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http://mylibrary.maeda1.jp/0476MajorJxtgIdemitsu2019AprJun.pdf
(生い立ちの違いで生産量に巨大な格差!)
4.上流・下流部門の業績比較
JXTG及び出光は元来石油精製事業を専業とし市場も日本国内にとどまっていた。その後、吸収合併を重ね或はエネルギー事業の多角化を進めた結果、例えばJXTGは日本鉱業の吸収合併により非鉄金属事業が同社の事業の一翼を占めている。また出光は事業多角として豪州石炭事業或は高機能材などに手を広げている。
これに比べメジャーズは創業当初から石油・天然ガスの開発生産に取り組み、また世界を相手に事業展開を行うエネルギー専業企業としての長い歴史を有している。JXTG、出光両社も石油天然ガスの開発に取り組んでいるが、メジャーズなど世界のエネルギー企業に比べて大きく出遅れ苦戦を強いられている。
メジャーズと日系2社の原油天然ガス生産量、上流部門利益及び下流部門の利益は以下に見るとおり巨大な格差がある。
4-1.原油・天然ガスの生産量(図http://menadabase.maeda1.jp/2-D-5-15.pdf 参照)
メジャーズ5社の4-6月期の石油天然ガスの合計生産量を石油換算(B/D)で見ると、最も多いExxonMobilは391万B/Dであり、最も少ないBPも263万B/Dを生産している。これに対してJXTGの生産量は9.9万B/D(石油3.5万B/D、ガス6.4万B/D)であり、出光は2.7万B/D(全量石油)である。
4-2上流部門の利益 (図http://menadabase.maeda1.jp/2-D-5-13.pdf 参照)
ここではJXTGについては決算書が示すセグメント別業績の内、エネルギー事業(いわゆる石油下流部門)と石油・天然ガス開発事業(いわゆる上流部門)の営業利益を取り上げ、また出光もセグメント別営業利益の燃料油部門と資源部門を取り上げてメジャー5社と比較する。
日系2社の上流部門の利益はJXTGが69億円(6,300万ドル)、出光は67億円(6,100万ドル)であった。これに対してメジャー5社の上流部門の利益はChevron、BP及びExxonMobilがそれぞれ35億ドル、34億ドルおよび33億ドルとほぼ一線に並び、Totalがこれら3社に次ぐ20億ドルの利益を計上、Shellは最も少ない16億ドルである。日系2社の利益は1億ドル未満であり両者の格差は甚だしい。
4-2下流部門の利益 (図http://menadabase.maeda1.jp/2-D-5-14.pdf 参照)
日系2社の下流部門の利益は、出光が52億円(4,700万ドル)、JXTGは45億円(4,100万ドル)であった。一方メジャーで下流部門の利益が最も多いのはBPの14億ドルであり、続いてShell11億ドル、Chevron、Total各7億ドル、ExxonMobil5億ドルとなっている。最も少ないExxonMobilでも出光の10倍以上の利益を計上している。
なお各社の上流部門と下流部門の利益を比較すると、メジャーズ5社は上流部門が下流部門の2~4倍の高い利益を出している。一方、日系2社は両部門の利益格差が少ない。これには種々の要因が考えられるが、一つの要因として現在日本国内ではガソリン価格は原油価格の変動に応じ各社が適正な利潤を確保できるいわゆる価格転嫁が認められている特有の価格制度にあるためと言えよう(逆に言えば下流部門の利益が常に低い水準に推移することを意味している)。
以上
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