日本産科婦人科学会(日産婦)は6月2日、妊婦の血液から胎児の染色体異常を調べる「新型出生前診断(NIPT)」ができる施設を増やすための検討を本格化させた。
学会のルールに関係なく実施する認可外の施設で検査を受けた妊婦に、適切な対応がされていないとの懸念があり、対策を講じる。
対象を原則35歳以上とした年齢制限の見直しが議論される可能性もある。
日産婦はこの日の理事会で、検査を行う施設の要件緩和を議論する委員会のメンバーを確認。
小児科や遺伝学の専門家も交えた委員会で具体的に話し合う。
NIPTは国内では2013年に始まった。
ダウン症と13トリソミー、18トリソミーといった三つの染色体異常の可能性が高精度でわかる。
開始から昨年9月までに約5万1千件の検査が行われた。
陰性が圧倒的だが、陽性判定を受け、陽性が確定した700人の9割超が中絶した。
日産婦は産婦人科医と小児科医が常勤し、どちらかは遺伝の専門家で十分なカウンセリングができる、などを実施施設の要件に掲げる。
日本医学会の部会が認め、6月1月現在、90カ所の認可施設がある。
だが、認可施設でつくる団体「NIPTコンソーシアム」によると、認可施設での検査は昨年4月から減少傾向。
認可外施設に流れたとみられている。
1回の来院で採血できたり、年齢制限がなかったりして、受けやすさをうたう認可外施設が目立つ。
一方、妊婦への検査や結果の説明が不十分なケースもあり、施設の認定部会長を務める久具・東京都立墨東病院部長は「カウンセリングの質を保ちつつ、認可施設を増やし、認可外に流れる妊婦を減らしたい」と話す。
年齢制限の見直しもポイントだ。
NIPTに詳しい関沢・昭和大教授は、年齢制限があるために、35歳未満はNIPTよりも精度が低い検査を受けていると指摘する。
「35歳未満も希望すればNIPTを受けられるようにすべきだ」
インターネットで検索するといくつも認可外でNIPTを受けられる施設が見つかる。
その一つ、東京都内の医療機関の医師は、朝日新聞の取材に「始めた昨年9月から半年間で約1千件実施した」と語った。
受診する妊婦は都内が多いが、北海道や青森、沖縄など各地から来ると説明した。
この医療機関は検査の年齢制限はない。
医師は「35歳未満が3分の1強だと思う」と話す。
来院日は、約1時間で医師と個別でのカウンセリング、採血まで行う。
結果は原則対面で内容を伝えるが、遠方の場合、スマートフォンやパソコンを使った遠隔診療で伝えることもあるという。