雨は乾いた畑には恵みだが、冷たい空気も運んでくるので、せっかく育ち始めた苗が伸び悩む。
元気に鳴いていた野鳥達も声を潜め、廃屋に張り巡らされた蜘蛛の巣の主もどこかへ隠れてしまった。
山里の雨は、冷気のほかに静けさも持ってくる。
用を思い出して、これから名古屋へ。
2~3日は賑やかな暮らしで、気分転換が出来そう
先日、椅子の仮組みを終えたのを、もう一度分解して脚や背板、肘掛け等の曲線加工をし、各部材の面取りと表面仕上げをした。
今日の工程は本組みで、各部材のほぞ加工をした接合部分に接着剤を塗って組み立て、クランプで締める作業である。
ガタが出ないように均等に締め付けながら、計測道具で必要な角度が出ているかを確認する。
接着剤の固まるのを待って、クランプを外して椅子のフレーム部分が出来上がった。
後は、塗装をして、座をペーパーコードで編み、座の下に収まる箱を組み込めば完成する。
今回の椅子は、肘掛が左に一つだけ付き、小物などを入れる引き出し様のものが座の下にあるというユニークな家具である。
片肘は、小型軽量の椅子でも窮屈さが無いし、収納箱も使えそうだし、面白いパーソナルチェアが出来上がりそう。
今日の晩飯は、山うどの豪快な姿作り?とワラビのお浸しに行者にんにくご飯である。
山うど
山うどの姿作りは、先日山菜採りに来た友人から教わった食べ方で、採りたての山うどを皮をむいて、そのまま味噌をつけて食べるという究極の簡単料理だ。
白い部分は甘みがあり、青い部分もほんのりとした苦味と独特の香りが漂ってくる。
短冊に切ったり、水に晒したりしていたけど、この方が簡単だし素材の味もよく出ていて旨い。
行者にんにく
行者にんにくご飯は、細かく刻んだ行者にんにくの葉を醤油でまぶし、熱々のご飯に乗せるだけである。
昔、山奥で修行した行者がこれを食べて厳しい山岳修行に耐えたといわれているけど、ポパイのほうれん草並みの効果があるかも知れない。
メインは冷凍シシャモだけど、これが岩魚の塩焼きなら、完璧な山家料理になったのだけど・・・
今日も朝から、爽やかに晴れ上がった。
日差しが強く、外にしばらく居るだけで、紫外線がヒリヒリと肌にしみ込んでいくようだ。
畑仕事は朝夕にして、日中は作業場で過ごす時間が増えてきた。
ユキ(柴犬)は、日なたで無防備に寝そべっている。
暑さに弱い犬も、さほど暑さは感じないようで、まだ日陰を探して移動するようなことは無い。
飛騨も標高の高いところは、日が落ちると急に気温が下がり、いまだに暖房がほしくなる。
濁った夕焼けは天気が崩れるというけど、明日は前線が近づいてくるようだ。
裏山の雑草や熊笹が伸び始めたので、今日は下草刈りの準備をした。
数年前に、日差しを遮る杉の木を伐採したら、ワラビやゼンマイ、タラなどがたくさん出るようになり、栗や楢、朴、カエデなどの幼木も育ってきた。
種が何年も地中に眠っていて、まわりの環境がが良くなったので、芽を出したのだろう。
2007年6月28日撮影
自生している笹ゆりも毎年数が増えて、6月末にはきれいな花と香りを楽しませてくれる。
花を付けていない時は、笹とそっくりなので、間違えて刈り取ってしまう事が度々あったので、今日は笹ゆりのそばにマークを立てた。
いつも登山の折に、道に迷わないように持っていく赤い布切れを25本取り付けた。
まだ隠れているのがあるかも知れないけど、これで安心して草刈りが出来る。
久し振りの大雨も午前中には上がり、爽やかな日差しが戻ってきた。
日ごとにまわりの緑が濃くなっていくけど、雨上がりはいっそうその感が強い。
池の睡蓮も蕾が赤く膨らみ、間もなく開花の時期を迎えそうだ。
田植えを終わった田んぼからは、カエルの大合唱が聞こえ、ツバメが超低空で餌をさがしている。
雨上がりの風景は爽やかで、人も動植物も急に元気を取り戻すようだ。
3日前に巣を見た時は、口をいっぱいに開けて餌を待っていたので、ヒナたちは元気に育っていると安心していた。
久し振りに巣を覗いてみたら、空き家になっていた。
こんな短期間に巣立つのだろうかと、一瞬不審に思ったけど、無防備な状態が長く続くのは危険なので、野鳥たちの一人立ちは早いのかもしれない。
親鳥が巣の近くで、落ち着きの無い様子で歩き回っているし、畑で日向ぼっこをしている蛇も増えてきたのも気がかりだ。
野生動物や昆虫たちの感動的な命の営みを目にする一方で、残酷なシーンを見かけることも度々ある。
自然の摂理と微妙なバランスで生態系が維持されている以上、万一ヒナたちが襲われたとしても、自然の姿として冷静に見なければならない。
それより、不条理で残酷な事件を引き起こす人間が、万物の霊長などと言うのはおこがましい限りだ。
久し振りに、隣の集落に住む老夫婦を訪ねてきた。
私の家から大八賀川を4kmほど下った所にあるけど、渓谷沿いの道は崩落が多く、いつも通行止めになっている。
直接行くことが出来ないので、町の近くまで下って、国道361号線(木曽街道)を通って行くことになる。
猫の額ほどの小さな土地に、5軒の家が点在しているけど、子供も若者も一人も居ない。
今日訪ねたのは、80代の老夫婦だけの家で、去年までは自家用の米だけは作っていたけど、イノシシの被害が多く、畑作だけにしてしまったとの事だった。
隣の家は2年前に耕作を止め、町へ移住したけど、ここの水が旨いので毎週湧き水を取りに来て、ついでにその水で風呂を沸かして入るのが楽しみで通ってくるのだと話していた。
狭い道をさらに上っていくと、3軒の家があるけど、いずれも老夫婦だけで小さな田畑を守っている。
私の住んでいるところも、飲料水とたばこの自販機が2台ある以外は何も無いところだけど、ここにはそれすら無く、世間話も暮らし振りも浮世離れした別天地だ。
北アルプスを望む
昨日は久し振りの好天に恵まれて、乗鞍山系の大崩山(2532m)と猫岳(2581m)に登ってきた。
独立峰の乗鞍岳は、北から南へいくつもの峰々が連なっている。
主峰の剣が峰は、スカイラインを走るシャトルバスの終点畳平から容易に登れるので、シーズン中は訪れるハイカーは多い。
北端に位置する大崩山や猫岳などは、厳冬期に山スキーのベテランがパウダースノーを求めて訪れることもあるが、それ以外にこの山に登る人はいない。
登山道は無いので、平湯峠からスカイラインを5kmほど歩き、途中から猫岳へ行く尾根を見つけて急斜面を登っていく。
トウヒ、コメツガなどの針葉樹林がシラカバやダケカンバに変わり、森林限界を越えると前方に雪原が広がる。所々にハイマツが顔を出し、前進を阻まれるけど、迂回して生え際をアイゼンの爪を利かせながら登っていくと大崩山の山頂に出る。
広い山頂からの眺望は素晴らしく、遮るものは何も無いので、360度の大パノラマが堪能できた。
猫岳は眼前に聳えているが、いったん鞍部まで下って、所々にハイマツが顔を出している急斜面をジグザグに登っていく。
なだらかな山頂は、風の通り道になっていて、雪が吹き飛ばされてハイマツに覆われていた。
ここからの眺めは、大崩山と同じであるが、乗鞍岳頂上方面と御岳の一部がここから見えた。
猫岳から乗鞍山頂方面
登山者から忘れ去られた山々は、自然のままの静かな姿でいつも迎えてくれるけど、やがて雪が消えれば深い藪に覆われて、人が入るのを拒むことだろう。
往復9時間の行動は、地図を見ながら練っていたルートを大きく外すことなく、大自然の景観を楽しむことが出来た。
乗鞍山系は、観光開発によって自然が無残に壊された姿と、太古のままの姿を辛くも留めている懐の深い山であることを実感した。
低気圧の接近で、昨夜からの激しい雨と風が、今日の午前中まで続いた。
畑の風除けが飛ばされた程度で、大した被害が出なかったのは幸いだった。
少し弱っていた野菜の苗が、元気を取り戻す恵みの雨になった。
木々の緑もいっそう鮮やかになり、藤の花もあちこちで開花して甘い香りを漂わせている。
桐の花も紫色で、遠くから見ると藤とそっくりだけど、花の色は桐の方が濃いようだ。
れんげつつじも今が盛りだけど、まわりの若葉の勢いが強いので、せっかくのきれいな花も陰になってしまう。
一雨で森も山も、表情が生き生きとしてくる。
先日、卵を温めていたキセキレイの子育てがどうなっているのか気がかりだったので、巣をそっと覗いてみた。
すでに孵化していたヒナが、小さな口をいっぱいに開いて、チチチッと鳴きながら餌をねだっている。
気配を知ったヒナが、餌を運んできた親鳥と思ったのかもしれない。
驚かせてはいけないと思って、その場を離れたら、ちょうどタイミングよく親鳥が餌をくわえて巣へ戻ってきた。
何となく餌を与えている様子は伝わってくるけど、食事中に近づくのは遠慮して、離れた所から見ることにした。
警戒しているのか、親は食事が終わっても巣を離れようとせず、巣の上に覆いかぶさるようにしてヒナたちを守っている。
観察を続けたいけど、これからは子育ての邪魔になるので、時々覗くだけにしてみよう。
運が良ければ、巣立ちの姿が見れるかも知れない・・・
名古屋で用事を済ませて、とんぼ返りで高山へ戻ってきた。
乾燥した日が続いているので、移植した畑の苗も気になるし、ゆっくり休養をと思いながらも、なんとなくこちらへ足が向いてしまう。
高速道路をを郡上八幡ICで下りて、度々ここで紹介している「せせらぎ街道」にさしかかると、どこも滴るような新緑で覆われていた。
美濃から飛騨へは、有料(400円)の坂本トンネルを利用する人が多いけど、峠越えの旧道は緑のトンネルの連続で景色も良いし、鹿や猿に出会うこともある。
坂本峠を下ったところにある、道の駅「パスカル清見」の裏を流れる清流は、水の色まで木々の緑に染まっていた。
そこからしばらく上っていった所にある西ウレ峠は、池や渓谷を巡る遊歩道やレストハウスなどもあって、今は山菜採りをする人たちが訪れている。
おおくら滝の麓にある「そば処清見庵」は、池越しの山の景色が好きで、よく昼食に立ち寄る。
今日食べたざるそばの上には、若葉がのっていたけど、新そばが出る頃には、真っ赤なもみじの葉が添えてある。
さりげない演出と、窓の外に広がる景色がそばの味を引き立ててくれる。
名古屋伏見のギャラリーで開催中の「やまと絵展」を見てきた。
今年85歳になる女性が余暇を利用して、40年間にわたって描き上げた作品の数々は見ごたえがあった。
着物の紋様や髪の毛の1本に至るまで、繊細で精緻な線描や、余白をうまく使った平面的な表現から、平安の雅な雰囲気が伝わってきた。
伝統的な手法と古くから伝わる画材を使い、長い時間をかけて描いた苦心と根気には頭が下がった。
縁があって桐の羽子板を作ったけど、それにも美しい大和絵が描かれていてうれしかった。