例によって例のごとく、ここに動画を貼り付けることができないので、文字起こししました。
海外の記者たちの視点からの、さまざまな意見を、スクリーンショットで撮った写真とともに、ここに掲載させていただきます。
今回の文字起こしは、少し端折った部分もあります。ご了承ください。
福島原発事故 海外メディアが見た5年間
http://www.dailymotion.com/video/x3vf6gn
街の声とインターネット投票を、TBSラジオ荒川強啓デイキャッチが集計した、ニュースランキングの週間トップ3を選出。
西村・プペ・カリン(フランス)/ AFP通信記者:
鴻海のシャープ買収交渉は、せざるを得なかった。
シャープは、液晶技術においては世界最高であるが、営業面では足りないところがある。
ジェイムズ・シムズ(アメリカ)/ フォーブス記者:
トランプ氏の危険性について。
彼を支持する人がここまで増えているのは、国民の、既存の政党とか将来に対する不安の証。
彼は、そういう人の不安のツボを抑えるのが、非常に上手。
▪️福島原発事故 海外メディアが見た5年間
海外メディアもトップで報じた福島県発事故。
メルトダウン、水素爆発を、日本の危機と報道した。
しかし、事故から3日後、政府は、格納容器の健全性は維持されているものと思われると、安全性を強調し、メルトダウンを否定。
しかし、(5年後の)先週の報道で、改めて事故当時の社内マニュアルを確認したところ、
「炉心溶融(メルトダウン)について、炉心損傷割合が5%を超えていれば炉心溶融と判定する、と明記されていた」と公表。
今更になって、震災から3日後には、メルトダウンの判断が可能だったと発表した東京電力。
日本のメディアへの信頼も揺らぐ中、外国人記者たちは、この5年間をどう伝えてきたのか。
当時、各国が、避難や帰国を促す中、外国人記者の皆さんは、取材を続けていた。
ユン・ヒイル(韓国)ー(震災翌日に福島入り被災者の取材を続ける):
カリン記者ー(安倍首相の原発訪問に同行。各地の汚染状況を取材):
ジャーナリストにとって1番大切な事は、取材し情報を得て、それを確認してから発信すること。
その時(事故発生当時)には、そこまでできなかった。
原発事故の事で、自分の目で見て確認できたことは無かった。
シムズ記者ー(全国の原発を取材。電力会社の体質を追求)
ミゲル・クインタナ記者(スイス)ー(飯舘村を定期的に取材。取材の傍らボランティアも)
メルトダウンの基準が実はありましたと、5年経ってから報道されている。
当時は、原発事故のワーストケースシナリオの場合はどうしますか?と言う質問に、答えてもらえなかった。
東京も避難させる可能性があった。
震災があったのは仕方がない。これは自然災害。
その後の人間の組織の対応はどうなのか?
海外メディアが伝えた震災福島の今。
福島原発で取材を続ける記者がいる。
ジェイムズ・シムズ記者:
記者線量はどれくらいですか?
東電担当者:
毎時80マイクロシーベルトぐらい。(2014年の取材)
シムズ記者が注目するのは、汚染水問題だ。
シムズ記者:
貯蔵エリアの1つにやってきました。
汚染水は、処理後ここに貯蔵されます。
相次ぐ汚染水の漏洩。
東京電力は、水漏れを防ぐため、タンクの周囲に囲いを設置していたが、高さが足りず、何度も溢れ出ていた。
シムズ記者:
未然に防ぐために、なぜいろいろな(囲いを高くする)対策が、最初から行われなかったのか?
東電担当者:
今まで火事場の対策をしていた、と言うのは否めないと思っています。
反省しなければいけないところだ、と思っています。
シムズ記者:
やはり、なぜこういう事故が起こったのか、実際の政治、行政、産業の構造が、なぜこういう問題を生んだのか。
これは、日本の縮図ではないかと思っている
未だ不透明な、原発内部の実態。
シムズ記者は、こうした取材を繰り返し、世界に配信している。
ユン・ヒイル記者は、震災の一報を韓国で聞いた。
ユン記者:
直後に本社で映像を見て、すごい状況だったので、現場のルポを書くことが私の使命だった。
世界に衝撃を与えた大災害。
ユン記者は、翌日、福島への最終便に乗り込んだ。
ユン記者:
怖くなかったんですよ、本当に。日本を信じてた。
日本の原発だから、安全大国だから、爆発するとは思ってなかったので、不安はそんなになかった。
多くの被災者と同じように、このときはまだ深刻に捉えていなかったユン記者。
福島県内の避難所へ向かった。
ユン記者:
(被災者たちの)冷静な対応が、1番印象的だった。
ほんとに静かに、順序よく待っている。
他の人に全然迷惑をかけないようにしたり、(私が)インターネットを貸してもらいたい時も、本当に親切に貸してくれる人もいて、温かさを感じた。
被災者とともに避難所で一夜を明かし、書き上げた記事がこちら。
安全だと思っていた、被曝なんて考えたこともなかった、と語る、被災者の声を伝えている。
刻一刻と悪化する、福島第一原発の状況。
事態を重く見た各国政府は、自国民に対し、避難指示を出し始める。
ユン記者:
携帯に、韓国からメールが来た。
「早く福島を出なさい」との命令がきた。
それで、仙台までタクシーに乗った。
仙台市内の避難所では、あるおばあさんに出会った。
そのおばあさんは、家もなくなり、周りの家族もなくなったのに、私の前では悲しさを飲み込む。
その方から、日本人が、災害に対して立ち向かう態度が分かり、他人への配慮もわかった。
笑顔の裏にある被災者の思い、過酷な運命に立ち向かう姿を、書き続けました。
ミゲル・クインタナ(スイス)記者:
飯舘村は、原発事故当時、避難区域外なので安心してください、と言う指示のもとに、1か月の間留まってしまい、被爆してしまった。
国への不信感から、国が設置した測定器の数値を、信用することができない。
シムズ記者:
責任の曖昧さ、或いは責任を問わない問題がある。
きちんと検証してこなかった。
幾つかの事故調では検証されているが、もっと内部の中に潜り込んで調べるべきことがたくさんある。
内部情報はまだ公開されていない。
映像とかEメールのやりとりとか資料とか、今回の裁判で、情報が出てくることが期待されている。
神保哲夫 / ジャーナリスト・ビデオニュースドットコム代表・元AP通信記者:
海外の専門家たちの間では、メルトダウンをしている事は間違いないと。
なので、メルトダウンをしているかしていないのかではなくて、いつそれを認めるか認めないかの問題だった。
政府が、出すべき情報を出すべき時に出せない。
この問題がすべてにつながっている。
サンドラ・へフェリン(ドイツ)記者ー(原発全廃を決めたドイツを見習うべきと主張):
これは去年の記事。例外的に日本寄りになっている。
ドイツでは、健康被害が、福島原発事故によってあるのではないかと言われていたが、
昨年、国連からの報告書では、原発事故による健康被害やガンの危険性は無いとあった。
そういうことから、ドイツ人は騒ぎすぎではないのか?という内容の記事。
これはあくまでも例外で、全体的な傾向としては、
ドイツでは、原発事故の後は、地震や津波の事はあまり報道せず、放射能のことをメインにメルトダウンの事とか、食べ物は大丈夫なのかとか、
どれだけ汚染されるのかという、シビアな報道してきたので、日本の被災者の人にスポットを当てる報道とはだいぶ違いがあった。
がんばっている被災者の方々を応援する気持ちと、震災ではなく人災を起こしてしまった組織に対する感情が複雑すぎて、行動が混乱しているのは事実かもしれない。
▪️除染はムダ!
ユン記者:
先月、飯舘村というところに取材をしに行った。
そこで出会った色々な方の話によると、福島の山は、髪をバリカンで首の周りだけ刈っているような状態で、
山のほうは全然除染していないし、そんなところに人が戻ってきて住めると、政府は言っている。
その事について、ものすごく反発を感じている。
現地の人が信頼できないような除染をして、除染が終わったと言う事は、無駄だと表現しても良いと思う。
除染は無駄、というような強い意見はなかなか出ない。
やはり、帰宅困難のみなさんに気持ちが寄せられると、帰れないと言うのはなかなかこちらからは言えない。
神保記者:
安全神話を前提に、原発は運営されていた。
事故前は、そうした情報(原発の危険性などを始めとする負の情報)を出すのはままならない、やってはいけないことになっていた。
それを反省しなければいけない。
もちろん、個別に隠したことなどは、追求しなくてはいけない。
しかし、もっと大きな問題であるような気がする。
シムズ記者:
伝えるべき情報が、的確に伝えられるべき時に流されていたとしても、政府や東電の対応には、あまり変化がなかったかもしれない。
でも、一般住民の避難計画や行動範囲が、変わったのではないか。
そういう意見が地元から出ている。
パニックを起こしたくないから、メルトダウンと言う単語を使わなかった。
シムズ記者:
それは誤解である。
防災や危機管理の専門家は、パニックは起こらないと言う。
パニックが起こるということは、これは映画で出てくるものだけで、防災対策の担当者がきちんと防災学を勉強していないと言う証である。
私も、最初はパニックが起こるから、政府は控えめで情報を公開しないと思っていた。
だけど、実際に勉強してみると、パニックはそのほとんどが映画だけの問題、ということがわかった。
自分の命に関わる問題は、相手に判断してもらいたくない。
あの時パニックに陥ったのは、市民ではなく政府だった。
パニックを起こしたくないではなくて、批判されたくないという保身が根底にあった。
▪️風評被害ってナニ?
サンドラ記者:
日本のテレビではよく、この『風評被害』という言葉が出てくる。
野菜を育てている農家の方が、『風評被害』によって苦しい思いをされているということに、スポットが当てられているのだが、
欧米、特にドイツ人にとっては、『風評被害』というのは非常に不思議な言葉で、
と言うのは、やはり放射能というのが絡んできた時に、人の気持ちに寄り添うというよりは、事が放射能なので、
ドイツの場合は、昔のチェルノブイリの記憶を持っている人がすごく多いので、
チェルノブイリは凄く離れたところであるが、南ドイツとオーストリアには所々ホットスポットがあって、そのせいで今でも猪が食べられないと言うようなことがあるので、
放射能が絡んでくると、起こりうる危険を考えるのが、消費者としての優先事項なので、消費者として自由に判断したいと言うことが先にある。
被害を被っている人たちに寄り添うと言うのは、非常に日本的な考え方で、ヨーロッパだと、あくまでも消費者の自由であると言うスタンスがすごくある。
また、『食べて応援』と言うキャッチフレーズがある。
電車の中などで、よくその広告を見るのだが、ヨーロッパの人からするとこれも、
気持ちには寄り添っているが、自由に判断できないという、同調圧力的なものを感じる、と言う人が多い。
少なくとも、『風評被害』という言葉は、英語には非常に訳しづらい。
日本独特の文化でもあるんではないか。
神保記者:
風評被害と言うのは、根も葉もない情報を根拠にして、何か被害を受けること。
福島の場合は、根にも葉にもある程度放射能はあるわけだから、本来の『風評被害』の定義にははまらない。
だが同時に、日本の場合は、安心と安全というものが同列に語られる傾向がある。
安全というのは、科学的に数値で見て大丈夫かどうか。
安心と言うのは、情緒的なものや心情的なもので、いくら安全だと言うふうに数字が出ても、ちょっとまだ不安があるということがあり得る。
日本の場合、安心と言うものに対する期待度が非常に高い。
▪️福島の混乱 責任はメディアにも!?
震災報道日本のメディアはゆるい?
地震発生直後から、パニックを起こさぬよう呼びかけた政府。
東京電力や安全保安委員もまた、安全性を強調。
テレビや新聞を見ても、安全を強調する人々の言葉ばかり。
国民の疑念は静かに深まっていった。
そして、震災の年を境に、メディアへの信頼はじわじわと下がっている。
一方、海外メディアは、早くから、福島の報道に関する矛盾を指摘。
神保記者:
震災後、日本のメディアは、自由に政府と違うことを報道できないのではないか、と言う印象を持たれた。
政府自身がパニックに陥っている状態で出される情報を、そのまま報じることしかできなかった。
それは、東電に対しても同じ。
どういう矛盾があるのかとか、こういう違いがあるんじゃないかということを、特に直後は言うことができなかった。
そもそも、安全神話というもの自体が、もともとメディアによって拡大生産されてきた。
やはりメディアは、平時にやるべきことをやってこなかった。
突然有事になったからといって、手のひらを返したように、実は原発のこういうところが危ないんだ、ああいうところが危ないんだという事は、直後はとてもではないが言えることではなかった。
やはり、平時にやるべきことをやっておくという事の重要さが、すごく認識されたことだと思う。
カリン記者:
私には、怒りに近い不満があった。
毎日、東電の記者会見の時に、分厚い資料もらって、でもそれは自分で分析することができなかった情報なので、どう報道すればいいかずっと考えていた。
自分の仕事に対しても、不満があった。
ミゲル記者:
当時、特に印象に残っているのは、日本のメディアは安全デマだと。
そして海外メディアは無責任だと。
確かに、海外メディアの中には、無責任な情報を、無責任にドラマチックに伝えていたところもあった。
が、責任を持って頑張っていた記者たちもいたので、そういうふうに分けるのがわかりやすいだろうけれど、かなり複雑だったということが言える。
アメリカの同時多発テロが起こった際にも、同じような現象が起こった。
国家規模の緊急事態になって、メディアが政府を庇おうとするとか、政府の批判を控えようとする風になって、
メディアが本来持っている責任を、その時は果たさなかった。
▪️原発再稼働 世界はどう見る!?
3年前、世界に向け、大見得を切った安倍総理。
福島第一原発事故の収束が未だ見えぬ中、電力の安定供給を訴え、原発再稼働を推し進めている。
先週には、川内原発に続き、高浜原発4号機が再稼働。
しかし、それも、わずか3日で緊急停止。
結局、何も変わっていないように見えるこんな状況で、原発再稼働を進めるべきなのだろうか。
福島の事故では、まだ誰も責任を取っていない曖昧な状況の中、原発の再稼働各地で進めようとしている。
これは、海外からどう見られているのか。
シムズ記者:
あえて言うと、私は、原発に賛成でも反対でもない。
現時点で、日本は、原発を運営する資格はないと思う。
今の世論調査を見ると、過半数が反対でもあるし、高浜町の去年の世論調査では、半分以上の人が、避難計画は役に立たないという意見を持っている。
実際に私も、去年高浜に行ったのだが、避難通路や避難道路を見ると、
場所によっては、津波が来た場合、避難道路が冠水するということがあるし、高速道路も大きい地震があれば閉鎖すると言う事だから、
避難計画は、絵に描いた餅のような感じである。
高浜の4号機の問題は、変圧器の問題なのだが、それだけを見ると、それほど大きな問題では無い。
でも、これだけ注目されている中でそういう問題が起こるのは、何かが欠けているのではないかという印象を受ける。
サンドラ記者:
ドイツは、福島県発事故の後、原発の全廃を決めた。
ドイツ人として最も不思議なのは、日本はいまだに他の国、トルコなどに、原発を輸出している。
3.11の後でさえも。
ユン記者:
日本の技術力、物造りの力を活かし、原発を捨てて、再生エネルギーの技術を作り、それで世界をリードできると思う。
発想転換しなければいけないと思う。
先月、飯舘村の取材をした時、自分たちのお金で再生エネルギーの会社を作ってやっているのを見て、すごく感銘を受けた。
シムズ記者:
日本はきちんと議論をしていない。
なし崩し的に再稼働へとすすんでいる。
ミゲル記者:
5年前のことを振り返って考えると、安全だったものが爆発してこんな状況になった。
今も、災害が起こる国である。
安全基準を定めても、リスクがある。
リスクが無いと誰も言えない。
万が一、再びこんなことが起きても大丈夫?いいですね?いいですね?じゃぁ再稼働しましょう。
そういう風に考えるべきではないか、と私は思う。
国民を説得してから、ということだが、フランスは原発依存度が世界一の国。
だが?
カリン記者:
政策が変わった。
反対派が増えたので、原子力最大手の会社アレバの業績が悪化した理由は、福島の原発事故であるのは間違いない。
神保記者:
このような議論が、日本のメディアでも普通にできていれば、このような状況にはなっていない。
5年目を迎えるにあたって、本当に事故の反省は生きているのかどうか、改めて、この5年目に、再確認を必要があると思う。
↑以上、文字起こしおわり
海外の記者たちの視点からの、さまざまな意見を、スクリーンショットで撮った写真とともに、ここに掲載させていただきます。
今回の文字起こしは、少し端折った部分もあります。ご了承ください。
福島原発事故 海外メディアが見た5年間
http://www.dailymotion.com/video/x3vf6gn
街の声とインターネット投票を、TBSラジオ荒川強啓デイキャッチが集計した、ニュースランキングの週間トップ3を選出。
西村・プペ・カリン(フランス)/ AFP通信記者:
鴻海のシャープ買収交渉は、せざるを得なかった。
シャープは、液晶技術においては世界最高であるが、営業面では足りないところがある。
ジェイムズ・シムズ(アメリカ)/ フォーブス記者:
トランプ氏の危険性について。
彼を支持する人がここまで増えているのは、国民の、既存の政党とか将来に対する不安の証。
彼は、そういう人の不安のツボを抑えるのが、非常に上手。
▪️福島原発事故 海外メディアが見た5年間
海外メディアもトップで報じた福島県発事故。
メルトダウン、水素爆発を、日本の危機と報道した。
しかし、事故から3日後、政府は、格納容器の健全性は維持されているものと思われると、安全性を強調し、メルトダウンを否定。
しかし、(5年後の)先週の報道で、改めて事故当時の社内マニュアルを確認したところ、
「炉心溶融(メルトダウン)について、炉心損傷割合が5%を超えていれば炉心溶融と判定する、と明記されていた」と公表。
今更になって、震災から3日後には、メルトダウンの判断が可能だったと発表した東京電力。
日本のメディアへの信頼も揺らぐ中、外国人記者たちは、この5年間をどう伝えてきたのか。
当時、各国が、避難や帰国を促す中、外国人記者の皆さんは、取材を続けていた。
ユン・ヒイル(韓国)ー(震災翌日に福島入り被災者の取材を続ける):
カリン記者ー(安倍首相の原発訪問に同行。各地の汚染状況を取材):
ジャーナリストにとって1番大切な事は、取材し情報を得て、それを確認してから発信すること。
その時(事故発生当時)には、そこまでできなかった。
原発事故の事で、自分の目で見て確認できたことは無かった。
シムズ記者ー(全国の原発を取材。電力会社の体質を追求)
ミゲル・クインタナ記者(スイス)ー(飯舘村を定期的に取材。取材の傍らボランティアも)
メルトダウンの基準が実はありましたと、5年経ってから報道されている。
当時は、原発事故のワーストケースシナリオの場合はどうしますか?と言う質問に、答えてもらえなかった。
東京も避難させる可能性があった。
震災があったのは仕方がない。これは自然災害。
その後の人間の組織の対応はどうなのか?
海外メディアが伝えた震災福島の今。
福島原発で取材を続ける記者がいる。
ジェイムズ・シムズ記者:
記者線量はどれくらいですか?
東電担当者:
毎時80マイクロシーベルトぐらい。(2014年の取材)
シムズ記者が注目するのは、汚染水問題だ。
シムズ記者:
貯蔵エリアの1つにやってきました。
汚染水は、処理後ここに貯蔵されます。
相次ぐ汚染水の漏洩。
東京電力は、水漏れを防ぐため、タンクの周囲に囲いを設置していたが、高さが足りず、何度も溢れ出ていた。
シムズ記者:
未然に防ぐために、なぜいろいろな(囲いを高くする)対策が、最初から行われなかったのか?
東電担当者:
今まで火事場の対策をしていた、と言うのは否めないと思っています。
反省しなければいけないところだ、と思っています。
シムズ記者:
やはり、なぜこういう事故が起こったのか、実際の政治、行政、産業の構造が、なぜこういう問題を生んだのか。
これは、日本の縮図ではないかと思っている
未だ不透明な、原発内部の実態。
シムズ記者は、こうした取材を繰り返し、世界に配信している。
ユン・ヒイル記者は、震災の一報を韓国で聞いた。
ユン記者:
直後に本社で映像を見て、すごい状況だったので、現場のルポを書くことが私の使命だった。
世界に衝撃を与えた大災害。
ユン記者は、翌日、福島への最終便に乗り込んだ。
ユン記者:
怖くなかったんですよ、本当に。日本を信じてた。
日本の原発だから、安全大国だから、爆発するとは思ってなかったので、不安はそんなになかった。
多くの被災者と同じように、このときはまだ深刻に捉えていなかったユン記者。
福島県内の避難所へ向かった。
ユン記者:
(被災者たちの)冷静な対応が、1番印象的だった。
ほんとに静かに、順序よく待っている。
他の人に全然迷惑をかけないようにしたり、(私が)インターネットを貸してもらいたい時も、本当に親切に貸してくれる人もいて、温かさを感じた。
被災者とともに避難所で一夜を明かし、書き上げた記事がこちら。
安全だと思っていた、被曝なんて考えたこともなかった、と語る、被災者の声を伝えている。
刻一刻と悪化する、福島第一原発の状況。
事態を重く見た各国政府は、自国民に対し、避難指示を出し始める。
ユン記者:
携帯に、韓国からメールが来た。
「早く福島を出なさい」との命令がきた。
それで、仙台までタクシーに乗った。
仙台市内の避難所では、あるおばあさんに出会った。
そのおばあさんは、家もなくなり、周りの家族もなくなったのに、私の前では悲しさを飲み込む。
その方から、日本人が、災害に対して立ち向かう態度が分かり、他人への配慮もわかった。
笑顔の裏にある被災者の思い、過酷な運命に立ち向かう姿を、書き続けました。
ミゲル・クインタナ(スイス)記者:
飯舘村は、原発事故当時、避難区域外なので安心してください、と言う指示のもとに、1か月の間留まってしまい、被爆してしまった。
国への不信感から、国が設置した測定器の数値を、信用することができない。
シムズ記者:
責任の曖昧さ、或いは責任を問わない問題がある。
きちんと検証してこなかった。
幾つかの事故調では検証されているが、もっと内部の中に潜り込んで調べるべきことがたくさんある。
内部情報はまだ公開されていない。
映像とかEメールのやりとりとか資料とか、今回の裁判で、情報が出てくることが期待されている。
神保哲夫 / ジャーナリスト・ビデオニュースドットコム代表・元AP通信記者:
海外の専門家たちの間では、メルトダウンをしている事は間違いないと。
なので、メルトダウンをしているかしていないのかではなくて、いつそれを認めるか認めないかの問題だった。
政府が、出すべき情報を出すべき時に出せない。
この問題がすべてにつながっている。
サンドラ・へフェリン(ドイツ)記者ー(原発全廃を決めたドイツを見習うべきと主張):
これは去年の記事。例外的に日本寄りになっている。
ドイツでは、健康被害が、福島原発事故によってあるのではないかと言われていたが、
昨年、国連からの報告書では、原発事故による健康被害やガンの危険性は無いとあった。
そういうことから、ドイツ人は騒ぎすぎではないのか?という内容の記事。
これはあくまでも例外で、全体的な傾向としては、
ドイツでは、原発事故の後は、地震や津波の事はあまり報道せず、放射能のことをメインにメルトダウンの事とか、食べ物は大丈夫なのかとか、
どれだけ汚染されるのかという、シビアな報道してきたので、日本の被災者の人にスポットを当てる報道とはだいぶ違いがあった。
がんばっている被災者の方々を応援する気持ちと、震災ではなく人災を起こしてしまった組織に対する感情が複雑すぎて、行動が混乱しているのは事実かもしれない。
▪️除染はムダ!
ユン記者:
先月、飯舘村というところに取材をしに行った。
そこで出会った色々な方の話によると、福島の山は、髪をバリカンで首の周りだけ刈っているような状態で、
山のほうは全然除染していないし、そんなところに人が戻ってきて住めると、政府は言っている。
その事について、ものすごく反発を感じている。
現地の人が信頼できないような除染をして、除染が終わったと言う事は、無駄だと表現しても良いと思う。
除染は無駄、というような強い意見はなかなか出ない。
やはり、帰宅困難のみなさんに気持ちが寄せられると、帰れないと言うのはなかなかこちらからは言えない。
神保記者:
安全神話を前提に、原発は運営されていた。
事故前は、そうした情報(原発の危険性などを始めとする負の情報)を出すのはままならない、やってはいけないことになっていた。
それを反省しなければいけない。
もちろん、個別に隠したことなどは、追求しなくてはいけない。
しかし、もっと大きな問題であるような気がする。
シムズ記者:
伝えるべき情報が、的確に伝えられるべき時に流されていたとしても、政府や東電の対応には、あまり変化がなかったかもしれない。
でも、一般住民の避難計画や行動範囲が、変わったのではないか。
そういう意見が地元から出ている。
パニックを起こしたくないから、メルトダウンと言う単語を使わなかった。
シムズ記者:
それは誤解である。
防災や危機管理の専門家は、パニックは起こらないと言う。
パニックが起こるということは、これは映画で出てくるものだけで、防災対策の担当者がきちんと防災学を勉強していないと言う証である。
私も、最初はパニックが起こるから、政府は控えめで情報を公開しないと思っていた。
だけど、実際に勉強してみると、パニックはそのほとんどが映画だけの問題、ということがわかった。
自分の命に関わる問題は、相手に判断してもらいたくない。
あの時パニックに陥ったのは、市民ではなく政府だった。
パニックを起こしたくないではなくて、批判されたくないという保身が根底にあった。
▪️風評被害ってナニ?
サンドラ記者:
日本のテレビではよく、この『風評被害』という言葉が出てくる。
野菜を育てている農家の方が、『風評被害』によって苦しい思いをされているということに、スポットが当てられているのだが、
欧米、特にドイツ人にとっては、『風評被害』というのは非常に不思議な言葉で、
と言うのは、やはり放射能というのが絡んできた時に、人の気持ちに寄り添うというよりは、事が放射能なので、
ドイツの場合は、昔のチェルノブイリの記憶を持っている人がすごく多いので、
チェルノブイリは凄く離れたところであるが、南ドイツとオーストリアには所々ホットスポットがあって、そのせいで今でも猪が食べられないと言うようなことがあるので、
放射能が絡んでくると、起こりうる危険を考えるのが、消費者としての優先事項なので、消費者として自由に判断したいと言うことが先にある。
被害を被っている人たちに寄り添うと言うのは、非常に日本的な考え方で、ヨーロッパだと、あくまでも消費者の自由であると言うスタンスがすごくある。
また、『食べて応援』と言うキャッチフレーズがある。
電車の中などで、よくその広告を見るのだが、ヨーロッパの人からするとこれも、
気持ちには寄り添っているが、自由に判断できないという、同調圧力的なものを感じる、と言う人が多い。
少なくとも、『風評被害』という言葉は、英語には非常に訳しづらい。
日本独特の文化でもあるんではないか。
神保記者:
風評被害と言うのは、根も葉もない情報を根拠にして、何か被害を受けること。
福島の場合は、根にも葉にもある程度放射能はあるわけだから、本来の『風評被害』の定義にははまらない。
だが同時に、日本の場合は、安心と安全というものが同列に語られる傾向がある。
安全というのは、科学的に数値で見て大丈夫かどうか。
安心と言うのは、情緒的なものや心情的なもので、いくら安全だと言うふうに数字が出ても、ちょっとまだ不安があるということがあり得る。
日本の場合、安心と言うものに対する期待度が非常に高い。
▪️福島の混乱 責任はメディアにも!?
震災報道日本のメディアはゆるい?
地震発生直後から、パニックを起こさぬよう呼びかけた政府。
東京電力や安全保安委員もまた、安全性を強調。
テレビや新聞を見ても、安全を強調する人々の言葉ばかり。
国民の疑念は静かに深まっていった。
そして、震災の年を境に、メディアへの信頼はじわじわと下がっている。
一方、海外メディアは、早くから、福島の報道に関する矛盾を指摘。
神保記者:
震災後、日本のメディアは、自由に政府と違うことを報道できないのではないか、と言う印象を持たれた。
政府自身がパニックに陥っている状態で出される情報を、そのまま報じることしかできなかった。
それは、東電に対しても同じ。
どういう矛盾があるのかとか、こういう違いがあるんじゃないかということを、特に直後は言うことができなかった。
そもそも、安全神話というもの自体が、もともとメディアによって拡大生産されてきた。
やはりメディアは、平時にやるべきことをやってこなかった。
突然有事になったからといって、手のひらを返したように、実は原発のこういうところが危ないんだ、ああいうところが危ないんだという事は、直後はとてもではないが言えることではなかった。
やはり、平時にやるべきことをやっておくという事の重要さが、すごく認識されたことだと思う。
カリン記者:
私には、怒りに近い不満があった。
毎日、東電の記者会見の時に、分厚い資料もらって、でもそれは自分で分析することができなかった情報なので、どう報道すればいいかずっと考えていた。
自分の仕事に対しても、不満があった。
ミゲル記者:
当時、特に印象に残っているのは、日本のメディアは安全デマだと。
そして海外メディアは無責任だと。
確かに、海外メディアの中には、無責任な情報を、無責任にドラマチックに伝えていたところもあった。
が、責任を持って頑張っていた記者たちもいたので、そういうふうに分けるのがわかりやすいだろうけれど、かなり複雑だったということが言える。
アメリカの同時多発テロが起こった際にも、同じような現象が起こった。
国家規模の緊急事態になって、メディアが政府を庇おうとするとか、政府の批判を控えようとする風になって、
メディアが本来持っている責任を、その時は果たさなかった。
▪️原発再稼働 世界はどう見る!?
3年前、世界に向け、大見得を切った安倍総理。
福島第一原発事故の収束が未だ見えぬ中、電力の安定供給を訴え、原発再稼働を推し進めている。
先週には、川内原発に続き、高浜原発4号機が再稼働。
しかし、それも、わずか3日で緊急停止。
結局、何も変わっていないように見えるこんな状況で、原発再稼働を進めるべきなのだろうか。
福島の事故では、まだ誰も責任を取っていない曖昧な状況の中、原発の再稼働各地で進めようとしている。
これは、海外からどう見られているのか。
シムズ記者:
あえて言うと、私は、原発に賛成でも反対でもない。
現時点で、日本は、原発を運営する資格はないと思う。
今の世論調査を見ると、過半数が反対でもあるし、高浜町の去年の世論調査では、半分以上の人が、避難計画は役に立たないという意見を持っている。
実際に私も、去年高浜に行ったのだが、避難通路や避難道路を見ると、
場所によっては、津波が来た場合、避難道路が冠水するということがあるし、高速道路も大きい地震があれば閉鎖すると言う事だから、
避難計画は、絵に描いた餅のような感じである。
高浜の4号機の問題は、変圧器の問題なのだが、それだけを見ると、それほど大きな問題では無い。
でも、これだけ注目されている中でそういう問題が起こるのは、何かが欠けているのではないかという印象を受ける。
サンドラ記者:
ドイツは、福島県発事故の後、原発の全廃を決めた。
ドイツ人として最も不思議なのは、日本はいまだに他の国、トルコなどに、原発を輸出している。
3.11の後でさえも。
ユン記者:
日本の技術力、物造りの力を活かし、原発を捨てて、再生エネルギーの技術を作り、それで世界をリードできると思う。
発想転換しなければいけないと思う。
先月、飯舘村の取材をした時、自分たちのお金で再生エネルギーの会社を作ってやっているのを見て、すごく感銘を受けた。
シムズ記者:
日本はきちんと議論をしていない。
なし崩し的に再稼働へとすすんでいる。
ミゲル記者:
5年前のことを振り返って考えると、安全だったものが爆発してこんな状況になった。
今も、災害が起こる国である。
安全基準を定めても、リスクがある。
リスクが無いと誰も言えない。
万が一、再びこんなことが起きても大丈夫?いいですね?いいですね?じゃぁ再稼働しましょう。
そういう風に考えるべきではないか、と私は思う。
国民を説得してから、ということだが、フランスは原発依存度が世界一の国。
だが?
カリン記者:
政策が変わった。
反対派が増えたので、原子力最大手の会社アレバの業績が悪化した理由は、福島の原発事故であるのは間違いない。
神保記者:
このような議論が、日本のメディアでも普通にできていれば、このような状況にはなっていない。
5年目を迎えるにあたって、本当に事故の反省は生きているのかどうか、改めて、この5年目に、再確認を必要があると思う。
↑以上、文字起こしおわり