



樅とえぞ松の織り成すレースで飾られた この内気な小さな赤い道は 捩れたり曲がったりして隠れようとしていた。 辺りは日に温もり実を結んだ 草の香 がみなぎっていた。 木々はジェーンに今は知る人もない 美しい言葉で昔の物語を全て語っていた。 【「丘の家のジェーン」 24.】 |

連日、35度以上の猛暑が続きます。
それでも昨夜は、「り~ん、り~ん」 と鳴く、ひと際美しい虫の声を・・。
入浴中は辺りが静かですから、じっくり虫の音(ね)に、
耳を傾ける事の出来る格好の空間になっています。
虫・・で思い出したのですが、そう言えば蝉。
ここ二、三日、耳にしていません。
~なんて思った途端に一声。でも、それだけです。
その蝉は、「ツクツクボウシ」。でも早々に店じまい・・?
こんな所にも季節を感じる瞬間です。

ぷうと云って汽船が泊まると、 艀が岸を離れて、漕ぎ寄せて来た。 船頭は真っ裸に赤ふんどしを絞めてゐる。 野蛮な所だ。尤も此暑さでは着物は着られまい。 日が強いので水がやに光る。 【夏目漱石 「坊っちゃん」】 |
上記は漱石の 「真夏の油照り」 の描写です。
しかしながら汽船、船頭・・海・・と来れば・・。
この描写からは、どこかしら 「涼」 を感じてなりません。
それどころかある種の爽快感さえ感じ・・。
この 「想像の余地」 からは、痛快な風・・? が吹いているようにも。
現代にはない明治気質(かたぎ)と言ったものでしょうか・・。
一方、まだまだ暑いけれど、真っ先に感じた小さな秋。
それは、やはり今年も 「半夏生」 です。
ついこの間まで葉っぱを真っ白に染め、
まるで花のようにも蝶のようにも見えた、
その面影は、今では全くありません。
もしかしたら、季節に一番敏感な植物かも知れませんね。
こうして見る限り、一気に秋の風情です。
写真でも光と影がくっきり。
秋は、もうすぐそこまで来ているような、そんな予感・・。