インターネット人口が5億人を超え、世界一のネット大国である中国の習指導部がネット規制を加速させている。
習国家主席は8月の内部会議でネット上の言論を「新たな脅威」として取り締まりを指示したとされ、中国人研究者からは「自身の政治基盤が固まっていないことへの焦りが背景」との分析も出ている。
利用者に目を光らせる監視要員は政府各部門の正規職員、非正規のアルバイトも含めて全国で200万人以上と中国紙、新京報が最近報じた。
共産党機関紙の人民日報などによると、10月14~18日には人民日報などの主催で、監視要員を対象にした初の研修会が開催される。
中国メディアによると、監視要員は党や中央、地方の各政府の宣伝部門、ポータルサイト会社、各種企業などに配置されている。
短文投稿サイト「微博(ウェイボ)」や各種サイトのユーザーの主張をチェックし、集めた情報の分析結果を組織の幹部に報告している。
10月14日からの研修会は「(党にとって都合が悪い)危険な世論の動き」をつかんだ際の対応もテーマとしており、書き込み削除などのより強い権限が監視要員に与えられる可能性が高い。
中国当局は全国の新聞やテレビ、通信社、雑誌などの記者25万人にマルクス主義などを学ぶ研修を義務付け、来年1~2月に、統一の免許更新試験を実施する予定。言論統制を強める構えだ。
最高人民法院(最高裁)などは9月、社会の混乱を招いたり、国家利益を損なったりする書き込みに刑事罰を科すと表明。
人気ブローカーらの拘束も相次いでいる。
11月に開催予定の共産党18期中央委員会第3回総会(3中総会)で、習死は今後の指導方針を表明し一党独裁の正当性を再確認する見通しだ。
3中総会を前にしたネット規制強化には、党・政府に批判的な言論や政治改革を求める主張を抑え込む狙いがある。
「微博(ウェイボ)」など中国独自のソーシャル・ネットワーキング・サービス(SNS)が普及。
政府に批判的な情報などがアクセスを防ぐため「グレート・ファイアウオール(ネット版の万里の長城)」と呼ばれる検閲システムがあり、一部の欧米メディアのほか、中国の人権や少数民族などを扱ったサイトは閲覧できない。
短文投稿サイト「ツイッター」や交流サイト「フェイスブック」への接続も遮断している。
2009年に登場した中国版短文投稿サイト「微博」上には、一般ユーザーが直接知り得た官僚の不正行為や、地方政府に対する抗議活動の情報、体制を皮肉る発言が日常的に投稿されている。
中国では短文投稿サイト「ツイッター」や交流サイト「フェイスブック」への接続が遮断されているだけに、庶民らは「官製メ打ち破りディアの枠を、発言の機会を得た」と微博を歓迎してきた。
指導部も反腐敗をアピールしてきた手前、こうした動きに一定の理解を示していたが、不正告発などの増加に伴い、党そのものに対する不信感が急激に拡大したことに危機感を強めてきた。
治安当局は8月、微博上での中国政府幹部の汚職告発などで有名だった広東省の地元紙記者劉虎氏や、甘粛省蘭州市長らが高級腕時計を多数所持していたことを微博で暴いたことのある周禄宝氏らを相次いで拘束した。
9月にはネット上にデマ情報を流して大衆を扇動したとして6歳少年を一時拘束、強硬に取り締まる姿勢をあらわにした。
中国のメディア関係者は、中東の政変に触発され、2011年2〜3月に民主化を求める「中国ジャスミン革命」集会の呼び掛けが相次いだことが、党・指導部のネットに対する不信感を決定付けたと指摘した。
中国の言論の自由化はいつ実現するのだろうか。