「でも、ヒオスシンという名なら、 勿論、聞いた事あるでしょう? 効き目はほとんど同じなんだけれど、 これは絶対に形跡が残らないのよ。 どんな医者だって 心臓麻痺の死亡診断書を書くはずよ。 私その薬を少し盗んで、そっと隠しておいたの」 (中略) 「私コーヒーを入れるのが上手なのよ」 (中略) 「「あのコーヒー ―― 畜生! あのコーヒーは!」 彼女はじっと彼を凝視した。 「なぜ苦かったのか、これで分かったぞ、 畜生! 毒を盛りやがったな」 【A・クリスティー作 「うぐいす荘」】 |
昨日の雨は上がりましたが、
今日は一日中、雲が多めの天気になりました。
太陽崇拝者? の私ですから、
青空に越した事はありませんが、こんな天気の日もありますね。
雨が降らないだけ良しとしましょう。
さて、久し振りの
「A・クリスティーの世界」。
最近、あまり長編に
気が乗らず、短編を
つまみ食い状態に
なっています。
その中の、とりわけ
面白かった物の中から
「うぐいす荘」 を。
ここでもつい先日記した
通り、 『アンの世界』
同様に、家に名前が
付いていますね。
良い事です。
ところで肝心の物語の
内容は? と言いますと。
思いがけない遺産が
入った主人公(アリクス)
が長年の恋人(ディック)
を捨て結婚した相手
(ジェラルド)は、
「青髭」 と恐れられている殺人鬼だった・・。
迫る魔の手を何とかして逃れようとするアリクス。
一分一秒を争う、必死の攻防が見事です。
そうそう上記の会話は、そのほんの一部分。
アリクスは実際に毒を入れた訳ではありません。
ディックと警官が駆け付けるまでの、命がけの時間稼ぎ。
恐怖と絶望にある時、アリクスのように
考えられないような冷静さを発揮するかと思えば、
はたまたジェラルドのように暗示にかかり・・。
いかようにもなる事を思い知らされます。
結局、ジェラルドはショック死したという訳です。
“気” がいかに大切かという事が分かりますね。