
昨日登った丸黒山(1.956m)は、乗鞍岳から西に延びる分水嶺の一角にあり、日影平山~六方山~宮峠~位山~西ウレ峠へと連なっている。
南へ流れる渓谷は飛騨川から木曽川に集まって太平洋に注ぎ、北は宮川から神通川となって日本海へ注いでいる。
この広大な山域の盟主乗鞍岳の前衛の丸黒山は、周囲の山々の眺望が美しく、自然も豊かで季節を問わず訪れている。
登山口は高山市朝日町青屋から長倉本谷を辿るコースと、高山市岩井町の青少年交流の家から登るコースがある。

朝8時に交流の家の駐車場に車を置いて、裏手の林道を日影峠へ向かった。
林道の両側は、ナラやシラカバ、ブナなどの落葉樹林と、モミやオオシラビソ、ツガなどの針葉樹林が交ざりあって織り成す森の風景は美しい。
まだ雪が少なく、笹や潅木に邪魔をされて森の奥深くへは入れないが、間もなくスノーシューを付けて自由に歩けるようになる。

日影峠から日影平山(1.595m)へ登り、藪を漕ぎながら鞍部まで下って、もう一度登り直すとブナの木平に着く。
ブナの巨木が残る台地からは、岩井谷越しに北アルプスの眺望がすばらしい。
尾根を辿って上り下りの繰り返しが続き、岩井谷乗越(のっこし、峠)、平金乗越を過ぎると枯松平避難小屋に着く。
ここがほぼ中間地点で、この先に根性坂とかガンバル坂と呼ばれる急登が待ち受けている。
40度ほどの勾配に階段が刻んであり、まだ雪が少ないので普通に登れるが、積雪が多くなると滑り台状になってしまうので、両側の立ち木を頼りに体を引っ張り上げて登るしかない。

少しずつ高度を上げていくと前方が開け、乗鞍岳が正面に見える池見台に着く。
乗鞍岳には火山湖がたくさんあって、その一つがここから見えることから名づけられたと思うが、目を凝らしても池は見えなかった。

なだらかな坂をしばらく登っていくと、山頂の小さな社が目に飛び込んできた。
昼食は手製のお握りにカップ麺と、食後の熱いコーヒーにクッキーは雪上レストランの定番メニューだが、ホテルのランチ並みにおいしかった。

今までは雪団子をかじったり、雪を溶かして料理をしても気にすることはなかったが、何となく原発事故が頭をよぎる。
まさかこんなの真っ白で無垢な処女雪が、汚染されているとは思いたくもない。
前回登ったときは携帯が通じなかったが、谷や鞍部以外はすべて通じるようになっていた。
ここに限らず、繋がる範囲が広がっていくので、GPSの利用や緊急連絡も可能になっていく。
山の環境も少しずつ変わっていくようだ。
風もなく穏やかな山頂に少し長居をしすぎたので、帰りはノンストップで下山した。

夕映えのカラマツ林や赤く染まる北アルプスを見ることは出来たが、4時過ぎのゴールは冬山のルールから外れている。
日が沈むと温度も急に下がり、森の中はすぐに暗くなる。
反省や山への思いは何かとあったが、初冬の山は動物の足跡以外に人影もなく、広大な山域を心行くまで楽しむことが出来た。
デジブック 『初冬の丸黒山』