わ! かった陶芸 (明窓窯)

 作陶や技術的方法、疑問、質問など陶芸全般 
 特に電動轆轤技法、各種装飾方法、釉薬などについてお話します。

素朴な疑問 153 本焼きの焼成時間は3?

2015-06-22 17:50:04 | 素朴な疑問
3) 近年は焼成時間が短くなっています。

 ①  焼成時間が短くなった理由(前回の続きです。)

  ) 温度上昇速度にメリハリを付けて短時間で焼成を終わらせる。

    極端ですが、大分以前に、素焼きが2時間、本焼きが4時間で終わる事が可能と宣伝する

    「ガス窯」がありました。果たしてどの位まで時間を短くする事が可能でしょうか?

    焼成には、最高温度と窯焚きの時間の長さが必要です。最高温度は釉を熔かすのに必要な

    温度であり、時間は素地を焼き締めるに必要な時間と、釉を平滑にする遺憾の長さです。

    最高温度は判り易いですが、時間はいまいち理解が出来ないかもしれません。

    メリハリを付ける事とは、以下の事と思われます。

   a) 低い温度で時間を掛けても余り役立ちません。必要な時(温度)に十分時間をかけます。

    素焼きした作品を本焼きする場合、素地はすでに750~800℃程度の温度に晒されています

    ので、この範囲内で時間を掛けても、素地にほとんど何の変化も起こりません。それ故、

    時間を掛ける事は、多くの場合無意味になります。

   b) 必要なのは、高い温度で長時間持続させる事です。

    950℃近辺より、酸化又は還元焼成に入ります。一般にこの過程では温度の上昇が鈍くなり

    ます。 燃料や空気の量との関係もありますが、主な理由は釉が熔ける為に、熱量が取ら

    れる事です。この段階(950~1200℃)でどんどん熱量を増やし温度急速に上げると、何らか

    の問題が発生するでしょうか?。熱量が増えると、素地は徐々に収縮します。収縮が早まる

    からと言って、釉薬も溶け始め軟化しますので、素地の収縮で、釉が素地から離れる事は

    考え難いです。但し、粘土には、急速な温度上昇に耐えられない物もあります。多くの場合、

    有機物を含んだ土です。この場合には急上昇は厳禁です。但し、市販の土では余り見る事は

    ありません。即ち、調合、精製された土が主だからです。但し、ご自分で採取した土は

    試し焼きをして確認が必要です。

    更に、釉に含まれる不純物(有機物など)が燃えガスが発生し、釉の表面より抜け出る為、

    釉の表面が痘痕(あばた)に成るかもしれません。但し、痘痕になっても、1200℃以上に

    なれば、釉も本格的に熔け、痘痕も消えますので、この段階での痘痕はほとんど問題に

    成りません。

   c) 施釉した作品を本焼きする場合には、施釉した作品が水を吸っている場合、この水分を

    蒸発させる為に、時間を掛ける必要があります。その為ゆっくり温度上昇が必要になります

    但し、水分がほとんど無い程度に乾燥していれば、比較的短時間で高温にする事が可能に

    なります。釉の水分が素地に浸み込みますので、水分が十分に抜けていないと内部の水が

    急激な蒸気となり、素地から抜け出る際、釉を下から浮き上がらせる事になります。

    それ故、施釉したら直ぐに焼成せず、数日置いてから詰めるか、施釉した作品を風通しの

    良い場所や、日陰などで天日干しし、水分を無す又は少なすると、急減な温度上昇も問題なく

    行う事が出来ます。

   d) 以上の事から、施釉時の水分が無くなっていれば、750~800℃までは、急激な温度上昇が

    可能になります。窯の容量や燃料によっては、ここまで3時間程度(従来の半分程度)で

    済ます事も出来ます。但し、窯の大きさや構造の違いによって、窯内の温度がバラツク場合が

    あります。特に急上昇の場合に起こり易いです。その為、本格的な焼成に入る前に、窯の

    温度を均一化する時間が欲しいです。

   e) 還元や酸化に必要なのは、温度と窯の雰囲気です。温度は約950~1200℃と言われ、

    それ1200℃以上は酸化焼成するのが一般的です。この範囲内で温度を急上昇させても、

    酸化還元に影響を与える事は少ないです。重要なのは、窯の雰囲気です。但し極端な酸化や

    還元では、早く温度を上げたくとも、温度上昇は鈍ります。

   f) 本当に必要な温度は、1200℃以上になります。この期間に長時間晒されて焼き物は、

    焼き締まり、釉も滑らかに熔けます。所定の温度(陶器の場合1230~1250℃)になったら

   「寝らし」作業に入り、一定時間温度を持続させます。技術書を読むと1時間程度の物が多い

   ですが、30分でも十分ですし、窯の容量にもよりますが、短い場合には10分で済む場合も

   あります。短い時間であれば、燃料費(電気代)も安くできます。流れ易い釉の場合は、

   「寝らし」時間は短めにする方が安全です。

   尚、焼成時間を短くした場合、最高温度をやや高めに設定した方が、良い結果が出ます。

以下次回に続きます。
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