安倍政権が9月22日、秋に見込まれていたロシアのプーチン大統領の来日見送り方針を固めた背景には、ウクライナ情勢を踏まえ、「対ロシア包囲網」への参加を求める同盟国・米国との連携を重視せざるを得ないとの「苦渋の判断」 がある。
関係者によると、首相はオバマ米政権がプーチン氏来日を見合わせるよう日本に求めており、欧州連合(EU)が対ロシア追加制裁を発動している現状を考慮した。
首相は2012年12月の第2次政権発足後、北方領土父渉の進展をにらみ、プーチン氏と5回も会談し、個人的な信頼関係を積み上げてきた。
それでも首相が訪日見送りはやむを得ないと判断したのは「外交基軸である日米同盟関係を揺るがすわけにいかない」との基本認識に立っているのだろう。
昨年の靖国神社参拝直後、首相は米国から「失望」を表明され、苦境に陥った。
拉致被害者の再調査で動きだした日朝交渉をめぐっても懸念を示され、苦慮している。
この時期に米国が最も警戒するロシアに接近すれば、日米関係に亀裂が生じるとの思いに至つたのは間違いない。
日口外交筋によると、ロシア政府は北方領土問題に関する打開策を現時点で日本側に提示していないため、首相側には、領土交渉で進展が期待できない中でプーチン氏来日に踏み切るのは得策でないとの計算も働いたともみられる。
岸田外相が、国連総会のため米ニューヨークに滞在中の開催を申し入れているラブロフ外相との会談については、ロシア側は日本側に明確な回答をしていない。
日口首脳が電話会談で対話継続方針を確認したものの、対口制裁を強める日本への不信感はロシア内で消えていないとの観測が出ている。
8月に開く予定だった日口外務次官級協議も、ロシアの延期景審受け、実現見通しが立っていない。
しかし、米国と友好関係にあるモンゴルは今月、プーチン氏を同国に招待し、フランスは米国の反発をよそに強襲揚陸艦のロシアヘの売却をあきらめていない。
各国ともにしたたかな外交を繰り広げているのが実情だ。
安倍首相の「独自外交」の限界が露呈したと言われてもしかたない。
いつまでもアメリカのご機嫌をうかがう外交を続けるのはやめるべきだ。