遠い森 遠い聲 ........語り部・ストーリーテラー lucaのことのは
語り部は いにしえを語り継ぎ いまを読み解き あしたを予言する。騙りかも!?内容はご自身の手で検証してください。
 



 日曜日の午後 池袋の自由学園 明日館アンサンブル・ビクトリアの演奏を聴きに行った。明日館は駅から5分、メトロポリタンホテルの裏にある。近いけれどはじめてなのでタクシーに乗って正解だった。入り組んだ道の奥でタクシーを降り、建物が目に入ったとき 両の翼を広げた鳥のように感じた。鳳凰殿をふと思い出した。

 自由学園の創立者羽仁夫妻は、創立に際し 帝国ホテルを建てたことで名高いフランク・ロイド・ライトに設計を依頼した。ライトは日本の建築物からの影響は受けていないと言ったが 実は日本の美術品、中でも浮世絵の蒐集は展覧会を開けるほどであったという。ライトの建築には浮世絵の大胆に省略された構図、簡潔なラインなどの影響があるという。調べてみるとライトは1893年 シカゴ博の日本館鳳凰殿を見ているそうだ。自由学園を見て鳳凰殿を思いついたのはあながち見当はずれでもなかったらしい。

 磨かれた木の床、白い壁 本館の広間やカフェを通り抜けると、懐かしさと心地よさにこころがほどけてゆくようだった。飾り気のない品のよさが漂っている。はじめて来たのに不思議だ。3月にはここで研究セミナー第二期の同窓会が開かれるとか、きっといい会になるだろう。

 明日館は道をはさんで向こう側にあった。白いレースの襟、黒いスーツのビクトリア風のきりっとした女性が案内してくれた。ホールはほぼ満席だった。音響がすばらしい。馥郁と音が香るようだった。四声にバロックハープ、リュートが曲にあわせて 波のように寄せたり引いたりする。ミサ曲は天上の雲の波に包まれていくようだった。ダウランドの「おお、やさしい森よ」を聴いたとき、祈り...だと思った。涙が流れてやまなかった。

 音楽も踊りも...語りも祈り...のように思う。かってのように 絵画も音楽も踊りも芝居も神に捧げられるのではなく 地の上のひとびとに供される。しかし もともと神への捧げものだったのだし ひとは知らずして 今日の平安、あすのしあわせを祈っているのだと思う。わが為、我がめぐりだけでもいい、がときにわたしたちひとりひとりがもっと遠くの肉の目には写らないひとたちにも 想いを馳せることができたなら、そうして この世の創造主がおいでになるとしたら 畏れ多いことではあるが その方の心に想いを馳せたなら この世の景色も少しずつ変わってゆくのではないだろうか。

 わたしの手に託された仕事やひとびと、語りをとおして どうか 天と地にすこしなりとも 生きてきた証をお返しできたら..と夢見る。らぽっぽのポテトとDTPのテキストを提げて家に帰った。




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