館の閉架書庫で見つけた『パンセ』の原書に、今でも理由がよくわからないが、異様に惹きつけられた。第二外国語として選択していたのはドイツ語で、フランス語の知識はほぼゼロ。なのに『パンセ』を原書で読みたいと思った。でも、読めない。で、毎日図書館に通って、筆写した。「まるで修行僧みたいだねぇ」と友人たちにからかわれた。それにもめげず、筆写を続けた。どこまでいったか覚えていない。
 その後、万葉集の勉強に没頭し、パスカルから遠ざかった。
 一九九六年、パスカルの国に来た。以来、ずっとそこにいる。なんで? よくわからない。でも、パスカルは私にとってやはりかけがえがないと、その文章を読むたびに思う。