小学校以来の親友に、別れを告げてきた。
同じ飯ごうの飯を食った山仲間で、今まで弱音をはいたり、バテた姿を見たことがないほどタフな男だった。
去年の春から体調を崩し、最先端の医療に身を委ねながら、懸命に頑張っている病床で、励ます言葉も慰める言葉も見当たらなかった。
昔登った山をのんびり歩こうとか、彼がかつて駐在していた海外の地を案内してくれとか、他愛の無い会話をするしかなかった。
いずれも実現はしなかったけど、ようやく厳しい戦いも終わり、今はゆっくりと休んでほしいと願うばかりだ。
満開の桜に見送られ、千の風となった彼は、きっとこれからも槍や穂高の稜線で優しく頬を撫でてくれることだろう。 合掌