国語屋稼業の戯言

国語の記事、多数あり。国語屋を営むこと三〇余年。趣味記事(手品)多し。

中高生のための内田樹(さま) その1

2018-08-30 09:31:19 | 中高生のための内田樹(さま)
静かな一日。
朝起きてメールをチェックすると、多田先生からメールが来ていた。
前日、今度の広島での講習会に杖・剣を持参すべきかどうか、学生たちから問い合わせが続いたので、それを確認するために先生にメールを差し上げたのである。
「メールで失礼いたします。
今週末の広島講習会ですが、杖剣は持参したほうがよろしいでしょうか?
これまでの広島講習会は体術だけでしたが、何人かの部員から問い合わせがあり、『要らない』と断言するのもはばかられて、お訊ねする次第です。
お忙しい中、お手数ですが、『持参せよ』か『持参せずともよろしい』かだけお知らせ頂ければ幸いです。」
という私のメールに多田先生は次のようなご返事を下さった。
「内田樹様
広島で杖、木刀の稽古を行った事は、旧広大の道場で一回だけあります。
今回は私も杖木刀を持ってゆこうと思っております。
『持参せよ』
多田  宏」
私はこのメールを読みながら、足ががたがた震えた。
 
多田先生が広島での講習会を始められたのは先生が20代の頃からのことと伺っている。
ということは、ほぼ半世紀のあいだに先生が広島で杖・剣を使った稽古をされたのは一度だけということである。
私が広島の講習会に参加するようになってからも多田先生が稽古で杖剣を使われたことは一度もない。
帰納法的な思考をする人であれば、ここは「確率的には『使わない』ので、持参するには及ぶまい」というふうに「合理的に」推論するだろう。
現に私もそのような「合理的思考」にいつのまにかなじんでいた。
多田先生は私にそのような「帰納法的推理」は「武道的思考」とは準位が異なるということをきびしく示唆してくださった。


問 赤い部分に「足ががたがた震えた」とあるが、その理由を説明しなさい。











解答例
自分が未だに帰納的な、合理的な思考に毒されていて、いかなる状況にも対応することを前提にした武道的思考になっていないことを師から教えられたから。


ポイント
前半からでなく後半から解答の根拠をもってくるのがポイントになる。「きびしく示唆」に震えたのだ。

なお、全文「「師恩に報いるに愚問を以てす」を読む(というか読もう)と多少違う答えも出るが、現代文は抜き脱された範囲で解答するのである、。念のため。


ここでいくつかの重要語を整理しておこう。

【帰納】
[名](スル)個々の具体的な事例から一般に通用するような原理・法則などを導き出すこと。「以上の事実から次の結論が帰納される」⇔演繹 (えんえき) 。
【演繹」
与えられた命題から、論理的形式に頼って推論を重ね、結論を導き出すこと。一般的な理論によって、特殊なものを推論し、説明すること。「三角形の定理から演繹する」⇔帰納。
【合理】
道理にかなっていること。論理的に正当であること。

なお、いずれもgoo辞書を参照している。(このブログがgooブログだしね)

本文が大事で設問解説は蛇足ですからね!念のため。




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