いつものように
今読ませていただきました
いつものような
日常の中に
パンデミックが
文字通り
いつものように
マスクをして
距離をとり
短時間の会食
そんな景が想像されます
さらに
パンデミックの収束は未だ見えず
いつものように
一変した暮らしの中で
世界中の人々は
淡々と暮らしている
たとえそれが
ウクライナで
爆撃があった町でさえ
やはり
人々は
淡々と生活することを
自然に選ぶ
世界でどんな惨事があろうと
メディアは別として
わたしたちは何もなかったように
今までとは少し違った生活様式を強いられ
細々
愚痴を言い
高齢に近くなる夫婦の
あれこれ
男女のあれこれに
思いを馳せる
生活は芸術だ
と言ったのは現代音楽家のジョン・ケージであり
暮らしを淡々と歌ったのは
高田渡というシンガーソングライターである
表現というのは表現者の生活を嫌でも反映する
この作品の「いつものように」
毎日がそれほど変わりなく過ぎてゆく
ところが昨日とは同じということは
あり得ない
昨日とは違う今日
そこに
作家は注目して暮らしてゆく
実はまったく昨日と違っているのに
人々は「毎日同じことの繰り返し」
と言う
違う
行動もさることながら
心象は常に移ろってゆくのだし
その細部はこの作品でも
極めて穏やかな文体で
語られてゆく
日常とは芸術であり
生活こそ
芸術そのものです
穏やかな日常が描かれいる中で
3年前とは違ったコロナ渦の捉え方が
時の流れの中で
ここまで変化するのか
と驚きさえあります
わたしは以前
目の前を老夫婦が
冬
手を繋いで歩いてゆくのを
見た
その時のことは詩にしてあります
その詩の結びは
『手を繋ぐということ それは許すということだ』
と書いた記憶があります
歳を重ねれば
自然
言葉も少なくなり
喧嘩をする力もなくなり
恨み辛みがあったとしても
自然
許してゆくのが理想だけれど
そうもいかない
あの老夫婦は
冬の景の中に
消えていったのだけれど
やはり繋いだ手と
たった二人だけで歩く先に何があるかなしかは
思わず
冬の裸木
青い空
冷たい風
冷たい手
ニット帽に隠れた耳の温かさ
そんなきれいの景に
老夫婦たちは
馴染み
夫婦だけが手を繋いでいるわけではないかもしれない
自然界と手を繋いでいるのかもしれない
そんなふうにも思えるのは
歳を重ねた人々にしか
与えられない美しさです
それは作品の題である
『いつものように』であることは
間違いないのです
穏やかな作品で
短いけれど
きれいな思いが立ちました
読ませていただき
ありがとうございました