栗野的視点(Kurino's viewpoint)

中小企業の活性化をテーマに講演・取材・執筆を続けている栗野 良の経営・流通・社会・ベンチャー評論。

流通小売りの現場が変だ(2)~画竜点睛を欠いたイオンの対応

2016-08-29 10:30:55 | 視点
画竜点睛を欠いたイオンの対応

 明太子専門店を出た足で今度はイオンに向かった。
両店とも玉串料返しの贈答品選びである。
イオンはギフトコーナーがあったのでそちらで色々選び、カウンター前に腰掛けるとアルバイトと思しき若者から次のように言われた。

「以前に当店をご利用いただいていますと記録が残っていますから、お電話番号を知らせいただけるとすぐ記録が出せますが」
「いや今回初めてだから」
「かしこまりました。では、こちらの用紙にご記入をお願いいたします」

 そうそう、これだよ。なぜ、この程度のことが先の店では言えなかったのか。
マニュアルは最低限の基本だから、まずマニュアル通りの応対を身に付け、そこから臨機応変な対応をさせるように教育すべきなのに、マニュアル否定だけでは教育放棄と同じことだなどと思う一方、さすがはイオンと感心していた。

 最初の対応がスムーズだと後も順調にことが進む。
ただ一箇所、滞ったのは熨斗の表書きに話が及んだ時だった。
「表書きはいかが致しましょうか」
「『偲び草』にしてくれる」
 と、ここでそれまでのスムーズな流れが一時中断し、なにやらしきりにタブレットやPCを操作している。

 やがてそのコーナーの責任者と思しき男性が「申し訳ありません。以前(ダイエー時代)は偲び草の文字もあったのですが、イオンになってからなくなっているようなのです。なにか他の言葉でもよろしければ・・・」
「えっ、『偲び草』がない。そんなに特殊な言葉ではないよ。神式では普通に使う言葉だけどないなら仕方ない。『志』でいいよ」
「申し訳ありません。今度作るようにと提案しておきます。こういうお客様からの要望が大事ですから」

 うちは神道だから仏式のやり方には詳しくないが、仏式では「満中陰志」と書くことが多いらしい。「偲び草」は神式、キリスト教でよく使われるが、そのこととは別に、私はこの言葉が気に入っている。故人を偲んで贈ります、偲んでいただきありがとうございましたという思いがこの言葉に込められていると感じるからだ。

 とまあ、イオンの対応に満足しながら店を後にしたのだが、実は後日談がある。
その月の25日過ぎからお礼の電話がかかってきだしたのだ。
最初の電話は意味が分からなかった。
「結構な物を頂きありがとうございました」と言われても、それが玉串料返しの品が届いた礼だとは分からず、思わず「何の話ですか」と聞き返したほどだ。

 こちらが送ったのは月の初めだから、とっくに届いていると思っているし、なにかその他に送っただろうかと首を傾げたが、やはり玉串料返しの礼だと分かり、今度はビックリ。
なぜ、今頃? 配送に20日以上もかかるだろうか。
なんらかの理由でこの1軒だけ遅れたのだろうと思っていると、その翌日から同じような電話が数件あった。
どうやらイオンで発注した商品のみ20日以上遅れて発送されたようだ。

 なぜ、こんなことが起きたのか。考えられる理由は次のような点だろう。
1.店頭、配送センター共に在庫がなかった。
 これは考えられないことではないが、注文時に店頭に商品があるのを確認していた。送り先は複数でそれぞれ違う商品を贈っているから、一律に配送が遅れたことは考えられない。

2.ギフトコーナーの配送自体が同月下旬からだった。
 これが最も考えられる理由で、そう考えると整合性がとれる。ただ、これは同店に確かめてみないと分からないことだが。

 仮に2の理由で配送が遅れたとしよう。それでも疑問が残る。
カウンターでのやり取りで「偲び草」だということは伝えてあるし、その時の会話から担当責任者も「偲び草」の内容を理解している。

 であれば配送が下旬からなら、その場で「○○日からの配送になりますが、それで構いませんか。ギフトコーナーではなくサービスカウンターでの受け付けなら通常通り2、3日で先方にお届けすることができますが、いかがいたしましょうか」とひと言告げさえすれば大幅な配送遅れというミスは防げたはずだ。
 せっかく対応のよかったイオンだが画竜点睛を欠く対応になったのは残念だ。




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