その人は向かいに座り
テーブルの上には
とんかつ定食
夜
わたしたちは
うどん屋にいた
わたしたちは
話しながら
食べながら
していると
「孤独です」
と
その人が言った
強い言葉だった
目にうっすらと
涙が出ていた
一瞬
箸が止まった
本当に止まった
面と向かって
そうはっきりと
しっかりした声で
迷いのない
「孤独です」
は
もう一人の人格のように
その人に重なって
わたしを見た
浮「とさえ思った
人が生きるということ
その営みの中で
「孤独です」
という言葉を
言わねばならぬということ
その言葉を
聞くということ
わたしたちは
また箸を動かした
生きるため
寝転びの湯で
その人は眠った
疲れているのだ
それから
炭酸泉に入ると
湯水がわずかに流れる側溝に
コガネムシがいた
つまむと
コガネムシの強くて
しっかりした手足が
指に絡みつき
掌をまるめて
逃げぬようにした
「どうしたんですか」
その人は言った
「コガネムシが」
ああ
という
小さな声が聞こえた
露天風呂の
植え込みの奥に
置いた
縁 えにし
以前はその意味を思った
考えた
今はない
縁は縁
ご縁というべきかも
帰り際
車の中にあった
その人の奥さんが作った
手作りの肉まんじゅうと餡まんじゅうを
頂いた
ありがとうございます
いえいえ
いつものように
その人は
笑を出し
大きな手を
顔の前で振った
テーブルの上には
とんかつ定食
夜
わたしたちは
うどん屋にいた
わたしたちは
話しながら
食べながら
していると
「孤独です」
と
その人が言った
強い言葉だった
目にうっすらと
涙が出ていた
一瞬
箸が止まった
本当に止まった
面と向かって
そうはっきりと
しっかりした声で
迷いのない
「孤独です」
は
もう一人の人格のように
その人に重なって
わたしを見た
浮「とさえ思った
人が生きるということ
その営みの中で
「孤独です」
という言葉を
言わねばならぬということ
その言葉を
聞くということ
わたしたちは
また箸を動かした
生きるため
寝転びの湯で
その人は眠った
疲れているのだ
それから
炭酸泉に入ると
湯水がわずかに流れる側溝に
コガネムシがいた
つまむと
コガネムシの強くて
しっかりした手足が
指に絡みつき
掌をまるめて
逃げぬようにした
「どうしたんですか」
その人は言った
「コガネムシが」
ああ
という
小さな声が聞こえた
露天風呂の
植え込みの奥に
置いた
縁 えにし
以前はその意味を思った
考えた
今はない
縁は縁
ご縁というべきかも
帰り際
車の中にあった
その人の奥さんが作った
手作りの肉まんじゅうと餡まんじゅうを
頂いた
ありがとうございます
いえいえ
いつものように
その人は
笑を出し
大きな手を
顔の前で振った