きのう病院もリハーサルもひと段落したので 中学の図書ボランティアでみなさんが話題にしていた「告白」を読んでみました。
5人の6つのモノローグで成り立つ小説で 読み終えたあと 全体像が見えるようになっています。作者は当初 第一章森口先生の独白だけで終わらせるつもりだったようですが、全体を見ると 若干の無理は否めません。とくに最終章 には違和感がありました。
けれども いささかの齟齬は日本のミステリでは有りがちなことです。ミステリには緻密な構成が不可欠ですが 日本には情感・雰囲気・勢いで押してしまう量産作家も数多くおります。ですから そこをとやかくとはいわないのですが 読後感は最悪でした。この本で感動する方、なにかを得られる方もおられると思いますので褒めるならいざ知らず 多くを語るつもりはありませんが、文学の意味は単なる時間つぶしでしょうか。
新作の語りをする前 多くの本を読むことになります。背景を知れば知るほど深くなるからもありますし 読まずにはいられないなにかがあるからです。それが近年はノンフィクションに類する本が多くなりました。今回は戦争と平和がテーマですから ひとの魂のありようが見える事実のものがたりをたくさん読みました。事実のまえに虚構は色あせてしまいます。だからよけいに 告白 に嘘くささを感じたのだと思います。
語りとは真実を伝えるもの 事実から真実を伝える そして 虚構から真実を伝えるものでもあります。虚構から真実を伝えるには ものごとの奥を見通す力が必要です。自分のなかに軸が必要です。
告白のなかで唯一心を動かされたのは 下村直樹という少年が必死で家族を感染から守ろうとするところ そして渡辺修哉の執念でした。.....湊かなえさん 力のある作家だと思います。今後の精進を祈っております。
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