ここは昔どぶ川だった
緑の藻が張りついて
自転車が落ちていた
深さは二十センチ
瓶やプラスチックの容器が落ちていた
土手は芝で
草の背も高かった
ここは昔どぶ川だった
橋は細く
手すりはなく
落ちたら
どぶの匂いが
体につくだけ
それでなくても
どぶの匂いは
辛いぐらいで
夕日は土手に落ちたけんど
どぶ川には落ちなんだ
ここは昔どぶ川だった
風は吹かず
吹くときは
全部飛ばした
おとんは言った
「糸ミミズとってこい」
おとんはランチュウやら
エンゼルフィッシュやグッピーを買っては
すぐに水が濁り
全滅した
熱帯魚を飼う資質がなかったけんど
餌になる糸ミミズを
おれは取りにいった
ここは昔どぶ川で
糸ミミズは
ぬめりとしたどぶ川に
スコップを入れれば
たくさんいたけん
バケツに泥ごと入れて
持って帰った
バケツの泥に水を入れ
泥が下にたまって
上は水になり
そこで
糸ミミズは
そよそよと
美しく泳いでいたんだ
けんど
せっかく泥から
糸ミミズを抽出したのに
犬が糸ミミズを食うてもうた
しやけん
またどぶ川にバケツを持って
ランチュウの餌を
取りに行った
ここは昔どぶ川だった
えらい匂いがして
何かが腐っておった
魚はおらん
蛙がおった
傘の骨が落ちていた
土手には
干からびたエロ本も落ちていた
ごみとがらくたは
全部このどぶ川に捨てられた
おれらはエロ本をめくって見た
バリバリになったエロ本は
頁をめくるのが困難で
それでも
おれら子供は
飽く事なく
エロ本を探しては
めくってみた
女の乳房に息を飲んだ
ここは昔どぶ川だった
雨が降ると
増水して
立ち寄れなんだ
川にゆくには
このどぶ川を渡らねばならない
川よりもっと
たくさんのものが
ここには落ちていた
薄緑のコーラの壜は
酒屋か駄菓子屋に持ってゆけば
10円になった
ここは昔どぶ川だった
緑の藻が張りつき
臭かった
草が生えていた
犬が吠え
シャツは泥の色でところどころ汚れ
膝小僧は転んで擦り剥け
血が出れば
つばをつけた
それでもあかんときは
赤チンを塗って
膝小僧やひじは
赤チン色か
血が出て
かさぶたになって
それがめくれ
おれらはわけわからず
走ったり
困った顔したり
飯食うたり
朝からうろついた
ここは昔どぶ川だった
緑の藻が張りついて
自転車が落ちていた
深さは二十センチ
瓶やプラスチックの容器が落ちていた
土手は芝で
草の背も高かった
ここは昔どぶ川だった
橋は細く
手すりはなく
落ちたら
どぶの匂いが
体につくだけ
それでなくても
どぶの匂いは
辛いぐらいで
夕日は土手に落ちたけんど
どぶ川には落ちなんだ
ここは昔どぶ川だった
風は吹かず
吹くときは
全部飛ばした
おとんは言った
「糸ミミズとってこい」
おとんはランチュウやら
エンゼルフィッシュやグッピーを買っては
すぐに水が濁り
全滅した
熱帯魚を飼う資質がなかったけんど
餌になる糸ミミズを
おれは取りにいった
ここは昔どぶ川で
糸ミミズは
ぬめりとしたどぶ川に
スコップを入れれば
たくさんいたけん
バケツに泥ごと入れて
持って帰った
バケツの泥に水を入れ
泥が下にたまって
上は水になり
そこで
糸ミミズは
そよそよと
美しく泳いでいたんだ
けんど
せっかく泥から
糸ミミズを抽出したのに
犬が糸ミミズを食うてもうた
しやけん
またどぶ川にバケツを持って
ランチュウの餌を
取りに行った
ここは昔どぶ川だった
えらい匂いがして
何かが腐っておった
魚はおらん
蛙がおった
傘の骨が落ちていた
土手には
干からびたエロ本も落ちていた
ごみとがらくたは
全部このどぶ川に捨てられた
おれらはエロ本をめくって見た
バリバリになったエロ本は
頁をめくるのが困難で
それでも
おれら子供は
飽く事なく
エロ本を探しては
めくってみた
女の乳房に息を飲んだ
ここは昔どぶ川だった
雨が降ると
増水して
立ち寄れなんだ
川にゆくには
このどぶ川を渡らねばならない
川よりもっと
たくさんのものが
ここには落ちていた
薄緑のコーラの壜は
酒屋か駄菓子屋に持ってゆけば
10円になった
ここは昔どぶ川だった
緑の藻が張りつき
臭かった
草が生えていた
犬が吠え
シャツは泥の色でところどころ汚れ
膝小僧は転んで擦り剥け
血が出れば
つばをつけた
それでもあかんときは
赤チンを塗って
膝小僧やひじは
赤チン色か
血が出て
かさぶたになって
それがめくれ
おれらはわけわからず
走ったり
困った顔したり
飯食うたり
朝からうろついた
ここは昔どぶ川だった