すっかり シャッター街になった さびれた団地の商店街
細々と ちいさな カフェが ありました。
ビニールクロスのテーブル
鉄パイプの椅子 珈琲一杯 200円
老人が ふたり
「ヨシズミはえらかったなぁ」
「きれいに片づけて 死んでいった」
「病気だったのかい」
「いや 自殺だよ」
「いくつだった?」
「68歳だよ」
「今の時代じゃ まだ 若いよね」
そのあとは ダレソレが 死んだ という 話ばかり
ひとりは 元 警官らしかった。
この団地は ひと昔前 子どもたちの声で あふれていました。
小学校は2年前 廃校になりました。
わたしは ながいこと 学童クラブで おはなし会をしました。
みな 裕福そうではなかったが 情緒ゆたかで
打てば響くような 子どもたちでした。
しん と 静まった 団地の通り
それでも マスターは通り過ぎる子どもたち ひとりひとりに
声をかけ お菓子をわたしていました。
「みんな ぼくの 後輩たちですからね」
「ここで 子ども時代を過ごしたんですよ まだ できることが
あると 思うんです」
マスターは そう言って 微笑みました。