第2次大戦中の中国人強制連行をめぐり、三菱マテリアルと中国側被害者の交渉団が、包括和解に合意する方針を固めた。
民間同士が「過去の克服」を目指し大きな前進を図る歴史的な動きで、戦後70年の節目の年を象徴する合意となる。
三菱マテリアルは7月19日、日本国内の鉱山などで米国人捕虜らに強制労働をさせたとして、同社常務執行役員らが元米兵捕虜に米国で面会し謝罪を直接伝えており、民間企業が負の歴史に自主的に区切りをつけるモデルケースとなりそうだ。
中国人被害者の一部は1990年代半ばから日本で損害賠償訴訟を相次いで提起。
弁護団などによると、判決では、法律論で賠償請求は退けられたが、強制連行や強制労働の事実は相次いで認定され、最高裁は2007年4月に「自発的対応は妨げられず、被害救済への努力が期待される」との異例の意見を「付言」として示した。
裁判を通じた事実認定の積み重ねと、最高裁の「付言」が三菱側の行動を後押ししているとみられる。
弁護団などによると、中国人が強制連行されたのは、日本政府が1942年に戦局の悪化に伴う日本国内の労働力不足を補うため、産業界の要請に基づき中国からの労働者「移入」を閣議決定したのがきっかけ。
戦後に発見された日本外務省の報告書は、計約3万9千人を強制連行し、全国で35社、計135ヵ所の炭鉱や建設現場などの事業所で労働させたと記載している。
中国では日本コークスエ業(旧三井鉱山)も訴訟の対象となっている。
韓国でも、三菱重工業など日本企業を相手に元徴用工が損害賠償を求めて訴訟を相次いで起こしているが、1965年の日韓請求権協定で韓国人の個人請求権は消滅したとする日本政府の見解に基づき、日本企業側は請求に応じない立場を示している。
(和解合意案のポイント)
・三菱側は痛切な反省と深甚なる謝罪の意を表明
・三菱側は基金に資金を拠出し、1人当たり10万元(約200万円)を支払う
・三菱側は記念碑建立費1億円、調査費2億円を拠出
・和解合意により、本件事案は包括的・終局的な解決と確認