BPが毎年恒例の「BP Statistical Review of World Energy 2019」を発表した。以下は同レポートの中から天然ガスに関する埋蔵量、生産量、消費量、貿易量及び価格のデータを抜粋して解説したものである。
*BPホームページ:
http://www.bp.com/en/global/corporate/energy-economics/statistical-review-of-world-energy.html
(5)主要6カ国の生産・消費ギャップおよび自給率
世界の主要な天然ガスの生産国と消費国を並べると、日本やドイツを除く多くの国が天然ガスの消費国であると同時に生産国であることがわかる。例えば米国とロシアはそれぞれ世界1位と2位の生産国であり同時に消費国でもある(本稿2-(2)および3-(2)参照)。カナダは生産国としては世界4位、消費国としても世界5位であり、また中国も生産量世界6位、消費量世界3位であり、インドは生産量は世界28位と低いが、消費量は世界14位である。また近年天然ガス輸出国として頭角を現しているオーストラリアは生産量世界7位、消費量は世界24位である。
ここではこれら6カ国について生産量と消費量のギャップ(需給ギャップ)の推移を見ると共に、米国、中国、UAE、英国及びインドの5カ国について天然ガス自給率を検証してみる。
(輸出余力が増えるロシアとオーストラリア!)
(5-1)各国の生産量と消費量のギャップ
(図http://bpdatabase.maeda1.jp/2-3-G04.pdf 参照)
6カ国のうちで2018年の生産量が消費量を上回っているのはロシア、オーストラリア、カナダ及び米国の4カ国であり、中国及びインドは消費量が生産量を上回っている。つまり4カ国は天然ガスの輸出余力があり、2カ国は天然ガスを輸入する必要があることを示している。
6カ国の過去10年間(2009~2018年)の需給ギャップを見ると、2009年のロシアは生産量5,362億㎥に対し消費量は3,978億㎥であり、差し引き1,384億㎥の生産超過(輸出余力)となり、ヨーロッパ諸国に輸出されたことになる。ロシアの生産超過量はその後拡大し2018年の需給ギャップは過去10年で最大の2,150億㎥に達している。新たな国内ガス田の開発及びLNG設備の新設により輸出余力が向上していることを示している。
カナダもロシアと同様生産量が消費量を上回っており2009年の生産量は1,551億㎥、消費量は866億㎥で差し引き685億㎥の余剰生産であったが、その後余剰生産量は減少し続け2013年には477億㎥に縮小している。その後余剰生産量は年々拡大し2018年は生産量1,847億㎥に対し消費量は1,157億㎥であり余剰生産量は690億㎥と10年前の水準に復帰している。
2009年に米国は600億㎥の消費超過であった(生産5,576億㎥、消費6,176億㎥)。2011年以降はギャップが急速に小さくなり、2015年のギャップは33億㎥にまで下がり、2017年には生産が消費を上回る逆転現象が起こった。2018年もこの傾向が続き147億㎥の生産超過となり、天然ガスの純輸出国に変貌している。これは言うまでもなくシェールガスの開発によるものである。
中国の場合、2009年は生産量859億㎥、消費量902億㎥で天然ガスの需給はほぼバランスしていた。しかしその後消費量の増加が顕著で需給ギャップが年々大きくなっている。2018年は生産量1,615億㎥に対し消費量は2,830億㎥に達し、正味1,215億㎥が輸入されたことになる。この傾向が今後も続くことは間違いないであろう。
オーストラリアは新規ガス田の開発により2018年の生産量は2009年の2.8倍に増加している。これに対して同じ期間の消費の伸びは1.4倍であり余剰生産量は176億㎥から887億㎥に拡大、LNGとして輸出に回されている。
インドの場合2009年は生産量361億㎥に対し消費量は491億㎥で差し引き130億㎥の不足であった。この後不足量は徐々に拡大し、2018年の需給不足量は306億㎥(生産275億㎥、消費581億㎥)に達している。インドは中国ほどではないにしろ、今後も需給ギャップは拡大し続けるものと予測される。
(続く)
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