ジャン・メ[ラン「よき夕べ」
のことを
考えていた
階段で立ち話は
世の細部であって
一分後には
互いに忘れて
それぞれの道をゆく
この朝に
積まれた段ボール
たくさんの階段があって
未だにどの階段が
どの通路に出るのかが
判らない
そういえば
あの階段をのぼったところで
泣いていた
その涙を共有できるすべはないのに
ただ沿っていた夕
そのあと
三人は北へ向かった
彼は山にゆく
赤
白
透明の
傘
傘立て
彼らは誰に手にとられらのだろう
おそらく見られるだろうけれど
瞬時に忘れられる
雨の日以外は
ちりとりの金属の音と
階段が接触する音が聞こえる
南の窓の外は
おそらく
強い陽光が
数多の事物を照らしている
その温度と彩度に
人の脳では
快楽物質を出し
イキヨウヨウとなる
西の空の屋根の上
青
雨あがり
ドアの外で
音がする
ドアの内で
音がする
言葉は音である
コンセント
穴二つ
繋ぐ接点
ぞうきんで
机を拭く
所作
自由の風が吹いている
わたしたち
日本語を話し
日本語を書き
日本語を聞き
日本語で考える
そのことに
今さら
気がついた
笠寺観音
池の亀
木が切られているのに
以前のように
心が痛まないのは
何故だろう
夜道
以前
通ったことがある
思いながら
坂道をくだった