高浜原発運転停止決定!!
本当に本当に、嬉しいニュースでした。
福井地裁の樋口裁判長が出された『大飯原発再稼働を認めず』の判決文を、記事にまとめた時の胸の震えが、一気によみがえりました。
『大飯原発の再稼働認めず!』樋口英明裁判長の判決要旨の全文です。ぜひ読んでください!
http://blog.goo.ne.jp/mayumilehr/e/c23cee97b8aefb95b510b0505f9c6072
もう一度ここに、樋口裁判長の判決文から少しだけ、紹介したいと思います。
ひとたび深刻な事故が起これば、多くの人の生命、身体やその生活基盤に、重大な被害を及ぼす事業に関わる組織には、
その被害の大きさ、程度に応じた安全性と、高度の信頼性が求められて然るべきである。
このことは、当然の社会的要請であるとともに、生存を基礎とする人格権が公法、私法を間わず、
すべての法分野において、最高の価値を持つとされている以上、本件訴訟においても、よって立つべき解釈上の指針である。
個人の生命、身体、精神及び生活に関する利益は、各人の人格に本質的なものであって、その総体が人格権であるということができる。
人格権は、憲法上の権利であり(13条、25条)、また人の生命を基礎とするものであるがゆえに、
我が国の法制下においては、これを超える価値を、他に見出すことはできない。
したがって、この人格権、とりわけ生命を守り生活を維持するという人格権の、根幹部分に対する具体的侵害のおそれがあるときは、
人格権そのものに基づいて、侵害行為の差止めを請求できることになる。
人格権は、各個人に由来するものであるが、その侵害形態が、多数人の人格権を同時に侵害する性質を有するとき、
その差止めの要請が、強く働くのは理の当然である。
使用済み核燃料は、本件原発の稼動によって、日々生み出されていくものであるところ、
使用済み核燃料を閉じ込めておくための堅固な設備を設けるためには、膨大な費用を要するということに加え、
国民の安全が、何よりも優先されるべきであるとの見識に立つのではなく、深刻な事故はめったに起きないだろう、という見通しのもとにかような対応が成り立っている、といわざるを得ない。
国民の生存を基礎とする人格権を、放射性物質の危険から守るという観点からみると、
本件原発に係る安全技術及び設備は、万全ではないのではないかという疑いが残るというにとどまらず、
むしろ、確たる根拠のない楽観的な見通しのもとに、初めて成り立ち得る脆弱なものであると認めざるを得ない。
極めて多数の人の生存そのものに関わる権利と、電気代の高い低いの問題等とを、並べて論じるような議論に加わったり、
その議論の当否を判断すること自体、法的には許されないことである、と考えている。
このコストの問題に関連して、国富の流出や喪失の議論があるが、
たとえ本件原発の運転停止によって、多額の貿易赤字が出るとしても、これを国富の流出や喪失というべきではなく、
豊かな国土と、そこに国民が根を下ろして生活していることが国富であり、
これを取り戻すことができなくなることが、国富の喪失であると、当裁判所は考えている。
また、被告は、原子力発電所の稼動が、CO2排出削減に資するもので、環境面で優れている旨主張するが、
原子力発電所で、ひとたび深刻事故が起こった場合の環境汚染は、すさまじいものであって、
福島原発事故は、我が国始まって以来、最大の公害、環境汚染であることに照らすと、
環境問題を、原子力発電所の運転継続の根拠とすることは、甚だしい筋違いである。
このニュースを、3月11日の記事として書こうと思いました。
あの日から5年。
1日として、日本を、福島を、そしてこのアメリカを、考えない日は無かったこの5年間。
高浜原発の運転停止の決定は、こちらの大手の新聞でも報じられていました。
まずは、尽力くださった方々に、心からの感謝の気持ちを伝えたいと思います。
そして、この判決が、日本中の、今まだ闘っておられる方々への励みとなり、すべての原発が廃炉の工程に進むよう、心から祈りたいです。
この件について、守田さんが、判決文の画期性を解説してくださいました。
以下に紹介させていただきます。
↓以下、転載はじめ
「福島原発事故の原因究明は今なお道半ば」!~高浜原発運転停止大津地裁決定の画期性その1~
昨日3月9日、大津地方裁判所(山本善彦裁判長)によって、高浜原発3、4号機の運転を認めない仮処分決定を下しました。
決定内容は、ただちに、以下のサイトに掲載されました。
僕もただちに、プリントアウトして読みました。
画期的だと思いました!
福井原発訴訟(滋賀)支援サイト
http://www.nonukesshiga.jp/
仮処分命令申立事件(高浜3,4号機)について、再稼働差し止めの仮処分決定
http://www.nonukesshiga.jp/wp-content/uploads/e9782c2ea5fefaea7c02afd880dd3bfc.pdf
http://www.nonukesshiga.jp/wp-content/uploads/b6c5742c4f89061d95ceb8a0675877e2.pdf
その上で、昨夜流されたNHKニュースを観たところ、重要なポイントが、端的に解説されていました。
要約としてすぐれているので、まずはこれをご紹介します。1分27秒です。
******* ******* ******* ******* *******
(*まうみ注・ということで、すぐれた要約は文字に残したい!と思い、文字起こししました)
稼働中の原発の運転停止命じる初の仮処分決定 その理由は
【NHKニュース】2016年3月9日
http://www3.nhk.or.jp/news/html/20160309/k10010437041000.html
福井県にある高浜原子力発電所3号機と4号機について、大津地方裁判所は、
「福島の原発事故を踏まえた事故対策や緊急時の対応方法に、危惧すべき点があるのに、関西電力は十分に説明していない」として、
運転の停止を命じる、仮処分の決定を出しました。
稼働中の原発の運転の停止を命じる仮処分の決定は、初めてです。
決定の理由などについて、詳しい解説です。
↓以下、文字起こしはじめ
まずですね、今回の決定内容を詳しく見てみますと、どんな特徴があると言えるんでしょうか。
はい、今回の決定の特徴は、原発が安全だと言う証明を、電力会社に求めた点です。
そして、原子力規制委員会が定めた、規制基準に合格したと言うだけでは、十分な説明になっていないと指摘しました。
その上で、地震対策の基にある断層の調査や、設備面の事故対策を、関西電力の説明に基づいて検討した結果、いずれも事故を防ぐには不十分だ、と結論づけました。
はい、なぜですね、裁判所は、電力会社に対して、そうした厳しい要求をしているんでしょうか。
はい、今回の決定の根底には、福島第一原発の事故の検証が不十分ではないかという、裁判所の問題意識があります。
例えば、事故の主な原因が、津波なのかどうかも不明だと指摘しました。
そして、原発の運転を認めるかどうかは、国の規制基準に、津波以外の要因もすべて含めた事故対策が、盛り込まれたかどうかを見極める必要がある、という考えを示しました。
そして、関西電力の説明をもとに検討した結果、今の規制基準によって安全を確保できると考えるのには、ためらいがあると指摘し、
高浜原発の運転は認められない、と判断しました。
↑以上、文字起こしおわり
******* ******* ******* ******* *******
これらを踏まえて、今回、下された決定の画期性を解説したいと思います。(引用箇所にはPDFのページ数を記します)
決定分はまず、裁判所による原発の構造、設備などに対する基本的認識を述べた上で、今回の訴訟の争点が、7つあったことを明らかにしています。
① 主張立証責任の所在
② 過酷事故対策
③ 耐震性能
④ 津波に対する安全性能
⑤ テロ対策
⑥ 避難計画
⑦ 保全の必要性
その後、運転停止を求めた市民の側(訴訟上では債権者)と、求められた関西電力(訴訟上では債務者)の、双方の主張が列挙され、最後に裁判所の判断が記されています。
今回、解説したいのは、このうちの①と②の内容です。
ここで、大津地裁が出した内容は、川内原発1、2号機を含む、すべての原発に適用できることだからです。
とくに、過酷事故対策についての、新規制基準の抜本的矛盾をついたものとなっています。
①の主張立証責任の所在とは、訴えた市民と関電のどちらが、原発が安全か危険かを立証しなければならないかを検討したもので、
大津地裁は、関電の側に、安全性の立証責任があることを指摘しています。
「原子力発電所の付近住民が、その人格権に基づいて、電力会社に対し、原子力発電所の運転差止を求める仮処分においても、
その危険性、すなわち人格権が侵害されるおそれが高いことについては、最終的な主張立証責任は、債権者らが負うと考えられるが、
原子炉施設の安全性に関する資料の多くを、電力会社側が保持していることや、
電力会社が、一般に、関連法規に従って、行政機関の規制に基づき、原子力発電を運転していることに照らせば、上記の理解はおおむね当てはまる。
そこで、本件においても、債務者において、依拠した根拠、資料等を明らかにすべきであり、その主張、及び疎明が尽くされない場合には、
電力会社の判断に不合理な点があることが、事実上推認されるものというべきである」(42ページ)
ここでは、誰が立証責任を負うのかの確認がなされているわけですが、大津地裁は、結論的には、
関西電力がこの使命を果たしたとは言えず、「電力会社の判断に不合理な点があることが事実上推認される」と判断して、運転停止命令を出しています。
続いて、②の過酷事故対策で、極めて画期的な点が打ち出されています。
端的に言えば、今回の記事のタイトルにもあげたように、「福島原発事故の原因究明は今なお道半ば」だという点です。
新規制基準は、福島原発事故の教訓を踏まえたものとされているのですが、しかし、原因究明が半ばで、どうして教訓を踏まえられるのか。
今、分かっているものを踏まえているだけで、他にもまだまだ踏まえるべき教訓がある可能性があるのです。
にもかかわらず、「教訓を踏まえた」とされる新規制基準が、作られてしまった。
この点は、新規制基準の抜本的矛盾、限界、あやまりと言うべきもので、元東芝の格納容器設計者の後藤政志さんなどが、声を枯らして批判されてきたことです。
僕も、繰り返し、この点を述べてきたので、大津地裁決定のこの部分を読んだときには、思わず「わあ、画期的だ!」と声をあげてしまいました。
以下、当該部分を引用します。
「福島第一原子力発電所事故の原因究明は、建屋内での調査が進んでおらず、今なお道半ばの状況であり、
本件の主張、及び疎明の状況に照らせば、津波を主たる原因として特定し得た、としてよいのかも不明である。
その災禍の甚大さに、真摯に向い合い、二度と同様の事故発生を防ぐとの見地から、安全確保対策を講ずるには、原因究明を徹底的に行うことが不可欠である。
この点についての債務者の主張、及び疎明は、未だ不十分な状態にあるにもかかわらず、この点に意を払わないのであれば、
そしてこのような姿勢が、債務者、ひいては原子力規制委員会の姿勢であるとするならば、
そもそも、新規制基準策定に向かう姿勢に、非常に不安を覚えるものといわざるを得ない」(44ページ)
大津地裁はこのように、福島原発事故の原因究明が、未だ十分になされているとは言えないことを、端的に指摘しているのですが、
さらに素晴らしいのは、福島原発事故の主要な要因を、津波に限定しようとする東京電力の見解や、
その上にのっかった、原子力規制委員会による新規制基準の前提的認識を、慎重に退けていることです。
というのは、事故当初より、後藤さんのお仲間の田中三彦さんなどが、パラメーターの分析から、
少なくとも1号機では、津波の到来以前に、大規模な配管破断などにより、冷却材喪失事故が起こっていた可能性が高いことを、主張し続けています。
これに対して東電は、津波によってすべてが起こったと説明しているわけですが、なぜここが重要なのかと言うと、
津波以前に大規模配管破断が起こっていたとしたら、耐震設定が完全に間違っていたことになるからです。
そうなると、日本中の原発が、もう動かしてはならないことになるのです。
いや実際にそうなのですが、このために東電は、事故要因は津波だと言い張り、原子力規制委員会も、東電の主張をかばう形で津波対策を求めているのです。
大津地裁は、訴訟の争点の④の、津波に対する安全性能のところでも、万全な安全性が確保されているとは言えないことも指摘しているのですが、
しかし、仮に、津波に対して万全な対策ができたとしても、その前に、地震で大規模配管破断が起こったのなら、話は別です。
この点、必ずしも、原因が津波とは決まっていないことを、大津地裁はしっかりと指摘している。
さらに、そもそも、この間、地球規模で気候変動が起こり、これまで経験したことのない事態が多発していること、
その中で、「想定を超える」災害であった言説が、繰り返されてきたことを、
大津地裁は「過ち」と指摘し、その事実に真摯に向い合うべきだ、とも指摘しています。
この点もとても感動しました。
このくだりは名文だと思います。
少々長いですが、多くの方に知っていただきたいので、この部分も引用しておきます。
「現時点において、対策を講じる必要性を認識できない、という上記同様の事態が、上記の津波対策に限られており、
他の要素の対策は、全て検討し尽くされたのかは不明であり、それら検討すべき要素については、いずれも審理基準に反映されており、
かつ、基準内容についても不明確な点がないことについて、債務者において主張、及び疎明がなされるべきである。
そして、地球温暖化に伴い、地球全体の気象に経験したことのない変動が多発するようになってきた現状を踏まえ、
また、有史以来の人類の記憶や、記録にあたる事項は、人類が生存しえる温暖で平穏な、わずかな時間の限られた経験にすぎないことを考えるとき、
災害が起こる度に、「想定を超える」災害であったと繰り返されてきた過ちに、真摯に向き合うならば、
十二分の余裕をもった基準とすることを念頭に置き、常に、他に考慮しなければならない要素、ないし危険性を見落としている可能性があるとの立場に立ち、
対策の見落としにより過酷事故が生じたとしても、致命的な状態に陥らないようにすることができる、との思想に立って、新規制基準を策定すべきものと考える。
債務者の、保全段階における主張、及び疎明の程度では、新規制基準、及び本件各原発に係る設置変更許可が、
直ちに、公共の安寧の基礎となると考えることを、ためらわざるを得ない」(45ページ)
この①、②の内容の続きでは、とくに③の、耐震性能に対する判断が、大きなポイントとなりますが、
高浜原発の個別性に、踏み込んだものになります。
この点も重要ですが、今回、指摘した内容は、大津地裁による、川内原発にも直ちに適用できる新規制基準の、抜本的なあやまりについての指摘です。
ぜひこの点をつかみとり、多くの方に伝えて下さい!
嬉しついでに、弁護団一同から出された声明文をここに載せておきます。
声明 2016年3月9日
大津地裁高浜3、4号機運転禁止仮処分申立事件申立人団、弁護団一同
本日、大津地裁は、関西電力高浜原発3、4号機の運転を禁止する、画期的な仮処分決定をした。
高浜原発3、4号機は、既に、原子力規制委員会の設置変更許可、その他再稼働に必要な手続を済ませ、
4号機はトラブルによって停止中であるが、3号機は、現に営業運転中である。
現に運転中の原発に対して、運転を禁止する仮処分決定が出されるのは、史上初めてである。
そして、関西電力株式会社は、この仮処分決定によって、4号機を起動させることができなくなっただけでなく、
3号機の運転を、直ちに停止しなければならなくなった。
福島第一原発事故は、膨大な人々に、筆舌に尽くしがたい苦痛を与えたが、それでも事故の規模は、奇跡的に小さくて済んだ。
最悪の事態を辿れば、日本という国家は、崩壊しかねなかったのである。
大多数の市民が、電力需要が賄える限り、可能な限り原発依存をなくしたいと考えたのは、当然であった。
そして、その後の時間の経過は、原発が1ワットの電気を発電しなくても、この国の電力供給に、何ら支障がないことを明らかにした。
もはや、速やかに原発ゼロを実現することは、市民の大多数の意思である。
しかるに、政府は、着々と、原発復帰路線を進めてきた。
まだ、福島第一原発事故の原因すら判っておらず、10万人もの人が避難生活を続けているのにもかかわらずである。
そして、原発復帰路線の象徴が、高浜3、4号機である。
ここでは、危険なプルサーマル発電が行われている。
もし、高浜原発で過酷事故が生じれば、近畿1400万人の水甕である琵琶湖が汚染され、
日本人の誇りである千年の都京都を、放棄しなければならない事態すら想定される。
市民が、この政治の暴走を止めるためには、司法の力に依拠するしかなかった。
そして、本日、大津地裁は、
福島原発事故の原因を津波と決めつけ、再稼働に邁進しようとする関西電力の姿勢に疑問を示し、
避難計画を審査しない新規制基準の合理性を否定し、
避難計画を基準に取り込むことは、国家の「信義則上の義務」であると明確に述べるなど、
公平、冷静に賢明な判断を示した。
市民は、今晩から、いつ大地震が高浜原発を襲うか、いつ高浜原発がテロの対象になるかと、脅えなければならない生活から解放される。
担当した裁判官3名(山本善彦裁判長、小川紀代子裁判官、平瀬弘子 裁判官)に対し、深い敬意を表する次第である。
関西電力に対しては、仮処分異議や執行停止の申立てをすることなく、直ちに高浜3号機の運転を停止させることを求める。
関西電力をはじめとする原子力事業者に対しては、目先の利益にとらわれることなく、
この美しい国土を、これ以上汚染することなく、将来の世代に残していくために、もう一度、営業政策を見直すことを求める。
私たちは、既に、将来の世代に対して、高レベル放射性廃棄物の10万年もの保管、という負担を押し付けている。
これ以上、負担を増やしてはならない。
そして、原子力規制委員会は、 今回の決定の趣旨を真摯に受け止め、新規制基準の見直し作業に着手すべきである。
また、政府は、2030年に、原発による発電を20~22パーセントとする等という、現行のエネルギー政策を根本から見直して、原発ゼロ政策に舵を切るべきである。
以上
本当に本当に、嬉しいニュースでした。
福井地裁の樋口裁判長が出された『大飯原発再稼働を認めず』の判決文を、記事にまとめた時の胸の震えが、一気によみがえりました。
『大飯原発の再稼働認めず!』樋口英明裁判長の判決要旨の全文です。ぜひ読んでください!
http://blog.goo.ne.jp/mayumilehr/e/c23cee97b8aefb95b510b0505f9c6072
もう一度ここに、樋口裁判長の判決文から少しだけ、紹介したいと思います。
ひとたび深刻な事故が起これば、多くの人の生命、身体やその生活基盤に、重大な被害を及ぼす事業に関わる組織には、
その被害の大きさ、程度に応じた安全性と、高度の信頼性が求められて然るべきである。
このことは、当然の社会的要請であるとともに、生存を基礎とする人格権が公法、私法を間わず、
すべての法分野において、最高の価値を持つとされている以上、本件訴訟においても、よって立つべき解釈上の指針である。
個人の生命、身体、精神及び生活に関する利益は、各人の人格に本質的なものであって、その総体が人格権であるということができる。
人格権は、憲法上の権利であり(13条、25条)、また人の生命を基礎とするものであるがゆえに、
我が国の法制下においては、これを超える価値を、他に見出すことはできない。
したがって、この人格権、とりわけ生命を守り生活を維持するという人格権の、根幹部分に対する具体的侵害のおそれがあるときは、
人格権そのものに基づいて、侵害行為の差止めを請求できることになる。
人格権は、各個人に由来するものであるが、その侵害形態が、多数人の人格権を同時に侵害する性質を有するとき、
その差止めの要請が、強く働くのは理の当然である。
使用済み核燃料は、本件原発の稼動によって、日々生み出されていくものであるところ、
使用済み核燃料を閉じ込めておくための堅固な設備を設けるためには、膨大な費用を要するということに加え、
国民の安全が、何よりも優先されるべきであるとの見識に立つのではなく、深刻な事故はめったに起きないだろう、という見通しのもとにかような対応が成り立っている、といわざるを得ない。
国民の生存を基礎とする人格権を、放射性物質の危険から守るという観点からみると、
本件原発に係る安全技術及び設備は、万全ではないのではないかという疑いが残るというにとどまらず、
むしろ、確たる根拠のない楽観的な見通しのもとに、初めて成り立ち得る脆弱なものであると認めざるを得ない。
極めて多数の人の生存そのものに関わる権利と、電気代の高い低いの問題等とを、並べて論じるような議論に加わったり、
その議論の当否を判断すること自体、法的には許されないことである、と考えている。
このコストの問題に関連して、国富の流出や喪失の議論があるが、
たとえ本件原発の運転停止によって、多額の貿易赤字が出るとしても、これを国富の流出や喪失というべきではなく、
豊かな国土と、そこに国民が根を下ろして生活していることが国富であり、
これを取り戻すことができなくなることが、国富の喪失であると、当裁判所は考えている。
また、被告は、原子力発電所の稼動が、CO2排出削減に資するもので、環境面で優れている旨主張するが、
原子力発電所で、ひとたび深刻事故が起こった場合の環境汚染は、すさまじいものであって、
福島原発事故は、我が国始まって以来、最大の公害、環境汚染であることに照らすと、
環境問題を、原子力発電所の運転継続の根拠とすることは、甚だしい筋違いである。
このニュースを、3月11日の記事として書こうと思いました。
あの日から5年。
1日として、日本を、福島を、そしてこのアメリカを、考えない日は無かったこの5年間。
高浜原発の運転停止の決定は、こちらの大手の新聞でも報じられていました。
まずは、尽力くださった方々に、心からの感謝の気持ちを伝えたいと思います。
そして、この判決が、日本中の、今まだ闘っておられる方々への励みとなり、すべての原発が廃炉の工程に進むよう、心から祈りたいです。
この件について、守田さんが、判決文の画期性を解説してくださいました。
以下に紹介させていただきます。
↓以下、転載はじめ
「福島原発事故の原因究明は今なお道半ば」!~高浜原発運転停止大津地裁決定の画期性その1~
昨日3月9日、大津地方裁判所(山本善彦裁判長)によって、高浜原発3、4号機の運転を認めない仮処分決定を下しました。
決定内容は、ただちに、以下のサイトに掲載されました。
僕もただちに、プリントアウトして読みました。
画期的だと思いました!
福井原発訴訟(滋賀)支援サイト
http://www.nonukesshiga.jp/
仮処分命令申立事件(高浜3,4号機)について、再稼働差し止めの仮処分決定
http://www.nonukesshiga.jp/wp-content/uploads/e9782c2ea5fefaea7c02afd880dd3bfc.pdf
http://www.nonukesshiga.jp/wp-content/uploads/b6c5742c4f89061d95ceb8a0675877e2.pdf
その上で、昨夜流されたNHKニュースを観たところ、重要なポイントが、端的に解説されていました。
要約としてすぐれているので、まずはこれをご紹介します。1分27秒です。
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(*まうみ注・ということで、すぐれた要約は文字に残したい!と思い、文字起こししました)
稼働中の原発の運転停止命じる初の仮処分決定 その理由は
【NHKニュース】2016年3月9日
http://www3.nhk.or.jp/news/html/20160309/k10010437041000.html
福井県にある高浜原子力発電所3号機と4号機について、大津地方裁判所は、
「福島の原発事故を踏まえた事故対策や緊急時の対応方法に、危惧すべき点があるのに、関西電力は十分に説明していない」として、
運転の停止を命じる、仮処分の決定を出しました。
稼働中の原発の運転の停止を命じる仮処分の決定は、初めてです。
決定の理由などについて、詳しい解説です。
↓以下、文字起こしはじめ
まずですね、今回の決定内容を詳しく見てみますと、どんな特徴があると言えるんでしょうか。
はい、今回の決定の特徴は、原発が安全だと言う証明を、電力会社に求めた点です。
そして、原子力規制委員会が定めた、規制基準に合格したと言うだけでは、十分な説明になっていないと指摘しました。
その上で、地震対策の基にある断層の調査や、設備面の事故対策を、関西電力の説明に基づいて検討した結果、いずれも事故を防ぐには不十分だ、と結論づけました。
はい、なぜですね、裁判所は、電力会社に対して、そうした厳しい要求をしているんでしょうか。
はい、今回の決定の根底には、福島第一原発の事故の検証が不十分ではないかという、裁判所の問題意識があります。
例えば、事故の主な原因が、津波なのかどうかも不明だと指摘しました。
そして、原発の運転を認めるかどうかは、国の規制基準に、津波以外の要因もすべて含めた事故対策が、盛り込まれたかどうかを見極める必要がある、という考えを示しました。
そして、関西電力の説明をもとに検討した結果、今の規制基準によって安全を確保できると考えるのには、ためらいがあると指摘し、
高浜原発の運転は認められない、と判断しました。
↑以上、文字起こしおわり
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これらを踏まえて、今回、下された決定の画期性を解説したいと思います。(引用箇所にはPDFのページ数を記します)
決定分はまず、裁判所による原発の構造、設備などに対する基本的認識を述べた上で、今回の訴訟の争点が、7つあったことを明らかにしています。
① 主張立証責任の所在
② 過酷事故対策
③ 耐震性能
④ 津波に対する安全性能
⑤ テロ対策
⑥ 避難計画
⑦ 保全の必要性
その後、運転停止を求めた市民の側(訴訟上では債権者)と、求められた関西電力(訴訟上では債務者)の、双方の主張が列挙され、最後に裁判所の判断が記されています。
今回、解説したいのは、このうちの①と②の内容です。
ここで、大津地裁が出した内容は、川内原発1、2号機を含む、すべての原発に適用できることだからです。
とくに、過酷事故対策についての、新規制基準の抜本的矛盾をついたものとなっています。
①の主張立証責任の所在とは、訴えた市民と関電のどちらが、原発が安全か危険かを立証しなければならないかを検討したもので、
大津地裁は、関電の側に、安全性の立証責任があることを指摘しています。
「原子力発電所の付近住民が、その人格権に基づいて、電力会社に対し、原子力発電所の運転差止を求める仮処分においても、
その危険性、すなわち人格権が侵害されるおそれが高いことについては、最終的な主張立証責任は、債権者らが負うと考えられるが、
原子炉施設の安全性に関する資料の多くを、電力会社側が保持していることや、
電力会社が、一般に、関連法規に従って、行政機関の規制に基づき、原子力発電を運転していることに照らせば、上記の理解はおおむね当てはまる。
そこで、本件においても、債務者において、依拠した根拠、資料等を明らかにすべきであり、その主張、及び疎明が尽くされない場合には、
電力会社の判断に不合理な点があることが、事実上推認されるものというべきである」(42ページ)
ここでは、誰が立証責任を負うのかの確認がなされているわけですが、大津地裁は、結論的には、
関西電力がこの使命を果たしたとは言えず、「電力会社の判断に不合理な点があることが事実上推認される」と判断して、運転停止命令を出しています。
続いて、②の過酷事故対策で、極めて画期的な点が打ち出されています。
端的に言えば、今回の記事のタイトルにもあげたように、「福島原発事故の原因究明は今なお道半ば」だという点です。
新規制基準は、福島原発事故の教訓を踏まえたものとされているのですが、しかし、原因究明が半ばで、どうして教訓を踏まえられるのか。
今、分かっているものを踏まえているだけで、他にもまだまだ踏まえるべき教訓がある可能性があるのです。
にもかかわらず、「教訓を踏まえた」とされる新規制基準が、作られてしまった。
この点は、新規制基準の抜本的矛盾、限界、あやまりと言うべきもので、元東芝の格納容器設計者の後藤政志さんなどが、声を枯らして批判されてきたことです。
僕も、繰り返し、この点を述べてきたので、大津地裁決定のこの部分を読んだときには、思わず「わあ、画期的だ!」と声をあげてしまいました。
以下、当該部分を引用します。
「福島第一原子力発電所事故の原因究明は、建屋内での調査が進んでおらず、今なお道半ばの状況であり、
本件の主張、及び疎明の状況に照らせば、津波を主たる原因として特定し得た、としてよいのかも不明である。
その災禍の甚大さに、真摯に向い合い、二度と同様の事故発生を防ぐとの見地から、安全確保対策を講ずるには、原因究明を徹底的に行うことが不可欠である。
この点についての債務者の主張、及び疎明は、未だ不十分な状態にあるにもかかわらず、この点に意を払わないのであれば、
そしてこのような姿勢が、債務者、ひいては原子力規制委員会の姿勢であるとするならば、
そもそも、新規制基準策定に向かう姿勢に、非常に不安を覚えるものといわざるを得ない」(44ページ)
大津地裁はこのように、福島原発事故の原因究明が、未だ十分になされているとは言えないことを、端的に指摘しているのですが、
さらに素晴らしいのは、福島原発事故の主要な要因を、津波に限定しようとする東京電力の見解や、
その上にのっかった、原子力規制委員会による新規制基準の前提的認識を、慎重に退けていることです。
というのは、事故当初より、後藤さんのお仲間の田中三彦さんなどが、パラメーターの分析から、
少なくとも1号機では、津波の到来以前に、大規模な配管破断などにより、冷却材喪失事故が起こっていた可能性が高いことを、主張し続けています。
これに対して東電は、津波によってすべてが起こったと説明しているわけですが、なぜここが重要なのかと言うと、
津波以前に大規模配管破断が起こっていたとしたら、耐震設定が完全に間違っていたことになるからです。
そうなると、日本中の原発が、もう動かしてはならないことになるのです。
いや実際にそうなのですが、このために東電は、事故要因は津波だと言い張り、原子力規制委員会も、東電の主張をかばう形で津波対策を求めているのです。
大津地裁は、訴訟の争点の④の、津波に対する安全性能のところでも、万全な安全性が確保されているとは言えないことも指摘しているのですが、
しかし、仮に、津波に対して万全な対策ができたとしても、その前に、地震で大規模配管破断が起こったのなら、話は別です。
この点、必ずしも、原因が津波とは決まっていないことを、大津地裁はしっかりと指摘している。
さらに、そもそも、この間、地球規模で気候変動が起こり、これまで経験したことのない事態が多発していること、
その中で、「想定を超える」災害であった言説が、繰り返されてきたことを、
大津地裁は「過ち」と指摘し、その事実に真摯に向い合うべきだ、とも指摘しています。
この点もとても感動しました。
このくだりは名文だと思います。
少々長いですが、多くの方に知っていただきたいので、この部分も引用しておきます。
「現時点において、対策を講じる必要性を認識できない、という上記同様の事態が、上記の津波対策に限られており、
他の要素の対策は、全て検討し尽くされたのかは不明であり、それら検討すべき要素については、いずれも審理基準に反映されており、
かつ、基準内容についても不明確な点がないことについて、債務者において主張、及び疎明がなされるべきである。
そして、地球温暖化に伴い、地球全体の気象に経験したことのない変動が多発するようになってきた現状を踏まえ、
また、有史以来の人類の記憶や、記録にあたる事項は、人類が生存しえる温暖で平穏な、わずかな時間の限られた経験にすぎないことを考えるとき、
災害が起こる度に、「想定を超える」災害であったと繰り返されてきた過ちに、真摯に向き合うならば、
十二分の余裕をもった基準とすることを念頭に置き、常に、他に考慮しなければならない要素、ないし危険性を見落としている可能性があるとの立場に立ち、
対策の見落としにより過酷事故が生じたとしても、致命的な状態に陥らないようにすることができる、との思想に立って、新規制基準を策定すべきものと考える。
債務者の、保全段階における主張、及び疎明の程度では、新規制基準、及び本件各原発に係る設置変更許可が、
直ちに、公共の安寧の基礎となると考えることを、ためらわざるを得ない」(45ページ)
この①、②の内容の続きでは、とくに③の、耐震性能に対する判断が、大きなポイントとなりますが、
高浜原発の個別性に、踏み込んだものになります。
この点も重要ですが、今回、指摘した内容は、大津地裁による、川内原発にも直ちに適用できる新規制基準の、抜本的なあやまりについての指摘です。
ぜひこの点をつかみとり、多くの方に伝えて下さい!
嬉しついでに、弁護団一同から出された声明文をここに載せておきます。
声明 2016年3月9日
大津地裁高浜3、4号機運転禁止仮処分申立事件申立人団、弁護団一同
本日、大津地裁は、関西電力高浜原発3、4号機の運転を禁止する、画期的な仮処分決定をした。
高浜原発3、4号機は、既に、原子力規制委員会の設置変更許可、その他再稼働に必要な手続を済ませ、
4号機はトラブルによって停止中であるが、3号機は、現に営業運転中である。
現に運転中の原発に対して、運転を禁止する仮処分決定が出されるのは、史上初めてである。
そして、関西電力株式会社は、この仮処分決定によって、4号機を起動させることができなくなっただけでなく、
3号機の運転を、直ちに停止しなければならなくなった。
福島第一原発事故は、膨大な人々に、筆舌に尽くしがたい苦痛を与えたが、それでも事故の規模は、奇跡的に小さくて済んだ。
最悪の事態を辿れば、日本という国家は、崩壊しかねなかったのである。
大多数の市民が、電力需要が賄える限り、可能な限り原発依存をなくしたいと考えたのは、当然であった。
そして、その後の時間の経過は、原発が1ワットの電気を発電しなくても、この国の電力供給に、何ら支障がないことを明らかにした。
もはや、速やかに原発ゼロを実現することは、市民の大多数の意思である。
しかるに、政府は、着々と、原発復帰路線を進めてきた。
まだ、福島第一原発事故の原因すら判っておらず、10万人もの人が避難生活を続けているのにもかかわらずである。
そして、原発復帰路線の象徴が、高浜3、4号機である。
ここでは、危険なプルサーマル発電が行われている。
もし、高浜原発で過酷事故が生じれば、近畿1400万人の水甕である琵琶湖が汚染され、
日本人の誇りである千年の都京都を、放棄しなければならない事態すら想定される。
市民が、この政治の暴走を止めるためには、司法の力に依拠するしかなかった。
そして、本日、大津地裁は、
福島原発事故の原因を津波と決めつけ、再稼働に邁進しようとする関西電力の姿勢に疑問を示し、
避難計画を審査しない新規制基準の合理性を否定し、
避難計画を基準に取り込むことは、国家の「信義則上の義務」であると明確に述べるなど、
公平、冷静に賢明な判断を示した。
市民は、今晩から、いつ大地震が高浜原発を襲うか、いつ高浜原発がテロの対象になるかと、脅えなければならない生活から解放される。
担当した裁判官3名(山本善彦裁判長、小川紀代子裁判官、平瀬弘子 裁判官)に対し、深い敬意を表する次第である。
関西電力に対しては、仮処分異議や執行停止の申立てをすることなく、直ちに高浜3号機の運転を停止させることを求める。
関西電力をはじめとする原子力事業者に対しては、目先の利益にとらわれることなく、
この美しい国土を、これ以上汚染することなく、将来の世代に残していくために、もう一度、営業政策を見直すことを求める。
私たちは、既に、将来の世代に対して、高レベル放射性廃棄物の10万年もの保管、という負担を押し付けている。
これ以上、負担を増やしてはならない。
そして、原子力規制委員会は、 今回の決定の趣旨を真摯に受け止め、新規制基準の見直し作業に着手すべきである。
また、政府は、2030年に、原発による発電を20~22パーセントとする等という、現行のエネルギー政策を根本から見直して、原発ゼロ政策に舵を切るべきである。
以上