ウィンザー通信

アメリカ東海岸の小さな町で、米国人鍼灸師の夫&空ちゃん海ちゃんと暮らすピアノ弾き&教師の、日々の思いをつづります。

日本とわたし

2017年08月20日 | 日本とわたし
まさに『日本とわたし』、という28日間を過ごしてきました。
今回の帰省の目的は歯の治療だったので、7月の末から最終日まで(小旅行に行った3日間を除く)は実家にこもり、おさんどん役に徹していました。
なにしろ、日本では車を運転できないので、どこへ行くにも送ってもらわなければなりません。
タクシー役をせっせと務めてくれた義父と、日本の暑さをすっかり忘れたわたしのために、少しでも涼しくなればと寝具を揃えてくれた母へのお礼も込めて、
久しぶりの孝行娘を20日ほど演らせてもらったつもりなのですが、そんなふうに思っているのはわたしだけで、母たちは多分、いつものリズムで過ごせない毎日に、相当疲れていたかもしれません。
終わりに近づくにつれて、母の咳がだんだんとひどくなり、お盆の真っ最中に休日診察をしてくれる病院に行き、診ていただいたりしたのですから…。

母は今年83歳になります。
ここが痛い、そこも痛いと言っては病院に行くのですが、検査の結果はどれも良好で異常無し。
骨も丈夫で、90歳まで大丈夫!と、医者に太鼓判を押してもらったり、いまだに歯は全部自分の歯で虫歯無し、耳も地獄耳以上によく聞こえます。
ただ、実年時代の働き過ぎがたたり、腰を悪くした後遺症に悩まされていて、だからさっさと歩けないと本人は嘆いているのですが、
うーん…大好きなパークゴルフなどに出かけた時などは、こちらがヒイフウと息切れしているというのに、あと何ホールする?などと聞いてくるほどの体力があるし、芝の上ならスタスタと歩けます。
まあとにかく元気でしっかりしている、だから多分、年齢に応じて生じる自然な衰えが受け入れ難いのでしょう。
そして、そのエネルギーが回り回って、非常に口うるさい。
自分は間違っていないという気持ちがとても強く、自分の思うように動けなかったりできなかったり言えなかったり考えなかったりする人、特に自分の家族にそういう人がいると、もう我慢ができない。
だから、彼女の家族には、そういう彼女の傾向を受け止めつつも、根気よく話し合えるように持っていける度量のある人間が必要だったのですが、
いかんせん、わたしを含めて皆、その場その場が無事に過ぎてくれれば良いとばかりに、彼女の機嫌を損ねないよう、損ねてしまってもそれ以上に機嫌が悪くならないようにと、言いたいことを胸に収めてしまってきたのです。
その筆頭が義父で、仕事以外のことは全て母に丸投げしてきたことも相まって、今となってはまるでサンドバッグのように、朝から晩まで母に口撃されていて、
母には母の理由があるにせよ、そしてその理由については同情できるところもあるにせよ、彼女自身でさえどうしてこんなにも腹立たしいのかとふと疑問を持つほどの怒りを一日中眺めることは、思ったより大変なことでした。
そんなふうによく怒る母ではありますが、正義感が強く、環境破壊を憂い、エネルギー資源の浪費を嫌う、良き市民の見本のような人でもあります。
そして、口ではぼろくそに言っていても、仕事に出かける義父を気遣い、せっせと世話を焼く。
優しさと厳しさと幼稚さが混在している後期高齢者(なんて言葉があることを今になって知りました)なんですね。


さて、実家に居る間に、わたしにとっては1年分ぐらいに相当する時間、テレビを観ました。
朝起きてすぐにまず体操、そして身支度を終え、朝食の準備をしながらNHKのニュースを観、食事中はワイドショーのはしご。
そのあと洗濯をしたり、細かな用事をしたりして、また昼食の前後はNHKのニュースとワイドショーのはしご。
そして3時にはおやつの時間で、録画しておいた特別番組や報道番組を観たり、アメリカのドラマを観たりして過ごし、
夕飯時にはNHKのニュースや、世界陸上の中継などを観ましたので、時間にすると相当な長さです。
その長い時間の中でも、北朝鮮のミサイルに関するおどろおどろしい報道の回数の多さには、本当に驚きました。
報道というより繰り返し、ほぼ同じことをどこの局でも言っていて、しかもバックには戦争映画のような効果音付きです。
こんなものを毎日、飽きがくるほど観せられたら、なるほど、あのバカバカしい避難訓練にも参加してみようという気になってしまうのかもしれません。

こちらでは、テレビを観るのは夜9時の、レイチェル・マドーがアンカーを務めるMSNBCの報道番組(共和党寄りのフォックスと二極化されていると言われたりしている)か、好きなドラマを40分ほど観るぐらいで、
日本の報道となると、YouTubeの動画を断片的に観たり、Facebookで紹介されている報道番組や特別番組を、これもまたネットで観るぐらいしかできません。
言い換えると、観る前に、それを自分が見たいか見たくないか選ぶことができる、いや、選んでいると言えます。

ところが、母たちと観るテレビは母たちが好んで選んだものばかりで、それらの番組を彼らと一緒に観て、それらの内容に対する彼らの意見を聞きながら、対するわたし自身の思いや考えを言えないまま過ごすことは、わたしが想像していた以上に辛いものでした。
彼らは好んでNHKを観、読売系のワイドショーを観、辛坊氏や田崎氏をはじめとする安倍政権ヨイショ組の話に相槌を打ち、けれども原爆や戦争に関する特別報道番組は、今さら観たところでどうにもならないと、すぐに消してしまいます。
森友学園や加計学園の問題について報じているのを聞くと、まだこんなことをしつこく言っているのかと呆れたり…。

極めつけは、日本会議の大御所櫻井氏と萩生田氏の対談。
「 加計学園報道は反安倍倒閣運動だ 」とばかりに、とうとうと持論を述べる櫻井氏と、バーベキュー仲間の写真についてびっくりするような言い訳を堂々と述べる萩生田氏。
その二人の長い長い話を、頷きながら聞く母と義父の間に挟まって過ごす時間の長かったこと長かったこと…。

ただ、母は安倍政権を支持しているわけではありません。
母と義父の人生は、ほぼ自民党とともにあると言っても過言ではないのですが、安倍氏の言動には呆れ、辟易していると言います。
けれども、だからといって、他に代われる人物がいないので仕方がない、このまま行くしかないと言います。
野党については期待できないし、今のような状態では期待しようとも思わない。

そんな、一番身近な存在である母と義父に、わたしはなぜ、自分の考えや思いを伝えなかったのか、伝えられなかったのか。
それはひとえに、自衛という自己本位な思いによるものでした。
あの場で、たとえ一言でも、わたしが普段考えていることや思っていることを口にしたら…黙っていることで保たれていた和平が瞬間に崩れ、それだけではなく、流れによっては、それ以降の毎日がギスギスした空気に包まれることは必至でした。
母の気性を少しでも知る者は、そんなことをわざわざしようとはしません。
そして、普段はのんびりとしている義父も、若い頃からしっかり勤め上げた職業柄からか、急に強い口調で、わたしのような考えを持つ人間を非難したりします。
事なかれ主義、意気地なし、身勝手、どういうふうに思われようとかまわない、もともと持つことが難しい和やかな空間を、わざわざ壊したいとは思えませんでした。

そんな自分が情けなくて腹立たしくて、心の中に渦巻いているたくさんの言葉と折り合いをつけている自分が悲しくて、1日が終わる頃にはヘトヘトになってしまいました。
そして思いました。
わたしのような思いをしている人たちがいっぱいいる。
それも、わたしのような期限限定などではなく、24時間365日、ずっと続いている人がいっぱいいる。
そういう人たちに心を寄せていたつもりでしたが、まだまだ足りなかったことを痛感しました。
本当に、本当に、大変なことだと思います。
言葉がうまく見つかりません。

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心が疲れきってしまって、ツイッターやフェイスブックに流れてくる情報を目で追うだけで、気持ちがついていかなくなってしまいました。
帰りの飛行機の中でも、スクリーンに映る映画を観ている時以外は、ずっと目を閉じていました。
帰りは乗り換えが2回あり、家に辿り着いたのは、日本を出てから25時間後でした。

帰省中に、72回目の、2回もの原爆投下が行われた日々があり、敗戦を認めた日がありました。
加計学園問題など、一連の疑惑を問う閉会中審査もありました。
けれども、どのことについても、考えたり誰かと話し合ったりすることができませんでした。

米軍の言うままに、沖縄市民が暮らす住宅地の上を再び飛ぶことになったオスプレイについても、
撃ち落とすことなど不可能で、万が一撃ち落としたりしたら生じる被害について誰も言及しないままのミサイル騒動についても、
何も書けないまま時間が過ぎていってしまいました。


またぼちぼち復活できるよう、気持ちを前に向かせたいと思います。
長い長いお休みをいただいて、そんな贅沢をさせてもらえることに感謝して、萎えてしまった心を少しずつ元に戻したいと思います。

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では、その第一歩として、
ミサイルだー!ミサイルだー!と大騒ぎするだけして、国民に恐怖感をしっかり植えつけ、1基800億円もする高額武器を2基も買おうとしている安倍政権についての記事を、紹介させていただきます。

地上型イージスも新たに 2プラス2で伝達 米製高額武器また購入
【東京新聞】2017年8月19日
http://www.tokyo-np.co.jp/article/politics/list/201708/CK2017081902000143.html



日本政府は、17日に、米・ワシントンで開かれた外務・防衛担当閣僚による日米安全保障協議委員会(2プラス2)で、
北朝鮮による弾道ミサイル発射への対応策として、米国から、新たな高額武器を購入する方針を、米側に伝えた。
日米の防衛協力を強化すると同時に、「米国第一」を掲げて米国製品の輸出増を目指すトランプ大統領に配慮し、良好な日米関係を維持する狙いもある。(新開浩)
 
小野寺五典(いつのり)防衛相は、2プラス2に続くマティス米国防長官との個別会談で、海上自衛隊のイージス艦に搭載している、迎撃ミサイル「SM3」を地上配備する米国製「イージス・アショア」を、新たに購入する方針を説明し、協力を求めた。
 
小野寺氏は会談後、記者団に、「しっかり協力する姿勢を示してもらった。先方からは歓迎の意向が示された」と語った。
 
イージス・アショアは1基800億円程度で、2基で日本全域をカバーできるとされる。
日本政府は導入に向け、2018年度予算に、設計費を盛り込む方針だ。
この他にも、レーダーに探知されにくいステルス戦闘機F35や、新型輸送機オスプレイなどの高額な武器を、米国から買う計画だ。
 
米国製の武器購入に拍車が掛かる背景には、トランプ氏が唱える「バイ・アメリカン(アメリカ製品を買おう)、ハイヤー・アメリカン(米国人を雇おう)」という主張がある。
安倍晋三首相は、2月の日米首脳会談直後の国会答弁で、「米国の装備品はわが国の防衛に不可欠。結果として、米国の経済や雇用にも貢献する」との持論を展開した。
 
米国製の高額な武器購入の影響もあり、安倍政権の下で日本の防衛費は、17年度当初予算まで5年連続で増え、16年度には5兆円を超えた
 
防衛費の増加は、今後も続く見通しだ。
2プラス2の共同発表は、19年度から5年間の、次期中期防衛力整備計画(中期防)に触れ、「日本の役割を拡大し、防衛能力を強化させる」と明記。
日本が、一層の負担増に応じる内容を盛り込んだ。


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トランプ氏は、いまだ政治家というより実業家です。
けれども、ただの実業家ではなく、名声と地位と権力を併せ持ってしまった実業家です。
彼と安倍氏が政権に居座っている間には、まだまだ莫大な金(それも国民から吸い上げた税金)が、無意味に無頓着に無謀に、湯水のように使われてしまうでしょう。
米国は米国で、日本は日本で、なんとかして市民同士が、少々の意見やポリシーの違いはあっても、力と知恵を合わせ、数の力を強め、立ち向かっていかなければなりません。
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