一度焼成した陶磁器に、色絵の具で上絵付けを施し、再度低温で焼き付けた物、即ち、二度焼きした
物を色絵と呼びます。
二度焼きの色絵は、12~13世紀頃に中国の、宋の時代に完成された技術です。
尚、色が付けられた陶器は、古く唐三彩やペルシャ陶器にも見られますが、色絵とは区別されます。
宋赤絵と呼ばれるのが初期の色絵ですが、その後、明代の景徳鎮で、様々な色絵が作られます。
更に、安南(ベチナム)や我が国にも影響を与え、肥前有田でも、柿右衛門様式や鍋島様式、更には
京都の色絵陶器や色絵磁器を生み出し、幕末から明治に掛けて華やかな、色絵陶磁器が数多く作
られます。 当然人気があり、高価な焼き物ですので、「写し」も多く作られ、更に、贋作も数多く
出回っています。
1) 中国の色絵。
① 宋赤絵: 鉄分を含む灰色の陶土に、白化粧を施し透明釉を掛け、一度高温で焼成後、
赤、緑、黄の絵の具で、文様を描き、再度低温で焼き付ける方法です。
) 白く暖か味のある釉に、上記三色の原色で、草花や魚、兎などが、簡素で伸びやかな
筆で描かれています。
) 宋の赤絵は、磁洲窯系(中国河北省)の窯で焼かれいた事が次第に判明します。
② 明時代の景徳鎮の色絵。
宋が陶器であるのに対し、景徳鎮では磁器で制作されています。
) 明初期の頃は、赤一色の作品が多いです。
) 成化期(1465~1488年)に成ると、色の数も増えます。
a) 淡い緑青色を主体に、黄、紫が加わり、赤は極僅かに添えられる程度です。
b) この色絵は、「成化豆彩」と称され、明代第一の色絵磁器と呼ばれる程です。
) 景徳鎮官窯で、青花五彩の装飾方法が行われる様になります。
青花(コバルトによる染付)文様を施して、高温で焼成した後、色絵の具で上絵を付けた
物です。
) 嘉靖期(1522~1566年)に成ると、銘の付いた官窯の作品が多く作られ、作品の種類も
増大します。銘が付いたのは、民窯と区別する為と思われています。
景徳鎮の作品も、色絵磁器の生産が本流になって行きます。
) 景徳鎮の民窯で焼かれた、無銘の色絵磁器。(15~16世紀)
a) 下絵の染付けが無く、上絵のみの色絵磁器が多いです。尚、我が国では「古赤絵」と
呼んでいる作品です。
b) 赤色で輪郭を取り、その中に緑と黄で模様を描くのが特徴です。
c) 文様は、花鳥文、魚藻文、その他物語図など多彩で、自由闊達に描かれています。
)上記民窯では、「金襴手」と言われる金を用いた色絵磁器が現れます。
a) 民窯で作られた五彩磁に、金彩を加えた技法です。
b) 「古赤絵」の文様が具象的なのに対し、「金襴手」は細密画の様な幾何学文様を
多用しています。
c) 器の表面に緑、黄、赤などの五彩を施し、この上に金箔を焼付けた、大胆な文様です。
d) 作品の種類は、碗や鉢の他、水注、瓢型瓶など特徴的な物が多いです。
) 万暦期(1572~1620年)の官窯の色絵磁器(万暦赤絵)。
この時期の赤絵は、器全体に所狭しと青花と五彩が濃密に描き込まれているのが特徴です。
a) 青花の藍色も五彩の脇役ではなく、主役級に扱われています。
b) 古銅器の写した形や、大形な作品も多いです。
③ 明末期から清朝の景徳鎮の色絵磁器。
一時期景徳鎮の官窯での生産は中止されますが、代わりに民窯が栄えます。
天啓赤絵、南京赤絵、色絵祥瑞などの五彩磁器が生産されます。
) 清朝の官窯色絵磁器は、粉彩(洋彩)と呼ばれる、新しい色絵の技法が特徴です。
・ 康熙年間(1662~1722年)に御器廠(官窯)は復活し、景徳鎮で生産が再開されます。
a) 粉彩(ふんさい)とは、石英質の物質に鉛粉を混ぜた物(琺瑯「ほうろう」といいます)
を白磁の釉肌に塗り、この上に色絵で彩色する方法です。
b) 吸着性がある琺瑯を塗る事で、光沢が失われ、微妙な濃淡を出す事が可能になります。
c) この技法はヨーロッパの無線七宝を応用した方法です。
この技法を使った清朝を代表する、最高色絵磁器の傑作品に、「古月軒」があります。
これは、清朝の皇帝の座右に置かれる為に作られた、色絵磁器だそうです。
d) 粉彩は、西洋の油絵の様に描く事ができますので、洋彩とも呼ばれています。
以下次回に続きます。
物を色絵と呼びます。
二度焼きの色絵は、12~13世紀頃に中国の、宋の時代に完成された技術です。
尚、色が付けられた陶器は、古く唐三彩やペルシャ陶器にも見られますが、色絵とは区別されます。
宋赤絵と呼ばれるのが初期の色絵ですが、その後、明代の景徳鎮で、様々な色絵が作られます。
更に、安南(ベチナム)や我が国にも影響を与え、肥前有田でも、柿右衛門様式や鍋島様式、更には
京都の色絵陶器や色絵磁器を生み出し、幕末から明治に掛けて華やかな、色絵陶磁器が数多く作
られます。 当然人気があり、高価な焼き物ですので、「写し」も多く作られ、更に、贋作も数多く
出回っています。
1) 中国の色絵。
① 宋赤絵: 鉄分を含む灰色の陶土に、白化粧を施し透明釉を掛け、一度高温で焼成後、
赤、緑、黄の絵の具で、文様を描き、再度低温で焼き付ける方法です。
) 白く暖か味のある釉に、上記三色の原色で、草花や魚、兎などが、簡素で伸びやかな
筆で描かれています。
) 宋の赤絵は、磁洲窯系(中国河北省)の窯で焼かれいた事が次第に判明します。
② 明時代の景徳鎮の色絵。
宋が陶器であるのに対し、景徳鎮では磁器で制作されています。
) 明初期の頃は、赤一色の作品が多いです。
) 成化期(1465~1488年)に成ると、色の数も増えます。
a) 淡い緑青色を主体に、黄、紫が加わり、赤は極僅かに添えられる程度です。
b) この色絵は、「成化豆彩」と称され、明代第一の色絵磁器と呼ばれる程です。
) 景徳鎮官窯で、青花五彩の装飾方法が行われる様になります。
青花(コバルトによる染付)文様を施して、高温で焼成した後、色絵の具で上絵を付けた
物です。
) 嘉靖期(1522~1566年)に成ると、銘の付いた官窯の作品が多く作られ、作品の種類も
増大します。銘が付いたのは、民窯と区別する為と思われています。
景徳鎮の作品も、色絵磁器の生産が本流になって行きます。
) 景徳鎮の民窯で焼かれた、無銘の色絵磁器。(15~16世紀)
a) 下絵の染付けが無く、上絵のみの色絵磁器が多いです。尚、我が国では「古赤絵」と
呼んでいる作品です。
b) 赤色で輪郭を取り、その中に緑と黄で模様を描くのが特徴です。
c) 文様は、花鳥文、魚藻文、その他物語図など多彩で、自由闊達に描かれています。
)上記民窯では、「金襴手」と言われる金を用いた色絵磁器が現れます。
a) 民窯で作られた五彩磁に、金彩を加えた技法です。
b) 「古赤絵」の文様が具象的なのに対し、「金襴手」は細密画の様な幾何学文様を
多用しています。
c) 器の表面に緑、黄、赤などの五彩を施し、この上に金箔を焼付けた、大胆な文様です。
d) 作品の種類は、碗や鉢の他、水注、瓢型瓶など特徴的な物が多いです。
) 万暦期(1572~1620年)の官窯の色絵磁器(万暦赤絵)。
この時期の赤絵は、器全体に所狭しと青花と五彩が濃密に描き込まれているのが特徴です。
a) 青花の藍色も五彩の脇役ではなく、主役級に扱われています。
b) 古銅器の写した形や、大形な作品も多いです。
③ 明末期から清朝の景徳鎮の色絵磁器。
一時期景徳鎮の官窯での生産は中止されますが、代わりに民窯が栄えます。
天啓赤絵、南京赤絵、色絵祥瑞などの五彩磁器が生産されます。
) 清朝の官窯色絵磁器は、粉彩(洋彩)と呼ばれる、新しい色絵の技法が特徴です。
・ 康熙年間(1662~1722年)に御器廠(官窯)は復活し、景徳鎮で生産が再開されます。
a) 粉彩(ふんさい)とは、石英質の物質に鉛粉を混ぜた物(琺瑯「ほうろう」といいます)
を白磁の釉肌に塗り、この上に色絵で彩色する方法です。
b) 吸着性がある琺瑯を塗る事で、光沢が失われ、微妙な濃淡を出す事が可能になります。
c) この技法はヨーロッパの無線七宝を応用した方法です。
この技法を使った清朝を代表する、最高色絵磁器の傑作品に、「古月軒」があります。
これは、清朝の皇帝の座右に置かれる為に作られた、色絵磁器だそうです。
d) 粉彩は、西洋の油絵の様に描く事ができますので、洋彩とも呼ばれています。
以下次回に続きます。