今朝も雲が低く垂れ込めて、太陽は姿を見せない。
日差しがない分いくらか涼しいので、野良仕事も少しは楽である。
夏の盛りは、集落の草刈りが盛んに行われ、あちこちから草刈機のエンジン音が聞こえてくる。
田畑の堆肥や牛舎に敷くため、近所の老夫婦は連日の草刈りで、次々に干草の塔を立てていく。
3メートルほどの高さに積み上げられているが、風や雪で倒れたところを見たことは無い。
支柱1本でバランスよく積む技は、年季が入っていて一朝一夕では出来ない。
おばあさんが草の束を放り上げると、上で待ち受けるおじいさんが支柱に絡めながら固定していく。
息の合ったコンビが、何十年にもわたって続けてきた仕事は、掛け声が無くても間が空くことは無い。
家の前には3枚の廃田があり、以前は3軒の家が耕作をしていたが、それぞれ町へ移住して今は荒地になっている。
草が生い茂って溝を埋め、道路にも覆い被さっていて見通しが悪いので、毎年道路際だけを刈っている。
草いきれと湿度の高さでへばってしまったが、予定をしていた分は終えることが出来た。
刈り草の山が10個も出来たが、積む技もないしコンビを組む相手もいないので、後日田んぼの脇へ運ぶことにして、今日の野良仕事は終わった。
老夫婦は夕方まで、同じ仕事を根気よく繰り返していた。
この辺りのお年寄りは、余暇とか余生を楽しむ概念は薄いようで、体が動く間は働き続ける。
敬老パスもシルバーシートも無縁の暮らしが、うらやましく思うこともある。