釣りに行く途中で見かけた風景・・・ヤマユリが落石防止ネットの間から可憐な花を咲かせていました。
どうってことのない普通の風景のように見えますが、最近の我が家の辺りでは野生のヤマユリが激減していてあまり見られなくなっているのです。半世紀も前、私が子供のころは山野に普通に咲いていて、この球根を採集してきてユリ根のキントンを作ったほど沢山生えていたのですが、今では人家の庭でないと簡単に見られなくなってしまいました。
十数年前まではユリの根元に子供の手が入るぐらいの穴が開いていて上部がしおれていたのですが、これはニホンザルの仕業。最近は大きなすり鉢状に土が掘り起こされ周りには細長い楕円形を二本並べた蹄の跡がいっぱい付いているのです。これはイノシシ(イノブタ)の仕業で、他にもヤマノイモやクズなどの根を掘り、ミミズなどを探して掘り起こすため山の中は機械で耕耘したようになっています・・・ですから落石防止用ネットで奇しくも守られたヤマユリくらいしか見られなくなってしまったのです。(↓)イノシシの写真ですが毛が背中にしか生えていません。たぶん疥癬病に掛かっていたのでしょう。
同じように、尾瀬では増えすぎたニホンジカがミツガシワやニッコウキスゲに害を与えていて最近大きな問題になっています。
写真のような踏み荒らしもあってニホンジカがいなくなっても泥炭の回復には何百年とかかってしまいます。
一方、キキョウやオミナエシ、ワレモコウなども目にすることが少なくなってきました。これらの花は草原性の花で肥料や家畜飼料として草地の必要性が少なくなって草原が植林されたり開発されたりしてほとんど無くなってきたからなのです。↓オミナエシも人家の庭で見られるぐらいですね。
さらに綺麗な花や昆虫、珍しい花や昆虫は根こそぎ採集され、逆に身近で珍しいチョウを見たいという理由でゲリラ的に放蝶(放蝶ゲリラ)したり、釣って面白いという理由で在来魚を食べてしまうブラックバスなどをゲリラ放流している大馬鹿の輩もいて、元からいる生き物の生息地を奪っているのです・・・
人間にとってみれば生産性のない無駄な遊休地としか思えない場所を含め、身近な雑木林・草原・水田や畑、畔・小渓・水路など里山にモザイク状にある様々な自然に頼って生きていた生き物、それらが「食物連鎖」や「共生」などの関係で繋がって生態系が維持されていたのです。
生き物は、自分自身が生きること(個体の維持)と子孫を残すこと(繁殖)が仕事なのですが、食べるものが無ければ子孫は育つことが難しく、かろうじて育っても棲むところが少なくなったり、助け合って生きる植物や他の動物の個体数が減ってしまったり、繁殖相手の個体数も減って子孫を残すこともままならなくなってしまったのです。例えばクララとルリシジミの関係、例えばワレモコウとゴマシジミの関係、例えばウスバサイシンとヒメギフチョウの関係、例えばタナゴとマツカサガイとホトケドジョウの関係などなど・・・
過度の捕獲や採集、管理放棄、過度の開発・環境改変などによって生態系のバランスが崩れ、いろいろな生き物が急激に増え、いろいろな生き物が消え去ろうとしているのです。このツケは何時か人間自身の生存危機となって身に降りかかってくると思うのですが・・・
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