認知症や知的障害で判断能力が十分でない人を支える成年後見制度について、法務省が民法改正に向けた検討を始めたことが8月12日、分かった。
現在の仕組みでは、利用を始めると原則、途中でやめたり後見人を代えたりすることができないため、必要な時だけ使えるようにするほか、後見人を柔軟に交代できるようにする方向だ。
利用者が後見人に支払う報酬も、いくらかかるか分かりにくい仕組みを改める考え。
政府は2026年度までに民法など関連法案の国会提出を目指す。
実現すれば、制度が2000年に始まってから初の大幅な改正となる。
現在は一度付いた後見人を生涯利用し、報酬を支払い続けなければならず、経済的負担が重いといった課題がある。
国内には認知症の人だけでも約600万人いるとみられるが、利用者は2021年末時点で約24万人にとどまり、伸び悩んでいる。
政府は成年後見の利用促進に向けた第2期の計画を今年3月に閣議決定。
民法を含めて制度を見直す方針を盛り込んだ。6
これを受け、法務省は公益社団法人「商事法務研究会」と共同で6月に有識者研究会を設置。
具体的な検討を進めている。
例えば、財産の売却や相続が必要になった際は弁護士ら専門職に業務を担ってもらい、終了後は利用をやめたり、親族や福祉職に交代して日常生活の支援を受けたりすることを想定している。
後見人の報酬額は家庭裁判所が決めているが、明確な基準はなく、利用者の財産額などに応じて変動する。
専門職の場合は月2万~4万円程度の例が多く、「大したことをしてもらっていないのに、報酬を毎月支払わなければいけない」といった声が上がっている。
有識者研究会は制度改正に向けた報告書を2024年にまとめる予定。
政府は、それを受け法制審議会(法務相の諮問機関)で議論した後、民法などの改正案を国会に提出する見通しで、早くても2026年度になるとみられる。