この時期は野山を歩いていたり、釣りに行って川に入っていたりすると何処からとも無く「ヤマユリ」とも「ジャスミン」ともいえる香りが漂ってくることが多いのですが、周りを見渡せば必ずと言っていいほどクサギの花が満開なのです。
クサギと言うと「臭い木」から名前が付いたということが頭に有るのか、多くの人に敬遠されがちなのですが、臭いと言っても悪臭ではなく何か栄養剤のような臭いで、若葉は山菜として食用にする地域もあるし、薬用や染料にも使っている身近な植物なのです。そして樹木学的にもクサギの花は非常に興味を持てる花なのです。
クサギ:Clerodendrum trichotomum Thunb.の属名:Clerodendrumは「運命の木」、種名の trichotomum は「三分岐」という意味で、花序の枝が3つに分かれていることから・・・写真(↑↓)で枝が三叉しているのが分かりますね。
そして開花前の花冠は萼片の中に隠れていて開花準備が整うと長い花筒を伸ばして花冠が突き出してきます・・・
花冠は五裂して裂片が開き始めると雄蕊が斜め上に突き出して、雌蕊はうなだれて下がっています。
次に花粉を出し切った雄蕊が下を向き始めると雌蕊が起き上がってきます。
そして雄蕊がさらに下がって花粉を受粉昆虫に受け渡しできなくなると、雌蕊の先がV字型に開いて昆虫が運んでくる花粉を受粉できるようになるのです。中央の花の雌蕊の先がV字になっているのが分かるでしょうか・・・
この仕組みは自分の花の花粉を受粉しないようにしているのだと言われていますが、同じ株内では開花時期がズレて長いのですから同株内での受粉は可能であって近交弱勢(近親交配で劣性遺伝を繰り返し形質の弱い個体がでること)の防止にはならないような気がするのですが何の意味を持っているのでしょうか?
ともあれ、クサギの花には雌雄の蕊が違う方向を向く雌雄離熟性と雌雄の蕊の成熟時期が違う雌雄異熟性を持っているのです。それにしても植物の世界って面白い仕組み、そして分からないことが多いですね・・・
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