石油と中東

石油(含、天然ガス)と中東関連のニュースをウォッチしその影響を探ります。

世界最大のガス輸入国になった中国:BPエネルギー統計2019年版解説シリーズ天然ガス篇 (5)

2019-08-04 | BP統計

BPが毎年恒例の「BP Statistical Review of World Energy 2019」を発表した。以下は同レポートの中から天然ガスに関する埋蔵量、生産量、消費量、貿易量及び価格のデータを抜粋して解説したものである。

 *BPホームページ:

http://www.bp.com/en/global/corporate/energy-economics/statistical-review-of-world-energy.html

 

2.世界の天然ガスの生産量

(北米だけで世界の天然ガスの4分のⅠを生産!)

(1)地域別生産量

(図http://bpdatabase.maeda1.jp/2-2-G01.pdf 参照)

 2018年の世界の天然ガス生産量は年産3兆8,679億立方メートル(以下㎥)であった。これは石油換算では年産33億トンであり、またフィート換算では日産3,742億立法フィートである。

 

生産量を地域別にみると北米が1兆㎥を超えて最も多く全体の27%を占めている。これに次ぐのがロシア・中央アジア8,300億㎥(22%)であり、これら二つの地域だけで世界の半分を占めている。その他の地域は中東6,900億㎥(18%)、アジア・大洋州6,300億㎥(16%)、欧州2,500億㎥(6%)、アフリカ2,400億㎥(6%)、中南米1,800億㎥(5%)、であった。

 

 各地域の生産量と埋蔵量(前章参照)を比較すると、中東は埋蔵量では世界の39%を占めているが生産量では18%に過ぎない。これに対し北米は埋蔵量シェアが世界全体の7%にとどまるのに対して、生産量のシェアは27%に達しており、埋蔵量と生産量のギャップが大きい。その他の地域の埋蔵量シェアと生産量シェアはロシア・中央アジアは32%(埋蔵量シェア)対22%(生産量シェア)、で中東と同様埋蔵量シェアが大きく、一方、アジア大洋州は同9%対16%、欧州は(2%対6%)であり、北米同様生産量シェアの方が大きい。アフリカ及び中南米は埋蔵量シェアと生産量シェアがほぼ均衡している。このことから天然ガスを他の地域に輸出できるポテンシャルが高いのは中東及びロシア・中央アジアの両地域であると言えよう。

 

(他を圧倒する米国とロシア!)

(2)国別生産量

(表http://bpdatabase.maeda1.jp/2-2-T01.pdf 参照)

 次に国別に見ると、天然ガス生産量第1位は米国の8,318億㎥/年(805億立法フィート/日、7.2億トン/年)であり、全世界の生産量に占める割合は22%である。第2位はロシア(6,695億㎥、シェア17%)であり、米ロ2カ国の生産量が飛び抜けて多い。

 

この2カ国に続くのがイラン(2,395億㎥)、カナダ(1,847億㎥)、カタール(1,755億㎥)であり、米国或いはロシアの3分の1乃至4分の1である。6位から9位は中国(1,615億㎥)、オーストラリア(1,301億㎥)、ノルウェー(1,206億㎥)、サウジアラビア(1,121億㎥)であり、以上9か国が生産量1千億㎥を超えている。10位はアルジェリア(923億㎥)である。

 

 これら上位各国の生産量を前年と比較するとオーストラリアが対前年比15%と顕著な増加を示している。同国は近年大型のLNGプロジェクトが次々と稼働を始めており、近い将来現在のカタールをしのぐ世界最大のLNG輸出国になると予測されている。米国も前年比12%の増加であり、シェールガスの生産が拡大していることをうかがわせる。世界全体の増加率は5.2%であるが、イラン(+8.8%)、中国(+8.3%)なども世界平均を上回る増加率を示している。

 

 一方上位10か国の中でノルウェーとアルジェリアの2か国はわずかではあるが生産量が前年を下回っている。

 

(続く)

 

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        前田 高行         〒183-0027東京都府中市本町2-31-13-601

                               Tel/Fax; 042-360-1284, 携帯; 090-9157-3642

                               E-mail; maeda1@jcom.home.ne.jp

 

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