6/29の夜公演を観て来ました。
この戯曲、私が演研に入ってすぐ位の20代に読みました。
アンデルセンの「マッチ売りの少女」の貧困で悲しい童話を知っていたので、この脚本を読んだ時はショックが大きかった思い出があります。
子供を亡くした老夫婦の元に突然現れた女。
街でマッチを売っている(ダジャレではありません)
この老父婦にマッチを売りに来たと思ったら、実は「貴方達の娘」だと言う。
やり取りの中で、本当の娘なのか、女の思い込みなのか、混沌として行く。
実はマッチが灯った時間だけスカートの中を見せる売春婦だった。
アンデルセンが描いた時代の貧困。
今の時代には想像出来ないけれど、戦後の日本にもそんな商売をしていた人が本当に居たと言う
(これは、お芝居とは別に知った事ですが)
バブルを超えて、今もまた貧困の、と言うか、貧富の差が激しい時代だと思う。
50年も前に書かれた戯曲だけれど、今の時代にも通ずる様な気がする。
初めてナレーションの入る舞台を観ました(演研の)。
目で入る情報と耳で聞こえる情報の違いに、ちょっと戸惑う事も…
そして、BGMのチェロの曲は素敵だったけれど、
実は違和感もありました。
ラフマニノフのヴォカリーズが流れたので、すごく寂しいロシアの風景が浮かび、火の用心カチカチで、ここは日本なんだ、と思った訳です。
ヴォカリーズは有名な曲で、いろんな楽器の練習曲にもなっていて、私もフルートで吹いた事があります。
知っている曲が流れると、意識がそちらに行ってしまって、違う感情が沸き上がり混乱しました。
それは私の勝手な思い込みでもありますが。
(日本の曲の方が良かったかな?)
☆
「売春婦」という過去の屈辱を持ち続け、貧困の中で天に召される女とその弟。
どこにも救いを見出せない、切ない最期でした。
久しぶりに劇的な別役実の世界を堪能しました。
清水邦夫の作品も、観てみたいです(楽屋は見てるけど、それ以外にもね)
勝手な願望ですが。
別役実の戯曲は、同じ台詞を繰り返したり、似た言葉があったり、否定したり肯定したり、前後が分からなくなると言います。
(私は「トイレはこちら」でトイレの場所を聞く人しか、別役作品には出ていないけれど)
役者さんは、台詞覚えが大変だったと思います。
久しぶりに、感情が揺さぶられました。
アンケートは記入したけれど、観た直後って上手く言葉にならないものです。
2日経ってジワーッと沁みる、良い作品でした。