政府は夏以降、飲食、宿泊業について、従業員の厚生年金加入を義務付ける個人事業所の範囲を拡大する制度改正の本格検討に入る。
2025年の通常国会で必要な法改正を目指す。
厚生年金が加われば年金額が手厚くなる。
老後の生活安定を狙う。
保険料は労使折半で負担が増す経営側の反発が予想される。
関係者が6月5日、明らかにした。
岸田政権が掲げる政策「勤労者皆保険」の一環。
近くまとめる経済財政運営の指針「骨太方針」の原案に、加入義務を課す事業所の見直し検討が盛り込まれた。
就労を促し入手不足改善につなげる思惑もある。
飲食、宿泊業は新型コロナウイルス禍で打撃を受けており、事業者の理解が実現の鍵となりそうだ。
政府は法人格のない個人事業所を巡り、範囲拡大を検討する。
現在は、従業員5人以上で、かつ製造や建設、金融・保険など16業種に限り加入義務がある。
10月から弁護士ら「士業」が加わることが既に決定。
範囲拡大の有力候補の宿泊や飲食に加え、農林漁業、理美容、経営コンサルタントなども議論されそうだ。
政府関係者によると、仮に実現した場合、厚生年金加入者がどれだけ増えるかは不明という。
厚生年金に入ると、国民年金(基礎年金)に厚生年金分が上乗せされ、受給額が増える。
厚生年金は、法人化した事業所は全て加入義務がある。
仕事の内容が同じでも、大手企業か個人経営店かなど、就業先により年金受給額に差が出ることに関し、有識者らが「公平な社会保障の観点から適切でない」と指摘していた。
加入者増は厚生年金会計の保険料収入にプラスとなり、支給水準の維持が期待される。
新型コロナ禍での経営不振に加え、ロシアによるウクライナ侵攻の影響で物価高が起きた。
小規模飲食店関係者は「負担増に耐えられる状況でない」と懸念する。