わ! かった陶芸 (明窓窯)

 作陶や技術的方法、疑問、質問など陶芸全般 
 特に電動轆轤技法、各種装飾方法、釉薬などについてお話します。

騙しのテクニック28 よく有る贋作6(越前、珠洲)

2014-07-16 16:51:01 | 騙しのテクニック
2) 我が国中世の焼き物の贋作。(前回の続きです。)

 ③ 越前焼の贋作。

   昨今の「古陶ブーム」に乗り、お歯黒(おはぐろ)壷が注目を集め、贋作が作られる様に

   なります。

  ) 既婚の女性が歯を黒く染める風習は、江戸時代以前からありましたが、一般に広がるのは

    江戸時代以降と言われています。

    越前地方では昭和の初期頃まで存在していた様です。その為、最近まで、お歯黒壷は多く

    打ち捨てられて残っていましが、その数も減り、贋作が登場する様に成ります。

    注: お歯黒壷: 液体の鉄漿(かね)が、お歯黒の原料です。鉄片を茶の汁や酢

     に浸し酸化させた褐色、栗色の液体で、五倍子の粉(ふしのこ)を入れて黒くしたものを

     歯に塗りました。この液体を入れる高さ約20cm程度の小壷を「お歯黒壷」と言います。

   ) 一番人気のあるのが、細長い徳利形で、鉄釉が掛かった物で、この手の壷が多量に

     贋作として、制作されています。

   ) 小型の壷ですので、容易に作る事が可能ですので、大量に出回る事になります。

     偽者は本物より軽く出来ています。

   ) 真贋のポイントは、口造りと底造りにあると言われています。

     更に、耳も付いた壷では、耳の付け根にも注意が必要です。贋作は作為が感じられる

     との事です。

   ) お歯黒壷は茶の湯の花生として、愛用される用になります。

 ④ 珠洲(すず)焼。

  珠洲焼の名前が脚光を浴びる様になったのは、ここ数十年の事です。

  昭和38年頃から、地元の中野錬次郎氏の研究により、古窯址が発掘、発見され珠洲焼きの

  存在が知れ渡る様になります。

  珠洲焼の本拠地は、現在の能登半島東北端から、飯田湾を望む珠洲市内海の周囲にあり、

  十数基の古窯址が発見、発掘されています。

  珠洲焼は室町中期頃には、生産を終了しています。原因は燃料の枯渇や、低い生産性の為、

  他の焼き物との競争に敗れたとの説もあります。

  ) 珠洲焼の特徴。

   a) 灰色の作品。還元炎で燻製による焼成の結果です。

   b) 須恵器の時代の作品は、他の窯が多種類の作品を作っていたのに対し、珠洲では、主に

     大甕(かめ)擂鉢、壷の三種類のみを作っています。作品の底が平らなのが特徴になって

     います。

   c) 平安末~鎌倉中期ごろは、肌理(きめ)の細かい叩き目のある壷が作られています。

     胴部内側には、叩き締めによる、当木(あてぎ)の丸状の叩き痕が残り、紐造りの繋ぎ目

     の跡が残ります。 頸部は長く、口造りも大きく成っています。器の表面には、波状文や

     飛鳥樹文などの多種類の文様で装飾されています。

   d) 鎌倉以降では、陶土も肌理が荒くなり、造り方も粗雑に成っていきます。

     口縁も玉縁で、口径も小さくなっています。器形は、撫ぜ肩になります。

  ) 珠洲焼と他の焼き物との混同。

   a) 須恵器との混同。叩き成形による制作方法は須恵器と同じです。更に、無釉の還元焼成

     による焼き締め陶器ですので、須恵器と混同され易いです。

   b) 他の灰色の焼き締め陶器との混同。

     陶器で薪による焼成で失敗(焼き損じ)した場合、作品が灰色に成る場合があります。

     この様な陶器が、珠洲焼として、流通している事も多い様です。

 以下次回に続きます。
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