散歩道に可愛らしい葉っぱが落ちていた。
先週の水曜日に、前歯のクラウンの色合わせをしてもらいに、歯科医から教えてもらったラボラトリーに行った。
全面ガラス張りの広々とした部屋に通され、待つように言われたのだけど、落ち着かないったらない。
棚の中や机の上にはいろんな歯の、いろんな色のサンプルが置かれていて、これだけたくさんあれば、わたしに合う色を見つけることができるだろうと思うほどの種類の多さだ。
「お待たせしました」と言って入ってきた男性はアジア系の人で、多分韓国人なのだろうと思って見ていたら、いきなり「あなたは韓国人ですか?」と聞かれた。
「かなりの確率でそう聞かれるのですが、わたしは日本人です」と韓国語で言うと、「え、かなり話せるじゃないですか」と言われ、「勉強はしていますが、この応え文句を特化して覚えてるだけなので、それほど話せるわけではありません」と英語で答えたら笑ってた。
手鏡を持ちながらの色合わせが始まった。
サンプルの色合いの違いがあまりに微妙なので、しまいにはどれがいいのかわからなくなってしまった。
こういう場合は専門家に任せようと思い、彼の意見を聞いたところ、30年以上も前に何の相談もなくいきなりはめられてしまった上の前歯4本のクラウン(今は一本抜けて3本になっている)の色と、わたしの自前の歯の色がかなり違うので、あなたはどちらの色に合わせたいのですか?と聞かれた。
そりゃあなた、真正面に並んでるニセモノに合わせるしかないんじゃないですか?
ニセモノ以外の歯ははっきり言ってかなり黄ばんでいて、できることなら漂白したいと思うくらい気になっていて、そんなものに合わせて欲しくないに決まってるじゃないですか。
ということで、ニセモノの色に合わせることになったのだが、すると彼はまたこんなことを言い出した。
「あなたのこの3本の差し歯はメタルコアなので、ほら、白さの中にも暗さが漂っているでしょう?」
「たしかに」
「で、今回、あなたの担当医が指示しているのジルコニアなんですよ」
「それがなにか?」
「ジルコニアをメタルコアの歯の横に並べると、暗さが微塵もない明るい白さが目立ってしまうと思うんですね」
「それで?」
「なので、ちゃんと合わせたかったら、ジルコニアではなくて、メタルコアにした方が僕はいいと思うんです」
ううむ…またまた話が変な方向に行きそうな気配ではないか。
いやあ、4本ものメタルコアの前歯を30年以上も抱えてきたのだが、軽度の痺れと違和感はずっと続いているし、金属と接触している部分の歯肉の黒変も年々ひどくなってきた。
今回のやり直しはその中のたった1本なのだけど、もう本当に懲り懲りだと思う治療過程だったので、あとの3本はこのまま、できたら火葬場まで持って行くつもりだ。
なので、やっぱりちょっとくらいの色の違和感があってもいいから、ジルコニアのクラウンにして欲しいとお願いした。
そんなわずかな違いより、ニセモノ4姉妹と他の歯の色の違いの方がダントツに大きいのだから。
そんなわずかな違いより、ニセモノ4姉妹と他の歯の色の違いの方がダントツに大きいのだから。
選んだサンプルと一緒に何枚ものお口あんぐりの写真を撮り、じゃあこれでよろしくお願いしますと言って立ち上がろうとすると、「あ、もう一つ、お話が」と、今度は写真を撮ってくれていた技師さんに引きとめられた。
「実はですね、あなたの前歯、形がちょっとユニークなんですよ」
「???」
「ほら、見てください、前歯っていうのは普通、角が四角くて尖っているでしょう」と言って、彼の前歯を見せてくれる。
「で、あなたの前歯、というかクラウンなんですが、なぜか全部角が丸いんですね」
「え?」とびっくりして手鏡で見直すと、うんうん、確かに丸い。四角くない。
「なので、今回我々も、その形に合わせて歯を作らなければならないのです」
「はあ…どうもすみません」
「いえいえ、あなたが謝る必要は無いですよ、ははは!まあ、女性なので優しい印象になるかも、ですね」
慰めのつもりで言ってくれてるのだろうか。
いや、もうそれからというもの、その丸さが気になって気になって…。
28日には絶対に間に合うと言ってくれたのは良かったのだけど、その日、実際に入れてみてちゃんと合うのかどうか、歯茎がちゃんと治癒しているのかどうか、そこのところの確信がイマイチ持てない。
いや、でも、歯抜けのまま飛行機に乗ったりお正月を過ごしたり、ましてや50年ぶりの同窓会に参加したりしたくない。
前歯でちゃんと噛んで食べたいし、大口あけて笑いたい。
早寝早起きを心がけ、ちゃんと運動もして頑張るので、神さま、どうかお願いします!
余談:
歯の漂白は、担当の歯科医に相談してみたら断られてしまった。
漂白効果が現れるのは自前の歯のみで、それがニセモノの4本とは似ても似つかない白色になるので、お勧めできないと言う。
仕方がない、あの世に行くまでは目玉焼きコンビネーションで生きていこう。
余談その2:
記事を読んでくれたfacebook友さんたちが、前歯に支障が生じると木管楽器を吹く時に困るよね、とか、発音に支障が出るよね、とか話してくれて、そうそう、そのことを書くのを忘れてたことに気がついた。
そうだった、前歯4本がニセモノになってからは、クラリネットを吹くとすごく不快だったし鈍痛に悩まされた。
そして今回1本が欠けてた10ヶ月の間は、『f』や『th』がある英単語がちゃんと発音できなくて、生徒を教えている間中、気をつけていなくてはならなかった。
あ〜もうほんと、こんな毎日を終わらせたい。
おまけ写真:
夕飯時限定、うちのモデル猫