栗野的視点(Kurino's viewpoint)

中小企業の活性化をテーマに講演・取材・執筆を続けている栗野 良の経営・流通・社会・ベンチャー評論。

「小さな駅の物語」~ローカル局の挑戦

2013-01-21 12:04:48 | 視点
 のっけから私的(「してき」、最近こういうふりがなを打たなければならないのが情けない。「わたしてき」ではないので)な話で恐縮だが、年末に列車で帰省し駅に降り立った時、地方TV局の取材を受けた。TV局は瀬戸内海放送。高松の局がなぜ岡山県、それも瀬戸内側なら分かるが、遠く離れた県北で取材をと思ったが、岡山の局も香川の出来事を放映しているし、両県は一体で捕らえているとのこと。

 なんでもローカル駅の1日を追う番組らしいが、「降りて来られる人があまりいなくて」と、取材を申し込まれた。まあ同業の類だし、こちらも趣味の撮影の時、その場にいた観光客などに突然素人モデルをお願いしたりもしているので、無下に断るわけにはいかないだろうと了解する。

 「小さな駅の物語」。これが企画名で、シリーズで放映しているとのこと。後日、同局のホームページで過去放映分を見て分かったが、月に一度、ローカル線の駅を訪ね、その駅の1日をドキュメント仕立てで放映していた。
 感心したのはナレーション抜きで、駅の光景をカメラが淡々と追っていること。これは楽なようで案外そうでもない。ナレーションを入れれば画面、場面の説明が簡単にできるし、視聴者に制作意図を手っ取り早く分からせることができる。
 ところが、ナレーション抜きだと映像の補足説明ができない。その分、映像の質(編集、カメラワークも含め)が問われることになる。

 では、それだけの映像になっているかどうかについてはここでは触れないが、こういう企画を実行した瀬戸内海放送局の勇気と挑戦は高く評価したい。
 ローカル線が抱えている問題、過疎地が抱えている諸問題などを大上段に振りかざして論じるのではなく、小さな駅の1日を追うことで、それらの諸問題を言外にあぶり出しているからである。

 通常、この種の地味な企画にはスポンサーが付きにくい。
スポンサーにしてみれば視聴率が高い番組なら出しやすいが、その逆の場合は積極的に出そうとは思わないだろう。誰しも広告費は有効に使いたいと思うからだ。それでもスポンサーが付くことがあるが、そういう場合は概してイメージを大事にする大手企業だ。

 もちろん、この番組は単独番組ではなく、制作費はカメラマンとインタビュアーの2人で、ナレーターもいないからかなり安く仕上がっているだろうことは想像に難くない。そして恐らくは下請会社の制作であっても、このような企画を採用した放送局、企画を提案したディレクター(会社?)の良心と勇気、挑戦を評価したい。

 ローカル局はどこも経営的に厳しい。多局化がそれに拍車をかけ、いまではどこもキー局の系列下に入り、番組、広告ともキー局からの配信に頼っているのが現状で、自主制作番組は夕方の一部と深夜帯ぐらいではなかろうか。この狭い枠内でいかに自主性を出すかを「競っている」わけだから、制作費をかけられないのも多少理解できる。いまではキー局ですらまともな番組制作はなく、お笑い芸人を使って安上がりに仕上げた番組だらけだ。これならTV離れが進むのは自明の理だろう。

 そういう環境の中でローカル線を取り上げ続けている瀬戸内海放送の番組は評価したい。惜しむらくはもう1歩の突っ込みがないことだが、早朝から夕方まで小さな駅前でビデオを回し続けている2人のスタッフの頑張りにはエールを送りたい。

 「小さな駅の物語」は同局のHPで見ることができる。
 
 1/8 放映「美作江見駅の年の瀬は?」の後半部に私もちょこっと顔を出しています。
 KSB(瀬戸内海放送)のHP「トップ」ページ→「ニュース]→「特集」で、1/8 放映「美作江見駅の年の瀬は?」をクリックしてもビデオを見ることができる。

    ★上記は「まぐまぐ」から配信しているメルマガ「栗野的視点で1月16日に配信したものです。



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