内的自己対話-川の畔のささめごと

日々考えていることをフランスから発信しています。自分の研究生活に関わる話題が多いですが、時に日常生活雑記も含まれます。

まるでおとぎ話の世界に生きるように、遙かなる部族たちとその神話とともに生きる勤行のような日々

2017-10-01 22:24:01 | 読游摘録

 今日日曜日は、朝水泳に行った後は終日、水曜日の修士の合同演習の予習と11月はじめのパリでの発表の準備とをかねて、レヴィ=ストロースの諸著作とそれに関連した文献を読んで過ごした。
 後に膨大な四巻本として出版される『神話論』を執筆しているときの回想として、レヴィ=ストロースは次のように述懐している。

J’ai commencé à me pencher sur la mythologie en 1950, j’ai achevé les Mythologiques en 1970. Pendant vingt ans, levé à l’aube, soûlé de mythes, j’ai véritablement vécu dans un autre monde.
[...] Je vivais avec tous ces peuples et avec leurs mythes comme dans un conte de fées.

De près et de loin, Odile Jacob, coll. « Poches Odile Jacob », 2001, p. 185.

私があの神話の研究を始めたのが一九五〇年、『神話論』を書き終えたのが一九七〇年です。二十年の間、夜明け前に起きて仕事をし、神話に酔ったようになって、私は本当にまるで別世界に生きていたようでした。
 [...] 私はこれらの部族たちと一緒に、また彼らの神話とともに暮らしていました。まるでおとぎ話の世界に生きているようでした。

 長い年月に渡る「異界」へのこのような日々の勤行のような遊行が、近代的自我・自己同一性・主体性に固執した、実のところ現実に盲目な現代哲学者たち(つまり、彼らは、つまるところ、哲学者でさえなかった)には不可能であった現代社会への透徹した眼差しを精錬させることをレヴィ=ストロースに可能にしたのだろう。