現在の岐阜県多治見市北部から土岐市にかけて、美濃古窯と呼ばれる諸窯では、黄瀬戸、瀬戸黒、
志野、織部などの製品が焼かれていました。これらは、茶の湯の隆盛に伴い、茶道具や懐石料理の
器として使用される他、美術品としても認められている作品も多いです。
1) 作られた時代。
美濃古陶の最盛期は室町末期から江戸初期にかけての短い期間です。
更に、作品の種類によって、その最盛期も異なります。
① 黄瀬戸、瀬戸黒 : 永禄頃から天正にかけてです。(1558~1592年)
② 志野 : 天正から元和にかけてです。(1573~1624年)
③ 織部 : 慶長(1596~1615年)から寛永(1624~1644年)頃まで。
2) 桃山から江戸前期に掛けての、美濃の焼き物の真贋の判定は、国内の陶器の中でも最も微妙で
難しいとされています。
) 優れた美濃陶の作品の種類は、茶碗、水指、向付、香合など、茶陶が占めています。
これらの作品は高い評価を得ている物も多く、その為、贋作も多く出回っています。
) 贋作が出回る別の要因として、現在でも、当時と同様な土や制法、焼き方等があります。
従来と同じ伝統的な手法が取られて入る為に、判別し難い点が挙げられます。
) 絵の描写も複雑の物ではなく、造詣や装飾も簡単で、本物の近い写しや贋作がし易い事も
挙げられます。
) 志野や織部などの真作であっても、基準と成る物が少なく、「振れ」の範囲が大きい為、
真作と贋作の区別も難しい為に、自然と贋作も多くなります。
) 美濃の古陶は人気が高く、高価である為、手間隙をかけて、贋作が見破られない様に精巧に
作られている物が多いです。それ故、真贋は更に難しくなります。
3) 世に出回っている贋作。
① 真作はまず無いと思われる物で、贋作として出回っている物。
) 黄瀬戸の鉦鉢(どらばち)、黄瀬戸の六角猪口(盃)。
いずれも、色々な書物や図版に登場する作品です。それ故、世の中に多く存在し、出回っ
ている感じがしますが、真作は極めて稀な存在ですので、多く出回っているのは、
ほとんど贋作です。
) 瀬戸黒、志野、織部の茶碗、水指、向付、香合などで、状態の良い物。
多くの伝世品の様に、状態の良い真作の作品は出回っていません。
) みみづくの香炉、南蛮人の蜀台 もよく見かける贋作です。
② 時々見られる真作として、以下の物があります。
) 志野や織部の向付。
) 瀬戸黒や志野、織部の大傷(キズ)物、呼び継ぎの物、発掘品で生焼の茶碗など。
) 鉄釉や志野釉の水滴、小水注などがあります。
③ よく見る贋作。
志野向付類、盃、黄瀬戸六角盃、総織部盃、笹文小皿など。
④ 他時代の釉と混同しない事。
) 古黄瀬戸釉と、江戸中期以降の瀬戸の黄色釉(灰釉)とは似ています。
) 瀬戸黒と幕末の瀬戸焼との混同し易いです。
3) 見所と贋作。
① 黄瀬戸 : 備長炭など堅木の木灰を釉として使い、高温で焼成し、落ち着いた淡黄色に
見所があります。黄釉には梨地の様に、細かい貫入が入っています。
器形は、注文主に合わせて、嗜好性の強い物もあります。
a) 贋作で有っても、釉を古黄瀬戸に似せて貫入を付ける事は可能との事で、釉から贋作を
見破るのは困難との事です。黄瀬戸では「油揚手」が理想な釉とされていますが、現在では
再現されている様です。
b) 贋作の鑑定は、器形と絵付けから判断する必要があります。
贋作は完全に真作模倣できず、小細工を施し多様に見えるそうです。
② 瀬戸黒 : 瀬戸黒特有の艶のある漆黒釉です。マンガンを多量含む、「鬼板」を調合して
いる為、紫紺色に発色する事もあります。
全体に薄造りで、幅広く低い高台が、箆(へら)で削り取られています。
) 但し、釉のみで、真贋を判定するのは危険です。
) 瀬戸黒の茶碗には、真作を装った贋作が出回っています。
) 真作の瀬戸黒の中には、虹色のラスター彩を持つ物があります。
(無い真作も多いです。)贋作にはラスター彩はありません。
③ 織部: 織部の種類は多く、青織部、総織部、鳴海織部、赤織部、絵織部などがあります。
以下次回に続きます。
志野、織部などの製品が焼かれていました。これらは、茶の湯の隆盛に伴い、茶道具や懐石料理の
器として使用される他、美術品としても認められている作品も多いです。
1) 作られた時代。
美濃古陶の最盛期は室町末期から江戸初期にかけての短い期間です。
更に、作品の種類によって、その最盛期も異なります。
① 黄瀬戸、瀬戸黒 : 永禄頃から天正にかけてです。(1558~1592年)
② 志野 : 天正から元和にかけてです。(1573~1624年)
③ 織部 : 慶長(1596~1615年)から寛永(1624~1644年)頃まで。
2) 桃山から江戸前期に掛けての、美濃の焼き物の真贋の判定は、国内の陶器の中でも最も微妙で
難しいとされています。
) 優れた美濃陶の作品の種類は、茶碗、水指、向付、香合など、茶陶が占めています。
これらの作品は高い評価を得ている物も多く、その為、贋作も多く出回っています。
) 贋作が出回る別の要因として、現在でも、当時と同様な土や制法、焼き方等があります。
従来と同じ伝統的な手法が取られて入る為に、判別し難い点が挙げられます。
) 絵の描写も複雑の物ではなく、造詣や装飾も簡単で、本物の近い写しや贋作がし易い事も
挙げられます。
) 志野や織部などの真作であっても、基準と成る物が少なく、「振れ」の範囲が大きい為、
真作と贋作の区別も難しい為に、自然と贋作も多くなります。
) 美濃の古陶は人気が高く、高価である為、手間隙をかけて、贋作が見破られない様に精巧に
作られている物が多いです。それ故、真贋は更に難しくなります。
3) 世に出回っている贋作。
① 真作はまず無いと思われる物で、贋作として出回っている物。
) 黄瀬戸の鉦鉢(どらばち)、黄瀬戸の六角猪口(盃)。
いずれも、色々な書物や図版に登場する作品です。それ故、世の中に多く存在し、出回っ
ている感じがしますが、真作は極めて稀な存在ですので、多く出回っているのは、
ほとんど贋作です。
) 瀬戸黒、志野、織部の茶碗、水指、向付、香合などで、状態の良い物。
多くの伝世品の様に、状態の良い真作の作品は出回っていません。
) みみづくの香炉、南蛮人の蜀台 もよく見かける贋作です。
② 時々見られる真作として、以下の物があります。
) 志野や織部の向付。
) 瀬戸黒や志野、織部の大傷(キズ)物、呼び継ぎの物、発掘品で生焼の茶碗など。
) 鉄釉や志野釉の水滴、小水注などがあります。
③ よく見る贋作。
志野向付類、盃、黄瀬戸六角盃、総織部盃、笹文小皿など。
④ 他時代の釉と混同しない事。
) 古黄瀬戸釉と、江戸中期以降の瀬戸の黄色釉(灰釉)とは似ています。
) 瀬戸黒と幕末の瀬戸焼との混同し易いです。
3) 見所と贋作。
① 黄瀬戸 : 備長炭など堅木の木灰を釉として使い、高温で焼成し、落ち着いた淡黄色に
見所があります。黄釉には梨地の様に、細かい貫入が入っています。
器形は、注文主に合わせて、嗜好性の強い物もあります。
a) 贋作で有っても、釉を古黄瀬戸に似せて貫入を付ける事は可能との事で、釉から贋作を
見破るのは困難との事です。黄瀬戸では「油揚手」が理想な釉とされていますが、現在では
再現されている様です。
b) 贋作の鑑定は、器形と絵付けから判断する必要があります。
贋作は完全に真作模倣できず、小細工を施し多様に見えるそうです。
② 瀬戸黒 : 瀬戸黒特有の艶のある漆黒釉です。マンガンを多量含む、「鬼板」を調合して
いる為、紫紺色に発色する事もあります。
全体に薄造りで、幅広く低い高台が、箆(へら)で削り取られています。
) 但し、釉のみで、真贋を判定するのは危険です。
) 瀬戸黒の茶碗には、真作を装った贋作が出回っています。
) 真作の瀬戸黒の中には、虹色のラスター彩を持つ物があります。
(無い真作も多いです。)贋作にはラスター彩はありません。
③ 織部: 織部の種類は多く、青織部、総織部、鳴海織部、赤織部、絵織部などがあります。
以下次回に続きます。