BPが毎年恒例の「BP Statistical Review of World Energy 2019」を発表した。以下は同レポートの中から天然ガスに関する埋蔵量、生産量、消費量、貿易量及び価格のデータを抜粋して解説したものである。
*BPホームページ:
http://www.bp.com/en/global/corporate/energy-economics/statistical-review-of-world-energy.html
(アジア・大洋州の天然ガス消費量は1970年の60倍に激増!)
(3)地域別消費量の推移(1970-2018年)
(図http://bpdatabase.maeda1.jp/2-3-G02.pdf 参照)
1970年に9,600億㎥であった天然ガスの消費量はその後1992年に2兆㎥を超え、2008年にはついに3兆㎥の大台を超えている。2018年の消費量は3.8兆㎥であり、1970年から2018年までの間で消費量が前年度を下回ったのは2009年の1回のみで毎年増加し続けており、48年間の増加率は4倍に達している。
石油の場合は第二次オイルショック後の1980年から急激に消費量が減った例に見られるように、価格が高騰すると需要が減退すると言う市場商品としての現象が見られる。天然ガスの場合は輸送方式がパイプラインであれば生産国と消費国が直結しており、またLNGの場合もこれまでのところ長期契約の直売方式が主流である。そして天然ガスは一旦流通網が整備されると長期かつ安定的に需要が伸びる傾向がある。天然ガス消費量が一貫して増加しているのはこのような天然ガス市場の特性によるものと考えられる。
北米、アジア・大洋州をはじめとする7つの地域の消費量の推移を見ると地域毎の消費量の推移にはいくつかの大きな特徴が見られる。1970年の世界の天然ガス消費量の64%は北米、20%はロシア・中央アジア、11%が欧州であり、三地域だけで世界全体の95%を占めており、その他のアジア・大洋州、中南米、中東及びアフリカ地域は全て合わせてもわずか5%にすぎなかった。
その後、北米の消費量の伸びが小幅にとどまったのに対して、欧州及びロシア・中央アジア地域は1980年代から90年代にかけて急速に消費が拡大、1990年の世界シェアは北米の31%に対して、ロシア・中央アジアと欧州の合計シェアは51%に達している。しかし1990年以降はこれら3地域に替わってアジア・大洋州の市場が大きく拡大し、世界に占めるシェアは1970年の1%から2000年には12%に増え、消費量は3千億㎥に達している。アジア・大洋州地域の消費量はその後も大きく増加し、2018年には1970年の60倍、8,300億㎥に激増し、世界に占めるシェアも北米に次ぐ21%を占めるようになった。
北米、ロシア・中央アジア地域及び欧州とアジア・大洋州地域の違いは先に述べた輸送網の拡充が消費の拡大をもたらすことの証しであると言えよう。即ち北米では1970年以前に既に主要なパイプラインが完成していたのに対し、欧州・ユーラシアでは旺盛な需要に対応して1970年以降ロシア方面から西ヨーロッパ向けのパイプラインの能力が増強されている。この場合、パイプラインの増設が西ヨーロッパの更なる需要増加を招く一方、ロシア及び中央アジア諸国などの天然ガス生産国では新たなガス田の開発が促進され、相互に呼応して地域全体の消費を押し上げる相乗効果があったと考えられる。アジア・大洋州の場合は、日本が先陣を切ったLNGの利用が、韓国、台湾などに普及し、また中国、インド等新たなLNG輸入国が生まれたことにより地域における天然ガスの消費が近年急速に拡大しているのである。
(続く)
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