経済苦や予期せぬ妊娠などで育児に困難を抱える可能性があり、出産前から支援が必要と行政に認定された「特定妊婦」が、制度が始まった2009年から10年目の2018年には約7倍の7233人に増えたことが3月13日、厚生労働省の調査で分かった。
新型コロナウイルス禍で母親の困窮や孤立は深刻化し、生後間もない赤ちゃんの虐待死事件も相次ぐ。
専門家は「行政の支援につながらない妊婦は多数おり、氷山の一角だ」と指摘する。
特定妊婦は、虐待を防ぐ観点から2009年施行の改正児童福祉法で明記。
主に市区町村が設置し、児童相談所などで構成する「要保護児童対策地域協議会」に登録されると、保健師らによる家庭訪問などの支援対象になる。
厚労省の調査によると、2009年6月時点で全国の1663市区町村が協議会を設置し、登録された特定妊婦は994人だった。
その後は横ばい状態が続いたが、2016年4月時点は4785人、2017年4月は5976人と登録数が近年増加。
2018年4月はほぼ100%に当たる1736市区町村で協議会の整備が進み、7233人に上った。
2019年は調査中。
厚労省の担当者は近年増加した理由を「特定妊婦への認識が広まったことが要因としてあり得る」とした。
自治体ごとの内訳は非公開のため、共同通信は47都道府県や政令市、中核市に直接、特定妊婦の数を尋ねた。
2018年4月時点の集計が可能な43都府県のうち最多は千葉県の1074人。
大阪府867人、東京都639入と続いた。
自治体は妊娠届の提出時や医療機関からの情報提供で把握に努めているが、妊娠を誰にも言えず受診しない妊婦もおり、「把握することが困難」との意見も寄せられた。
虐待事例を分析する厚労省の専門委員会による直近の報告では、死亡例の4割は0歳児。
出産後24時間未満や1ヵ月未満の子どもも一定割合を占めており、特定妊婦の支援が急務だ。