(注)本シリーズは「マイ・ライブラリー (前田高行論稿集)」で一括ご覧いただけます。
http://members3.jcom.home.ne.jp/3632asdm/0231BpOil2012.pdf
(米国一国で世界の石油の2割を爆食している!)
3.世界の石油消費量
(1) 地域別消費量
(図http://members3.jcom.home.ne.jp/maedaa/1-3-G01.pdf 参照)
2011年の世界の年間石油消費量は日量8,803万バレル(以下B/D)であった。地域別でみるとアジア・大洋州が2,830万B/Dと最も多く全体の32%を占め、次に多いのが北米の2,316万B/D(26%)であった。2007年以降はアジア・大洋州が北米を上回る最大の消費地域となっており、この傾向は今後定着するものと思われる。これら二つの地域に続くのが欧州・ユーラシア1,892万B/D(22%)であり、これら3地域で世界の石油の80%を消費している。残りの中東(9%)、中南米(7%)及びアフリカ(4%)の3地域を合計しても20%に過ぎず、石油の消費は先進地域(北米、欧州・ユーラシア)及び新興工業国が多いアジア・大洋州に偏っている。
各地域の消費量と生産量(前回参照)を比較すると、生産量では世界全体の33%を占めている中東が消費量ではわずか9%であり、アフリカも生産量シェア10%に対して消費量シェアは4%に過ぎない。これに対してアジア・大洋州は生産量シェア10%に対して消費量シェアは32%、また北米のそれは17%(生産量)、26%(消費量)といずれも大幅な消費超過となっている。欧州・ユーラシアは生産量21%、消費量22%でほぼ均衡している。このことからマクロ的に見て、世界の石油は中東及びアフリカ地域からアジア・大洋州及び北米地域に流れていると言えよう。
(2) 国別消費量
(表http://members3.jcom.home.ne.jp/maedaa/1-3-T01.pdf参照)
国別に見ると世界最大の石油消費国は米国で、2011年の消費量は1,884万B/D、世界全体の21%を占めている。第二位の中国(976万B/D、シェア11%)を大きく引き離す石油消費大国である。三位以下は日本(442万B/D)、インド(347万B/D)、ロシア(296万B/D)、サウジアラビア(286万B/D)、ブラジル(265万B/D)と続いている。石油は米、日の先進2カ国及びBRICsと呼ばれる中国、インド、ロシア、ブラジルの新興4カ国に大産油国でもあるサウジアラビアを加えた7カ国で世界の半分を消費している。この他ベストテンに入っているのは第8位韓国(240万B/D)、第9位ドイツ(236万B/D)、第10位カナダ(229万B/D)である。
国別消費量を前章の国別生産量(第2章(2))と比較すると興味ある事実が浮かび上がる。米国と中国は消費量世界一位と二位の消費大国であるが、同時に生産量についても米国は世界3位、中国は世界5位の生産大国でもある。サウジアラビア及びロシアは言うまでもなく世界一、二の石油生産量を誇っている。その他ブラジルも生産量世界13位である。このように石油消費大国の大半(10カ国中6カ国)は石油生産大国でもある。消費量ベストテンに入っていて生産量が皆無又は非常に少ない国は、日本、インド、韓国及びドイツの4カ国である。このように各国によって事情が異なっており、「消費国」と言うだけで結束して産油国(例えばOPECなど)に対峙することは容易ではないと言える。
(続く)
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前田 高行 〒183-0027 東京都府中市本町2-31-13-601
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(いくらでも生産が増やせるサウジアラビア、伸張著しいブラジル!)
(4)主要産油国の生産量の推移(1990年~2011年)
(図http://members3.jcom.home.ne.jp/maedaa/1-2-G03.pdf 参照)
産油国の中には長期的に見て生産量が増加している国がある一方、年々減少している国もある。ここではサウジアラビア、ロシア、米国、イラン、中国、UAE、イラク、ベネズエラ及びブラジルの9カ国について生産量の推移を見てみる。
サウジアラビアの生産量は1990年の711万B/Dが2000年には944万B/Dに増加、2011年は1,116万B/Dに達している。これは1990年比1.6倍という顕著な増加である。ロシアの石油生産は1990年に1千万B/Dを超えていたが、ソ連崩壊の影響で90年代は急減、2000年の生産量は647万B/Dに落ち込んだ。しかし同国はその後再び生産能力を回復し2011年は革命前の水準に戻り1,028万B/Dを記録している。
現在世界第3位の産油国である米国は1980年代半ばまで1千万B/Dの生産量を維持していたが、その後は年を追う毎に減り1990年には891万B/Dに減少、2008年にはついに800万B/Dを割り773万B/Dまで落ち込んだ。しかし同年以降、米国の石油生産は上向きに転じ2011年には784万B/Dに回復している。
イラン、中国及びUAE各国の1990年、2000年、2011年の生産量を比べると3カ国とも同じような増産傾向を示している。即ちイランの場合は327万B/D(1990年)→385万B/D(2000年)→432万B/D(2011年)で、中国は278万B/D→326万B/D→409万B/D、UAEは228万B/D→262万B/D→332万B/Dとなっている。
イラクは1979年には350万B/Dの生産量を誇っていたが、1980年代はイラン・イラク戦争のため生産が漸減、1990年の生産量は215万B/Dに落ち込んだ。更に1991年の生産量は湾岸戦争のため134万B/Dになり、その後は経済制裁の影響で100万B/D以下に激減した年もあった。2000年には261万B/Dまで回復したものの、2003年のイラク戦争後も長く低迷した。近年漸く生産は上向き2011年の生産量は280万B/Dとなっている。
ベネズエラは1990年の224万B/Dから2000年には1.4倍の324万B/Dに増加した後、2011年には逆に272万B/Dに落ち込んでいる。これと対照的に1990年以降の20年間で生産量を急激に伸ばしたのがブラジルである。同国の1990年の生産量は65万B/Dでベネズエラの30%程度に過ぎなかったが、2000年には1990年の2倍の127万B/D、さらに2011年には220万B/Dに急増、その生産量はノルウェーをしのぎイラク、ベネズエラに肉迫している。
(石油篇生産量完)
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(OPECのシェアは今も40%以上!)
(3)石油生産量の推移とOPECシェア(1965~2011年)
(図http://members3.jcom.home.ne.jp/maedaa/1-2-G02.pdf 参照。)
1965年の世界の石油生産量は3,180万B/Dであったが、その後生産は急速に増加し、1980年には6,295万B/Dとほぼ倍増した。その後価格の高騰により石油の消費は減少、1985年の生産量は5,744万B/Dにとどまった。1980年代は石油の生産が歴史上初めて長期にわたり減退した時期であった。
1990年代に入ると石油生産は再び右肩上がりに増加し始めた。そして1995年(6,797万B/D)以降急激に伸び2000年に7,480万B/D、2005年は8千万B/Dを突破して8,139万B/Dに達している。これは中国、インドなど新興経済国の消費量が急増したことが主たる要因である。その後2000年代後半は原油価格の急騰とそれに続く景気後退で石油生産の増加は鈍り2011年の生産量は8,358万B/Dであった。
地域毎のシェアの変化を見ると、1965年は北米の生産量が32%でもっとも多く、中東26%、欧州・ユーラシア18%、中南米14%、アフリカ7%と続き、アジア・大洋州はシェアが最も小さく3%であった。しかしその後北米の生産が停滞する一方、中東及び欧州・ユーラシア(特にロシア及び中央アジア各国)が急成長したため、現在(2011年)では冒頭にも述べたとおり、中東のシェアが最も高く(33%)、次いで欧州・ユーラシア(21%)、北米(17%)の順となっている。最近ではアフリカの生産が伸びており、同地域のシェアは12%に拡大している。
石油生産に占めるOPEC加盟国のシェアの推移を見ると、1965年は44%であり、第一次オイルショック(1973年)前には50%近くに達した。しかし80年代前半にシェアは急落し85年には30%を切った。その後80年代後半から90年代前半にシェアは回復し、95年以降は再びシェアは拡大して40%台のシェアを維持しており2011年は41%であった。
OPECのシェアが1980年代前半に急落したのは、第二次オイルショック(1979年)の価格暴騰を引き金として世界の景気が後退、石油需要が下落した時、OPECが世界の平均を上回る大幅な減産を行ったためである。
今後石油生産がどのように推移するかについては需要と供給の両面で不確定な要素が多く予測することはかなり難しい。需要面で見ると欧州金融危機により世界の景気の先行きの見通しが不透明であり、また地球温暖化問題に対処するため太陽光、風力などの再生可能エネルギーの利用促進が叫ばれている。さらに炭化水素エネルギー源としてもCO2排出量の少ない天然ガスの人気が高く、また石油の消費を減らす省エネ技術が普及しつつある。このように石油の需要を取り巻く環境は厳しいものがある。その一方、中国、インドなどのエネルギー需要は今後も拡大するとする見方が一般的であり、この点では基幹エネルギーである石油の需要は底堅く、再び増勢に転じることも十分予測される。今後石油の生産が停滞するのか、或いは需要の増加に対応するため増産に向かうのかは流動的である。
(続く)
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(サウジアラビアとロシアの2強が生産量1千万B/D台で首位争い!)
2.2011年の世界の石油生産量
(1) 地域別生産量
(図http://members3.jcom.home.ne.jp/maedaa/1-2-G01.pdf参照)
2011年の世界の石油生産量は日量8,358万バレル(以下B/D)であった。これを地域別でみると中東が2,769万B/Dと最も多く全体の33%を占めている。その他の地域については欧州・ユーラシア1,731万B/D(21%)、北米1,430万B/D(17%)、アフリカ880万B/D(10%)、アジア・大洋州809万B/D(10%)、中南米738万B/D(10%)である。
各地域の生産量と埋蔵量(石油篇1参照)を比較すると、埋蔵量のシェアが生産量のシェアより高い地域は中東及び中南米であり、その他の地域(北米、欧州・ユーラシア、アフリカ、アジア・大洋州)は生産量のシェアが埋蔵量のシェアよりも高い。例えば中東は埋蔵量では世界の48%を占めているが生産量はその33%に過ぎない。中南米も埋蔵量シェア20%に対し生産量シェアは9%である。一方、北米及び欧州・ユーラシアの場合、埋蔵量シェアがそれぞれ13%、9%に対して生産量のシェアは17%及び21%である。またアジア・大洋州も生産量シェアが埋蔵量シェアを8ポイント上回っている。このことから地域別に見て将来の石油生産を維持又は拡大できるポテンシャルを持っているのは中東及び中南米であることが読み取れる。
(2) 国別生産量
(表http://members3.jcom.home.ne.jp/maedaa/1-2-T01.pdf参照)
次に国別に見ると、最大の石油生産国はサウジアラビアである。同国の2011年の生産量は1,116万B/Dであり、第2位はロシア(1,028万B/D)であった。ロシアとサウジアラビアは世界の二大産油国である。サウジアラビアはこれまで圧倒的な生産量を誇り両国の差は一時300万B/Dを超えたこともあったが、近年はその差が縮まり2009年、2010年の両年はロシアがサウジアラビアを追いぬき生産量世界一となっている。しかし2011年には再びサウジアラビアが生産量世界一の座を取り戻している。
両国に続くのが米国(784万B/D)、イラン(432万B/D)、中国(409万B/D)である。6位以下10位までの生産国はカナダ、UAE、メキシコ、クウェイト、イラクの各国である。イラクの生産量は280万B/Dであり、イラク戦争前を上回る生産水準に回復した。但し過去最高の生産量を誇った1979年の349万B/Dには未だ達していない。ここ数年同国は次々と国際入札によりルメイラ油田など生産能力の高い油田の開発改修を進めている 。同国はこれら各プロジェクトが目論見通りの生産量を達成できれば、2017年には生産量が8百万B/Dに達し最終的な生産能力は1,200万B/Dになると説明している 。この目標値はかなりハードルが高く消息筋は実現に疑問符をつけているが、イラクの石油生産量が今後も伸びることは間違いないであろう。
(続く)
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