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上記の2つの図は、日本における年次別携帯電話の普及率(左)と、癌患者の年次別数の推移(右)を現したものである。解像度がやや低いので、詳細な判別はむずかしいかも知れないが、2つが同じような右肩あがりの軌道を描いていることが読み取れる。 「年次別携帯電話の普及率」の出典は、ウエブサイトの『社会実情データ図録』である。一方、「癌患者の年次別数の推移」の出典は、国立ガンセンターである。
同じ軌道を描く2つのグラフ これら2つのデータは、同一のウエブサイトに掲載されていたわけではない。わたしが照合目的で組み合わせたのである。数年前から、わたしは携帯電話の普及につれて、癌が増えていくのではないかと予測していた。それを裏付ける可能性がある2つのデータが見つかったので、紹介したのである。 他のデータも副次的に参考にしながら、まず携帯電話の普及の足跡をたどってみた。携帯電話は1990年代の初頭から普及が始まり、90年代の半ばを過ぎたころから、急激に日常生活の中に入ってくるようになった。2013年の段階で、普及率は実に95%にも達している。 一方、癌患者が急増する時期についても、他の資料も参考にしながら検証した。その結果、急増の時期が1990年代の半ばであることが分かった。上記の図でも、それを確認することができる。
次のPDFはより明確にその傾向を示している。このデータは厚生労働省が公表したものである。 ■がん患者数の年次推移PDF この資料には、「平成8年」の年代軸に「患者数は増加している」という挿入書きがある 。「平成8年」は、1996年である。冒頭のグラフから読み取れる癌の急増時期と一致している。 癌患者の増加を示すグラフと、携帯電話の普及率を示すグラフが、ほぼ同じ右肩あがりの軌道を描いている事実は重視する必要がある。 なお、携帯電話が原因となる癌といえば、脳腫瘍や聴神経腫瘍のイメージがあるが、それだけではない。
携帯電話が普及する前提として、携帯電話の基地局の設置が条件となるので、当然、基地局の数も同じように右肩あがりに増える。 その結果、基地局周辺の住民は、携帯電話を使う人も、使わない人も、1日24時間、1年365日、全身に電磁波を浴びる。そうすると当然、脳腫瘍や聴神経腫瘍とは別種の癌のリスクも背負うことになる。 ちなみに上記図も含めて、わたしが調べた限り、脳腫瘍や聴神経腫瘍の患者数の推移を示すグラグは見当たらなかった。上記の図では、おそらく「その他(の癌)」に脳腫瘍や聴神経腫瘍が含まれているのではないかと推測する。 「電磁波村の人々」に配慮して、脳腫瘍や聴神経腫瘍のデータを掲載していない可能性もある。
複合汚染の問題 一般論として、癌は発生してから症状が現れるまでに少なくとも10年、あるいはそれ以上の歳月を要すと言われている。かりにそれが事実であれば、携帯電話が普及し初めてから、10年後ぐらいから、癌が増える傾向が観察されるはずだが、事実は携帯電話の普及が始まって、わずか数年後から癌が急増している。 これについては次の2点を考慮する必要がある。 まず、第1の考察点は癌の原因は、携帯電話の電磁波だけではないということである。地球上に発癌物質は無数にある。それゆえに、1996年ごろに癌が増え始めた原因が、それよりも前の時期、しかも、電磁波とは別に原因がある可能性である。 第2の考察点は、癌の発生から、症状が現れるまで長い歳月を要するとする説が一般論として定着しているとしても、マイクロ波を人間に被曝させて、どのような反応があるかを検証した実験は一件も存在しない事実である。人体実験は許されないから当然だ。このような実験が可能であれば、短期間に癌が発生する可能性が皆無とはいえない。
わたしの取材経験からすると、基地局が設置されて、2年から3年で癌と診断された実例は決して少なくない。たとえば拙著『あぶない!あなたのそばの携帯基地局』(花伝社)の中で、仙台市上野山2丁目のケース(87P)を紹介している。 老婦人と原田さんの話を統合すると、基地局から半径70メートルの範囲で、ここ数年の間に5人の住民がガンで亡くなっている。年齢はいずれも60代と70代である。基地局との因果関係があるのか否かは不明だが、ガンの多発は事実のようだ。 ドイツの疫学調査では、基地局の設置から5年後に癌が増え始めたとするデータがある。 ◇優先すべきは被害の事実 公害を考えるとき、複合汚染という観点を考慮しなければならない。米国のケミカル・アブストラクト・サービス(CAS)が、1日に登録する化学物質の数は、実に1万件を優に超える。つまり人体も生活環境も、常に変化しているのだ。 動物実験で電磁波の悪影響が確認できなくても、モルモットが何らかの化学物質に汚染していれば、結果が異なる可能性もあるのだ。外界は静止していない。常に変化し、常に新しい条件が生まれている。この点を考慮したとき、過去のデータはあまりあてにならない。
癌の発生から症状の出現に関する先入観にもとらわれないほうがいい。外界が変化すれば、それによって受ける影響も異なってくるのだ。 10人が同じように携帯電話のマイクロ波を浴びても、10人が同じ影響を受けるとは限らない。 たとえばよく知られている例として、子宮頸癌とヒト・パピロマ・ウイルス(HPV)の関係がある。HPVに「感染した人全員がかならず子宮頚癌になるわけではない。たとえば感染した状態で、ある環境因子にさらされDNAがダメージを受けるなどの条件が重なった場合、発癌リスクが高くなる」(利部輝雄著『性感染症』)のである。 こうした状況の下で「新世代公害」を考えるとき、最優先すべきなのは、健康被害の事実である。 - See more at: http://www.kokusyo.jp/?p=5395#sthash.xQpIpHIB.dpuf