BPが毎年恒例の「BP Statistical Review of World Energy 2019」を発表した。以下は同レポートの中から天然ガスに関する埋蔵量、生産量、消費量、貿易量及び価格のデータを抜粋して解説したものである。
*BPホームページ:
http://www.bp.com/en/global/corporate/energy-economics/statistical-review-of-world-energy.html
(再び勢いづく米の天然ガス生産!)
(4)主な国の生産量の推移(2009~2018年)
(図http://bpdatabase.maeda1.jp/2-2-G03.pdf 参照)
2018年の天然ガス生産量が多い5カ国(米国、ロシア、イラン、カタール及びオーストラリア)について2009年から2018年までの過去10年間の生産量の推移を追ってみる。
2009年の生産量は米国が最も多く5,576億㎥であり、ロシアが5,362億㎥であった。両国は2011年まで僅差でトップを争っていた。2012年以降はロシアの生産が停滞する一方、米国は急激に拡大、2015年には米国(7,403億㎥)とロシア(5,844億㎥)の格差はそれまでで最大となった。201及び2017年は米国の生産が停滞、その間にロシアが増産し両者の格差は縮小した。しかし2018年は米国が前年比11.5%と大幅に増産、ロシアも5.3%増であったが、米国の勢いがロシアを上回り、同年の生産量は米国8,318億㎥、ロシア6,695億㎥であった。
ロシアの天然ガスはパイプラインで西ヨーロッパに送られており、備蓄が効かないパイプライン輸送は末端の需要に左右されやすいと言える。このためロシアは極東サハリン或は北極圏ヤマルからのLNG輸出に力を入れており、今後生産量が増える見通しである。
イランとカタールとオーストラリアの2018年の天然ガス生産量はいずれも2009年を上回っており、各国の増加率はそれぞれ1.8倍、1.9倍、2.8倍であるが、そこには各国特有の事情が見られる。イランの場合は経済制裁の為、LNGの海外輸出が制約され、国内消費に向けられている。2009年以降の生産増は発電用燃料、自家消費などが増加したためであろう。これに対してカタールはLNGの輸出国であり、早くにLNG年間77百万トンの輸出体制を整えたが、2005年にはLNG生産能力の凍結(モラトリアム)を宣言している。この結果、2010年代のLNGの需要増に対応できずオーストラリアなど新たに天然ガス田を開発し、LNG輸出能力を高めた国に市場を奪われシェアは減少傾向にある(詳しくは後述する第4章天然ガス貿易を参照)。なおカタールは2017年にモラトリアム宣言を撤回、生産能力の増強に舵を切っており、LNG年産1億トン体制を目指している。
オーストラリアはカタールの後を追うように近年ガス田開発と液化設備の建設を行っている。2009年の生産量は467億㎥であったが、2013年には600億㎥を超え、2017年にはついに1千億㎥を突破して2018年の生産量は1,301億㎥に達している。日本などとの長期契約によりLNGの販売体制を確立、LNGの生産出荷施設も相次いで建設されており今後生産量はさらに増加するものと考えられる。
(天然ガス篇生産量 完)
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