生まれて初めてのK-Popコンサートに行ってきた。
長男くんの妻になり、それで自動的にわたしの初の娘になってくれたTちゃんが、おかあさん、一緒に行きませんか?と誘ってくれたのだ。
Tちゃんは、ティーンの頃からの韓ドラ&K-Popファンで、外国の航空会社でキャビンアテンダントをしていたり語学留学していたりの、英語と韓国語を自在に操ることができる才色兼備さん。
会うと必ずK-Popや韓ドラの話になりかなり盛り上がる。
わたしがハマったのは60を過ぎてからなので、Kちゃんはわたしの約半分の年齢にして大先輩なのだ。
その大先輩のKちゃんが、わたしがずっと前に、このエンハイフンの話をしていたのをしっかり覚えていてくれて、今回のニューアーク公演に誘ってくれたのだった。
といっても、わたしは特にK-Popのファン、というのではない。
BTSのようにわあっと興味がわくグループはあるけど、だからといってずっと熱心に追い続けたりはしない。
韓ドラの中であまりに演技が上手いので、この人は誰だと思って調べたらアイドルとわかり、属しているグループのビデオを覗いてみる、みたいな感じで軽くつながっている。
YouTubeでは、グループごとのダンスの練習ビデオも観られるのだが、それを観ていると胸の辺りがジーンとしてくる。
ここまで仕上げるのにどれほどの汗と涙を流したのだろうか、細部にわたり高度なテクニックが必要とされる動きの連続を完全に記憶し、なおかつ歌を歌い、カメラ目線の表情を作り上げるのにどれほどの練習をしたのだろうか。
でもまあ、だからといって熱心に曲を聴くのでもなく、特定のグループを応援したくなるというのでもなく、ある程度満足したらそれで終わり、という感じだった。
突如コロナ禍が始まり、世の中がぐわんと歪み、見えない恐怖がじわじわと染み込んできた2020年。
6月から9月までの3ヶ月間に、楽天Vikiで、エンハイフンというグループを誕生させたサバイバルドキュメンタリー番組『I-LAND』が放映された。
ちょうどその頃見たいドラマがなかったこともあって、普段ならめったに観ない類の、しかも英語字幕でしか観られない番組なのに、覗いてみたら妙にハマった。
孫の年代の男の子たちが、自ら選んで来たとはいえ、めちゃくちゃ厳しい競争に生き残るための、想像を絶する激しい練習に明け暮れ泣き笑いする様子に、心がぐんぐん惹かれていった。
彼らは選ばれ、振り落とされ、また這い上がってきては振り落とされた。
韓国のショービジネスは今や世界を制し始めていると言っても過言ではないが、それだけに深い闇も抱えている。
この若い子たちの夢と欲望を利用して、一儲けしようという魂胆があることは重々分かっていても、当人たちの懸命な姿を見ると思わず応援したくなる。
いろんな国からやって来た子たちの中に二人の小柄な日本人の男の子がいて、どちらも中学生で、ニキとタキと名乗っていた。
愛嬌者のタキは審査員や参加者から可愛がられていたが、ダンスがとびっきり上手いニキは、その自信が故に孤立することが多々あって、華奢で背が低いというコンプレックスも強く、これは最後までもたないかもと思っていた。
これ、正直言うと、今見てもちょっとウルウルしてしまう😅
[ENHYPEN] I-LAND全話一気見 プレビューver / 日本語字幕
いや、それにしても、なんでここまで熱心に観ていたか、ここでちょっと言い訳タイム。
わたしは16歳から吹奏楽部という、文化系なのだけど同時に体育会系でもある世界に身を置き、大人になってからも、そしてこちらに来てからも、連続ではないけれども続けてきた。
楽器はクラリネットで、オーケストラに例えるとバイオリンのパートを担当する。
16歳で始めたばかりの頃は、1年生のくせに超生意気で、誰よりも(もちろん先輩も含めて)先に上手くなってパートリーダーになり、ソロの楽譜を吹きたいと思っていた。
そのために1日に何時間も練習して(その頃は父の借金問題や落下事件の後遺症でピアノがろくに弾けなくなっていた)、唇が何度も切れたけど、それでも吹くのをやめなかった。
ちゃんと練習してこない部員に腹を立てたり、指揮をする先輩を自分の方が上手くできるのにと思いながら見ていたりで、音楽をみんなで一緒に作り上げていくという過程は楽しかったが、小さな不満をいっぱい溜め込んでいた。
気持ちを言葉に表すこともできなくて黙り込んでしまい、けれども意固地に欲張り、周りを混乱させ、仲間を悪い結果に巻き込んでは罪悪感に苛まれていたニキ。
ニキを見ていると、その時の自分がいちいち思い出されてきて、だから余計に気になった。
結局、ニキを含む7人の男の子たちが最後に残って、ENHYPEN(エンハイフン)という名のグループが結成された。
わたしと彼らのつながりはそこで終わり。
ほんまによう頑張ったなあ、これからも頑張りや。
エンハイフンという覚えにくい名前もすぐに忘れ、結成後の活動にも興味を失っていた。
そんなこんなで3年が経ち、Tちゃんから彼らがプルデンシャルセンターでコンサートするので行きませんか?と誘ってもらって、え?あの子たち、もうそんなでっかい場所でコンサートできるん?とびっくりした。
何やらその公演はワールドツアーの一環で、しかもニュージャージーでは2夜連続?!
プルデンシャルセンター(座席数17000弱)は、うちから車で20分のところにある。
わたしは一度だけ、ゴスペルのコンペティションに参加した時に舞台に立ったことがある。
まだデビューして3年なのに集客は大丈夫なのかなあと言うと、満員にはできないだろうけど、そこそこ入ると思いますよと、先輩Tちゃんは分析した。
彼女は18日に友人と、そして19日にわたしと、どちらの公演も観に行くと言う。
エンジン(エンハイフンのファンの総称)でもないTちゃんがどうして?
きっとわたしが一人では行きづらいだろうと、一緒に付いて行ってやろうという思いやりなのだ。
しかもそのチケットはTちゃんが買ってくれて、いくらわたしが払うと言っても聞いてくれない。
ありがたいやら申し訳ないやら。
せめてコンサートの前に彼らのことを復習しておこうと思い、改めてYouTubeのビデオを観たのだけど、ニキが見つからない?
おいおい、メンバーチェンジか?などと焦りながら探していると、あ、いた!顔は確かにあのニキだけどデカい!
14歳だった彼が18歳になり、多分160センチ台だった背が180センチを超えている。
これは2年前に作られたニキのソロビデオ。BTSのジミンのダンスカバー。まだ今みたいにデカくない。
ENHYPEN (엔하이픈) NI-KI's BTS 'Lie' DANCE COVER
エンハイフンのビデオをちょこっと。
ENHYPEN (엔하이픈) 'Given-Taken' Official MV
ENHYPEN (엔하이픈) ‘Bite Me’ Dance Practice
ENHYPEN (엔하이픈) ‘Sacrifice (Eat Me Up)’ Dance Practice
ENHYPEN (엔하이픈) 'Future Perfect (Pass the MIC)' Official MV (Choreography ver.)
[MIX & MAX] ENHYPEN JUNGWON & NI-KI (정원 & 니키) 'Bleeding Darkness' (4K)
Tちゃんと待ち合わせたセンター前のバカでかい像
まだ開演までにまだまだ時間があるのに、会場はすでにアッツアツ!10代から30代が中心の人種の坩堝。
アジア系の人たちが見当たらない。
だからアジア系60代のわたしなんてマイナー中のマイナーで、帰り際のトイレで一人、多分50代前半っぽい白人女性を見つけただけ。
すごいなK-Pop。
ファンサービスで会場を両側から練り歩くメンバーたち。
耳をつんざくほどの絶叫は曲と曲の合間だけで、歌とダンスが始まると聞き入っているか一緒に歌うエンジンたち。
それにしても韓国語の歌を、これほどの大勢の人たちが一緒に歌っていることに感動した。
この18歳から22歳までの7人の若者たち。
ニキのド成長っぷりに感動したり、ソンフンとジェイクのますますの男っぷりにドキドキしたり、ジェイのトゲトゲしてた角が取れていい塩梅になってるのが嬉しかったり、ヒソンとジョンウォンのグループ想いの優等生姿に惚れ惚れしたり、ソヌの変わらぬ可愛らしさにキュンとしたり。
7色のキラキラ輝くスターたちを観ながら、わたしの頬は始終緩みっぱなし。
完全に可愛い孫たちの活躍を見守るばあちゃんと化していたのであった。
コンサートが終わり、人と車でごった返す街中から抜け出し、Tちゃんを電車の駅まで送って行き、うちに戻った。
LINEチャットでTちゃんが無事にマンハッタンの家に戻ったことを確認し、そして互いにささやき合ったのだった。
「今日からわたしもエンジン❤️」