石油と中東

石油(含、天然ガス)と中東関連のニュースをウォッチしその影響を探ります。

BPエネルギー統計レポート2012年版解説シリーズ:天然ガス篇1 埋蔵量(1)

2012-07-13 | その他

本シリーズは「マイライブラリー(前田高行論稿集)」で一括してご覧いただけます。

http://members3.jcom.home.ne.jp/3632asdm/0233BpGas2012.pdf

 

BPが毎年恒例の「BP Statistical Review of World Energy 2012」を発表した。以下は同レポートの中から天然ガスに関する埋蔵量、生産量、消費量、貿易量のデータを抜粋して解説したものである。

(天然ガスの埋蔵量世界一はロシアである!)
1.世界の天然ガスの埋蔵量と可採年数
(1)2011年末の確認埋蔵量
 2011年末の世界の天然ガスの確認可採埋蔵量(以下単に「埋蔵量」と言う)は208兆立方メートル(以下tcm: trillion cubic meter)であり、可採年数(R/P)は64年である。

(図http://members3.jcom.home.ne.jp/maedaa/2-1-G01.pdf 参照)
 埋蔵量を地域別に見ると中東と欧州・ユーラシアがそれぞれ38%であり、この2地域だけで世界の埋蔵量の4分の3を占めている。これら2地域に次ぐのはアジア・大洋州8%、アフリカ7%、北米5%、南米4%とほぼ同じ程度でこれらすべて合わせても全体の24%にとどまる。このように世界の天然ガスの埋蔵量は一部地域に偏在していると言える。

 埋蔵量を生産量(次章参照)で割った数値が可採年数(R/P)であるが、2011年の天然ガスのR/Pは64年である。これを地域別で見ると中東地域の100年以上に対して北米はわずか13年にすぎない。その他欧州・ユーラシア(76年)、アフリカ(72年)が全世界の平均を上回っており、中南米は45年、アジア・大洋州は35年である。

(表http://members3.jcom.home.ne.jp/maedaa/2-1-T01.pdf参照)
 次に国別に見ると、世界で最も天然ガスの埋蔵量が多いのはロシアの45tcmで世界全体の21%を占めている。第二位はイラン(33tcm、16%)、第三位カタール(25tcm、12%)、第四位トルクメニスタン(24tcm、12%)であり、これら4カ国だけで世界の埋蔵量の6割を占めている。5位以下、10位までは米国(世界シェア4.1%)、サウジアラビア(3.9%)、UAE(2.9%)、ベネズエラ(2.7%)、ナイジェリア(2.5%)、アルジェリア(2.2%)と続いており、上位10カ国の世界シェア合計は79%に達する。

 因みに天然ガス生産国の一部はガス輸出国フォーラム(GECF)を結成している。GECFは2001年に結成され、現在は正式メンバーがロシア、イラン、カタール、アルジェリアなど12カ国及びオブザーバーがノルウェーなど3カ国の合計15カ国で構成されている(*)。GECF加盟国の2011年末の天然ガス埋蔵量は合計128tcmであり、全世界の埋蔵量の61.5%を占めている(正式メンバー国のみの場合は59.1%)。これは石油の埋蔵量でOPEC12ヶ国の占めるシェア(68%)に比べても決して低いものではない。

(*)ガス輸出国フォーラム(GECF)メンバー
正式加盟国(12ヶ国):ロシア、イラン、カタール、ベネズエラ、ナイジェリア、アルジェリア、エジプト、リビア、オマーン、トリニダード・トバゴ、ボリビア、エクアトール・ギニア
オブザーバー参加国(3カ国):ノルウェー、カザフスタン、オランダ

 GECF自体は加盟国相互間で世界の天然ガス市場の需給・価格情報を共有することが目的であり、OPEC(石油輸出国機構)のような生産カルテルではない。しかし消費国の一部にはGECFを「天然ガスのOPEC版」と警戒する向きもあり、今後の動向が注目されている 。
 
(続く)

本稿に関するコメント、ご意見をお聞かせください。
 前田 高行 〒183-0027 東京都府中市本町2-31-13-601
   Tel/Fax; 042-360-1284, 携帯; 090-9157-3642
   E-mail; maeda1@jcom.home.ne.jp

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ニュースピックアップ:世界のメディアから(7月12日)

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・来年の石油需要は鈍化:OPEC月例レポート

 

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BPエネルギー統計レポート2012年版解説シリーズ:石油篇11 消費量(4)

2012-07-11 | その他

(注)本シリーズは「マイ・ライブラリー (前田高行論稿集)」で一括ご覧いただけます。

http://members3.jcom.home.ne.jp/3632asdm/0231BpOil2012.pdf

 

(中国は石油の自給率が年々低下、一方米国は改善の兆し!)

(5)石油自給率及び輸出余力の変化(1985年~2011年)
(図http://members3.jcom.home.ne.jp/maedaa/1-3-G04.pdf 参照)
 石油生産国の中でも人口が多く産業規模の大きな国は同時に多くの石油を消費する。例えば米国と中国はそれぞれ世界3位と5位の産油国であるが、米国は1965年以前から既に石油の輸入国であり、中国は1990年代前半に輸入国に転落している。米国の場合2011年は生産量784万B/Dに対して消費量は1,884万B/Dであり、差し引き1,100万B/Dの需要超過で石油自給率は42%となる。1965年に78%であった米国の石油自給率は年々低下し1990年代には50%を切り、そして2000年代は40%を割るなどほぼ一貫して低下してきた。しかし同国の自給率は2007年の33%を底に改善しつつあり、2010年は39%、2011年には40%を超え42%にまで上昇していることは注目に値する。

 中国の場合、1992年までは生産量が消費量を上回り自給率100%であったが、その後純輸入国に転じている。しかも生産と消費の不均衡は年々広がり、2000年に151万B/Dであった需給ギャップは2011年には567万B/Dに拡大している。この結果2000年には68%であった自給率も急速に悪化し、2007年に50%を割り、2011年は42%となっている。これは上記に示した米国の自給率と同じである。

 ブラジルは米国、中国と同様常に生産量が消費量を下回っており石油の輸入国である。しかし同国は深海油田の開発に成功し埋蔵量が大幅にアップしており(第1章3項「8カ国の石油埋蔵量の推移」参照)、これに伴って生産量も急増している(第2章4項「主要産油国の生産量の推移」参照)ことから自給率は大幅に改善されている。即ち20世紀末までの同国の自給率は50%を切っていたが、2005年以降の自給率は80%を超え、2011年は83%である。深海油田の開発生産が軌道に乗ればブラジルは近い将来石油輸出国の仲間入りをすることはほぼ間違いないであろう。

 米国、中国、ブラジルに比べ同じ産油国でもサウジアラビア、ロシア及びイランは生産量が国内消費量を上回り輸出によって外貨を稼いでいる国である。これら3カ国の2005年の生産量と消費量のギャップ(生産-消費ギャップ)はそれぞれサウジアラビアが906万B/D(生産:1,103万B/D、消費:197万B/D)、ロシア682万B/D(同944万B/D、262万B/D)、イラン249万B/D(同418万B/D、170万B/D)であった。これは各国の生産量の82%、72%及び59%に相当する(以下「輸出比率」)。その後3カ国は対照的な歩みを見せており、サウジアラビアの生産-消費ギャップは年々上がり2005年には906万B/Dに達しその後徐々に低下して2011年は831万B/Dとなっている。なおこの間の輸出比率は70%台を維持し続け、2011年のそれは74%である。

 ロシアはソビエト革命以後の1990年代に生産が大幅に落ち込んだ。その後生産は徐々に回復し2005年以降は生産-消費ギャップが革命前の水準に戻り輸出比率も71~73%で推移し、サウジアラビア(上記)と同じ水準である。

 イランの生産と消費のギャップは1995年以降ほぼ250万B/Dで推移している。しかし輸出比率は1995年~2000年までは60%半ばであったが、2005年以降は60%を切り、2011年のそれは58%であった。これはこの間の同国の生産量の増分が国内消費に食われていることを意味している。またイランの輸出可能量が250万B/Dで横這いしていることは毎年の歳入が油価に左右されることを意味している。同国がOPECの中で強硬派と呼ばれ石油価格を高値に誘導しつつ、一方では割当生産枠を超えて生産する協定破りの常習犯であるのはこのような石油の生産と消費に関する同国の国内事情があるためである。なお同国は核開発疑惑を巡る石油禁輸措置により7月以降の輸出が大幅に減少しているが、今回のレポートは未だその影響が現れる以前のものである。

(石油篇完)

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BPエネルギー統計レポート2012年版解説シリーズ:石油篇10 消費量(3)

2012-07-10 | その他

(注)本シリーズは「マイ・ライブラリー (前田高行論稿集)」で一括ご覧いただけます。

http://members3.jcom.home.ne.jp/3632asdm/0231BpOil2012.pdf

 

(トップの米国を追い上げる中国、三位日本に肉迫するインド!)

(4) 四大石油消費国(米、中、日、印)の消費量の推移
(図http://members3.jcom.home.ne.jp/maedaa/1-3-G03.pdf参照)
  2011年の四大石油消費国は米国、中国、日本及びインドである。これら4カ国の1965年以降の消費量の推移には先進国(米国・日本)と開発途上国(中国・インド)それぞれの特徴が如実に表われている。

 世界最大の石油消費国である米国は1980年まで石油の消費が大きく伸びた後、1980年代前半は需要がマイナスに落ち込んでいる。しかし1985年(1,573万B/D)以降再び消費量は着実に増加、2000年代前半には2千万B/Dを突破した。そして2005年に2,080万B/Dに達した後は急激に減少し、2011年に再び2千万台を割り1,884万B/Dに落ち込んだ。

 日本については1965年の消費量は171万B/Dで米国の7分の1に過ぎなかったが、それでもインド(25万B/D)、中国(22万B/D)を大きく引き離していた。その後日本の消費量は第一次オイルショックまでは急成長し、1975年には3倍近い479万B/Dに膨れ上がった。しかし第二次オイルショックを契機に石油消費の伸びは低下、毎年ほぼ500万B/Dの水準を上下していた。そして1995年の575万B/Dをピークとして以後毎年前年割れとなり、2011年の消費量は442万B/Dとなっている。

 これに対して中国及びインドは1965年以降一貫して増加している。特に中国の石油消費量は1990年の232万B/Dから2000年には倍増の477万B/Dとなり、2003年には日本を追い抜き米国に次ぐ世界第二の石油消費国となっている。その後も2005年694万B/Dと15年間で3倍に急増、2011年の消費量は1千万台目前の976万B/Dを記録している。これは1965年の44倍、2000年の2倍であり、日本の消費量(442万B/D)の2倍を超えている。

 インドの場合、1965年の消費量は25万B/Dで中国をわずかに上回っていたがすぐに中国に追い抜かれ1987年までは100万B/Dを下回る水準に留まっていた。それでも1988年に100万B/Dを超すとその後は10年毎に100万B/D単位で増加、2000年の消費量は226万B/D、2011年は347万B/Dを記録している。これは同じ年の日本の80%弱であり、この趨勢が続けば今後数年で日本を追い越し世界3位の石油消費国になる勢いである。日本が省エネ技術により石油消費を抑えたのに対し、中国及びインドはエネルギー多消費型の経済開発により高度成長を遂げつつあることが解る。

(続く)

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BPエネルギー統計レポート2012年版解説シリーズ:石油篇9 消費量(2)

2012-07-08 | その他

(注)本シリーズは「マイ・ライブラリー (前田高行論稿集)」で一括ご覧いただけます。

http://members3.jcom.home.ne.jp/3632asdm/0231BpOil2012.pdf

 

(世界一の石油消費地域はアジア・大洋州!)

(3)1965年~2011年の地域別消費量の推移
(図http://members3.jcom.home.ne.jp/maedaa/1-3-G02.pdf参照)
 1965年の全世界の石油消費量は3,048万B/Dであったが、5年後の1970年には1.5倍の4,542万B/Dに増え、さらに1980年には6千万B/D強になった。1980年代は横ばいであったが、1990年以降再び増加に勢いがつき、1995年には7千万B/Dを超えた。そして2000年代前半には8千万B/D台を超え2011年の消費量は8,803万B/Dに達している。過去半世紀足らずの間に全世界の石油消費量は3倍近く増えているのである。

  これを地域別にみると、1965年には北米及び欧州・ユーラシア地域の消費量はそれぞれ1,293万B/D、1,123万B/Dとこの2つの地域だけで世界の石油消費の8割を占めていた。その他の地域はアジア・大洋州は世界全体の11%(323万B/D)に過ぎず、中東、中南米、アフリカは合わせて300万B/Dに留まっていた。しかしその後、アジア・大洋州の消費の伸びが著しく、1980年には1千万B/Dを突破、1990年代に欧州・ユーラシア地域の消費が伸び悩む中で、1997年にはついに同地域を追い抜き、さらに2007年には北米をも上回る世界最大の石油消費地域になった。

 欧州・ユーラシア地域は1965年に1,123万B/Dであった消費量がオイルショック直後の1980年には2,400万B/Dまで増加している。しかしその後消費量は減少傾向をたどり1990年代後半以降は2,000万B/D前後の横ばい状態を続けている。北米地域については1980年代前半に需要が一時落ち込んだが、80年代後半以降再び増勢を続け2005年には2,500万B/Dに達した。その後、米国の消費量は2008年、2009年と2年連続して減少しており、2011年も2,316万B/Dにとどまっている。

 その他の中東、中南米、アフリカ地域は世界に占める割合は小さいものの、消費量は着実に増加している。特に中東地域は1965年の95万B/Dが2011年には808万B/Dと半世紀弱で8.5倍に膨張している。中東には石油の輸出国が多いが各国の国内消費の伸びが生産のそれを上回れば、その分輸出余力が減少することになる。この事実は将来の石油需給問題に影を投げかけていると言えよう。

(続く)

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