JR四国が人手不足を理由に普通列車を減便する。
構造赤字を埋めるため、積極的に費用を削ってきた。
給与水準も低く抑えた結果、若手の離職が相次ぎ採用数は計画に届かない。
乗客数が伸びる見込みはなく、賃上げの原資を確保するのは困難だ。
6月に就任したばかりの四之宮社長は、人繰りさえままならない状況で国から収支改善を要求されている。
JR四国は9月29日から予讃線や土讃線の普通列車を1日17本減らし、最終列車4本を繰り上げる。
減便の対象は朝夕の通勤通学の時間帯が中心で影響は大きい。
発表資料に「人手不足」と明示した減便は今回が初めて。
「給料が安いにもかかわらず、会社に3連泊することもあった」。
この春、JR四国を退職した20代男性が振り返る。
在職中の年収は約340万円。
同僚にも離職者が多く、人生設計を考えると厳しいと考えた。
中途入社した関東の鉄道会社ではボーナスが倍増。
「残業も少なく、今の方が断然良い」と話す。
現場の人手不足は深刻だ。
旧国鉄時代に大量採用した社員の定年がピークを迎えた2019年ごろを境に採用数を増やす計画だったが「他社との競争で当社を選択してもらえない情勢」が続く。
2024年度は155人の採用計画に対し、入社したのは123人。
今後は再雇用した60歳以上の社貝が契約期間を満了するため、状況は一段と悪化しそうだ。
通常、運転士になるには最低2年の車掌経験が必要という。
養成期間中に離職する人が多く、担当者は「十分な人数を確保できていない」と漏らす。
「今後もコンパクトな形でダイヤを作成せざるを得ない」と話し、さらなる減便を示唆した。
JR北海道は2023年4月、2022年度の自己都合退職者が過去最多の232人に上ったと明らかにした。
一方、JR四国は離職者の実数を公表していない。
ただ西牧会長は「(コロナ禍後)鉄道事業が赤字で先も見通せないため、社員のモチベーションは下がり、20代、30代の若手の離職者が増えた」と明かす。
国土交通省は2020年3月末、JR四国に対し、2031年度の経営自立を目指して収支改善を進めるよう指導した。
JR四国は民間企業だが、国が全株式を握る。
実態は国の管理下にあり、思い切った賃上げをしづらい状況だ。
関西大の宇都宮教授は「現状、交通事業は他の産業に比べて労働条件が悪い。しかし鉄道インフラは社会で支えるのが国際標準で、JR四国単独の経営責任ではない。 公的な資金で支える仕組みが必要だ」と訴えた。