ウィンザー通信

アメリカ東海岸の小さな町で、米国人鍼灸師の夫&空ちゃん海ちゃんと暮らすピアノ弾き&教師の、日々の思いをつづります。

映画とジャズと友だちと

2018年05月26日 | ひとりごと
金曜日の夜、前に住んでいた隣町の映画祭で上映されている、平柳敦子監督の作品『Oh Lucy』を観に行った。
主演は寺島しのぶさん。
そして共演した主な役者さんたちは、役所広司さん、南果歩さん、忽那汐里さん、そして英会話教室講師役のジョシュ・ハートネットさん。

会場はこんな感じ。







しのぶさんが演じるのは、満たされない日々を過ごす、43歳の独身OL・節子さん。
英会話教室のアメリカ人講師のジョンと出会い、単なる授業中の挨拶のハグに胸をときめかせ、クラスで使う金髪のカツラと与えられたルーシーという名前に、別の自分を投入し、恋にのめり込んでいく節子さん。

うーん…なんか生々しくて…。

日本の田舎暮らしを経験したいからと、うちにやって来た25歳の青年に、会ってまだ1週間しか経っていないのに、多分あなたはわたしのソウルメイトだと思う、などというトンデモな内容の、しかも辞書の例文を適当に組み合わせた破茶滅茶な手紙を手渡した33歳だったわたし…。

ルーシーほど性急ではなかったものの、何度後ずさりされても、頑なに断られても、絶対に諦めようとしなかったわたしは、その当時の夫にとってどれほど厄介な存在だったのだろう…。
しかも節子さんのように独身ではなくて、義父母と同居している、二人の幼児がいる、だから当然既婚者だった中年の女だったのだから、厄介を通り越して恐ろしかったかもしれない。

全てはわたしのひらめき(他人からすると自分勝手な思い込み)から始まったのだったと、映画を観ながら思い出していた。

まだ観ていない方はぜひ。
いい映画です。


そして昨日は、やっぱりせっかくだから、結婚記念日っぽい時間を過ごそうと、マンハッタンに出かけた。


お目当ての場所は『JAZZ STANDARD』。




Sullivan Fortnerは、若手ジャズピアニスト。
彼のトリオに、昨夜はトランペッターの​​Peter Evansが急遽加わって、クァルテットバンドで演奏した。
Peterとは本番の4時間前に初めて会ったそうで、はじめはお互いのスタイルを探り合っているような緊張感が、舞台のすぐそばで聞いてるわたしたちに、ビシバシと伝わってきた。

本音を言うと、Sullivanのピアノをもっと聞きたかったのだけど、Peterの独創的な演奏と凄まじいテクニックとエネルギーに圧倒されて、呆然と興奮を交互に感じながら聞き入った。





すぐ隣に座ったおばあさんと仲良くなり、いろんなことを話した。
アーティストだと言うので、どういうものですか?と尋ねると、「アートはアート、すべてよ」と言う。
スケッチをよくすると言うので、画家なのかもしれないと思ったりしながら、話に耳を傾けていた。
「木を見るとね、わたしはその中にすっと入っていくの。すると地面から芽を出した時からのことがわかって、今の姿になるまでが全部見えるの」
 
木のことを話し始めたらわたしも止まらない。
二人で意気投合して、音楽のこと、作曲のこと、作詞のこと、写真のこと、家族のことなどを、あれやこれやと話した。

演奏が始まると、もうノリノリで、合いの手を入れるのがすごくうまくて、ああ、聞き慣れてる人だなあと思った。
別れ際に名刺をもらい、また会いましょうと言って別れた。

でも、なんか見たことがあるような人だなあと気になったので、家に戻ってから調べてみたら、

Ann Grifalconiさんは、75冊もの絵本の挿絵を描いた、挿絵だけでなく話も書いた、88歳の大御所さんだった。

これは多分今よりずっと若い頃の写真だと思うけど、今も88歳だなんて絶対に思えない、すごーくチャーミングな人だった。




日本の版画はすごいって何度も言ってた。


彼女は作家であり、画家であり、詩人であり、写真家であり、そして市民運動家でもある、とてもパワフルで可愛い人。
「作曲は心と脳を鍛えてくれる、とてもいいものだから、曲を仕上げるまでは大変だけど、最後まで頑張るのよ」と、手をぎゅっと握って励ましてくれた。

この日も朝から作曲に取り込んでいて、だけど何度も書いた音符を消してたら、五線譜の五線までが薄くなってしまって、キィ〜っとなっていたのだけど、
なんかいい気合を入れてもらったような気がして、今日は彼女のちいちゃな手を思い出しては書き直している。


そしてこの日曜日は、大好きな友人夫婦、かおり&ジョージ一家が遊びに来てくれた。
今日の夫の漢方クラスはインターネットクラスなので、彼はクラスを受けながら、インド料理のレシピ本を見い見いチキンをディップするソースを作り、バーベキューコンロで焼いてくれた。
生後7ヶ月の杏ちゃんは、今人見知りの真っ最中。
でも、なぜか夫があやすとよく笑った。
お兄ちゃんの海くんは、当たり前だけどすっかりお兄ちゃんらしくなって、同じ名前のうちのやんちゃ坊主海と会うのを楽しみに来てくれたのに、とうとう会えずじまいで帰らなくてはならなかった。


それぞれに楽しい週末を過ごせたけれど、気温の上下が激しくて、どうも上手に眠れない。
こんな時は英語の本に限るのだけど、今読んでる『PACHINKO』が面白すぎて、とうとう昨日は夜中の2時から6時まで、延々と読み続けてしまった。
明日はMemorial Dayなので、もう一日ゆっくりできる。
でも多分、楽譜に向かってウンウン唸っては、どこかの掃除をして気を紛らわせることになるだろう。

あ〜、曲が仕上がる日はいつかなあ…。
コメント
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