3) 近年は焼成時間が短くなっています。
① 焼成時間が短くなった理由(前回の続きです。)
) 温度上昇速度にメリハリを付けて短時間で焼成を終わらせる。
極端ですが、大分以前に、素焼きが2時間、本焼きが4時間で終わる事が可能と宣伝する
「ガス窯」がありました。果たしてどの位まで時間を短くする事が可能でしょうか?
焼成には、最高温度と窯焚きの時間の長さが必要です。最高温度は釉を熔かすのに必要な
温度であり、時間は素地を焼き締めるに必要な時間と、釉を平滑にする遺憾の長さです。
最高温度は判り易いですが、時間はいまいち理解が出来ないかもしれません。
メリハリを付ける事とは、以下の事と思われます。
a) 低い温度で時間を掛けても余り役立ちません。必要な時(温度)に十分時間をかけます。
素焼きした作品を本焼きする場合、素地はすでに750~800℃程度の温度に晒されています
ので、この範囲内で時間を掛けても、素地にほとんど何の変化も起こりません。それ故、
時間を掛ける事は、多くの場合無意味になります。
b) 必要なのは、高い温度で長時間持続させる事です。
950℃近辺より、酸化又は還元焼成に入ります。一般にこの過程では温度の上昇が鈍くなり
ます。 燃料や空気の量との関係もありますが、主な理由は釉が熔ける為に、熱量が取ら
れる事です。この段階(950~1200℃)でどんどん熱量を増やし温度急速に上げると、何らか
の問題が発生するでしょうか?。熱量が増えると、素地は徐々に収縮します。収縮が早まる
からと言って、釉薬も溶け始め軟化しますので、素地の収縮で、釉が素地から離れる事は
考え難いです。但し、粘土には、急速な温度上昇に耐えられない物もあります。多くの場合、
有機物を含んだ土です。この場合には急上昇は厳禁です。但し、市販の土では余り見る事は
ありません。即ち、調合、精製された土が主だからです。但し、ご自分で採取した土は
試し焼きをして確認が必要です。
更に、釉に含まれる不純物(有機物など)が燃えガスが発生し、釉の表面より抜け出る為、
釉の表面が痘痕(あばた)に成るかもしれません。但し、痘痕になっても、1200℃以上に
なれば、釉も本格的に熔け、痘痕も消えますので、この段階での痘痕はほとんど問題に
成りません。
c) 施釉した作品を本焼きする場合には、施釉した作品が水を吸っている場合、この水分を
蒸発させる為に、時間を掛ける必要があります。その為ゆっくり温度上昇が必要になります
但し、水分がほとんど無い程度に乾燥していれば、比較的短時間で高温にする事が可能に
なります。釉の水分が素地に浸み込みますので、水分が十分に抜けていないと内部の水が
急激な蒸気となり、素地から抜け出る際、釉を下から浮き上がらせる事になります。
それ故、施釉したら直ぐに焼成せず、数日置いてから詰めるか、施釉した作品を風通しの
良い場所や、日陰などで天日干しし、水分を無す又は少なすると、急減な温度上昇も問題なく
行う事が出来ます。
d) 以上の事から、施釉時の水分が無くなっていれば、750~800℃までは、急激な温度上昇が
可能になります。窯の容量や燃料によっては、ここまで3時間程度(従来の半分程度)で
済ます事も出来ます。但し、窯の大きさや構造の違いによって、窯内の温度がバラツク場合が
あります。特に急上昇の場合に起こり易いです。その為、本格的な焼成に入る前に、窯の
温度を均一化する時間が欲しいです。
e) 還元や酸化に必要なのは、温度と窯の雰囲気です。温度は約950~1200℃と言われ、
それ1200℃以上は酸化焼成するのが一般的です。この範囲内で温度を急上昇させても、
酸化還元に影響を与える事は少ないです。重要なのは、窯の雰囲気です。但し極端な酸化や
還元では、早く温度を上げたくとも、温度上昇は鈍ります。
f) 本当に必要な温度は、1200℃以上になります。この期間に長時間晒されて焼き物は、
焼き締まり、釉も滑らかに熔けます。所定の温度(陶器の場合1230~1250℃)になったら
「寝らし」作業に入り、一定時間温度を持続させます。技術書を読むと1時間程度の物が多い
ですが、30分でも十分ですし、窯の容量にもよりますが、短い場合には10分で済む場合も
あります。短い時間であれば、燃料費(電気代)も安くできます。流れ易い釉の場合は、
「寝らし」時間は短めにする方が安全です。
尚、焼成時間を短くした場合、最高温度をやや高めに設定した方が、良い結果が出ます。
以下次回に続きます。
① 焼成時間が短くなった理由(前回の続きです。)
) 温度上昇速度にメリハリを付けて短時間で焼成を終わらせる。
極端ですが、大分以前に、素焼きが2時間、本焼きが4時間で終わる事が可能と宣伝する
「ガス窯」がありました。果たしてどの位まで時間を短くする事が可能でしょうか?
焼成には、最高温度と窯焚きの時間の長さが必要です。最高温度は釉を熔かすのに必要な
温度であり、時間は素地を焼き締めるに必要な時間と、釉を平滑にする遺憾の長さです。
最高温度は判り易いですが、時間はいまいち理解が出来ないかもしれません。
メリハリを付ける事とは、以下の事と思われます。
a) 低い温度で時間を掛けても余り役立ちません。必要な時(温度)に十分時間をかけます。
素焼きした作品を本焼きする場合、素地はすでに750~800℃程度の温度に晒されています
ので、この範囲内で時間を掛けても、素地にほとんど何の変化も起こりません。それ故、
時間を掛ける事は、多くの場合無意味になります。
b) 必要なのは、高い温度で長時間持続させる事です。
950℃近辺より、酸化又は還元焼成に入ります。一般にこの過程では温度の上昇が鈍くなり
ます。 燃料や空気の量との関係もありますが、主な理由は釉が熔ける為に、熱量が取ら
れる事です。この段階(950~1200℃)でどんどん熱量を増やし温度急速に上げると、何らか
の問題が発生するでしょうか?。熱量が増えると、素地は徐々に収縮します。収縮が早まる
からと言って、釉薬も溶け始め軟化しますので、素地の収縮で、釉が素地から離れる事は
考え難いです。但し、粘土には、急速な温度上昇に耐えられない物もあります。多くの場合、
有機物を含んだ土です。この場合には急上昇は厳禁です。但し、市販の土では余り見る事は
ありません。即ち、調合、精製された土が主だからです。但し、ご自分で採取した土は
試し焼きをして確認が必要です。
更に、釉に含まれる不純物(有機物など)が燃えガスが発生し、釉の表面より抜け出る為、
釉の表面が痘痕(あばた)に成るかもしれません。但し、痘痕になっても、1200℃以上に
なれば、釉も本格的に熔け、痘痕も消えますので、この段階での痘痕はほとんど問題に
成りません。
c) 施釉した作品を本焼きする場合には、施釉した作品が水を吸っている場合、この水分を
蒸発させる為に、時間を掛ける必要があります。その為ゆっくり温度上昇が必要になります
但し、水分がほとんど無い程度に乾燥していれば、比較的短時間で高温にする事が可能に
なります。釉の水分が素地に浸み込みますので、水分が十分に抜けていないと内部の水が
急激な蒸気となり、素地から抜け出る際、釉を下から浮き上がらせる事になります。
それ故、施釉したら直ぐに焼成せず、数日置いてから詰めるか、施釉した作品を風通しの
良い場所や、日陰などで天日干しし、水分を無す又は少なすると、急減な温度上昇も問題なく
行う事が出来ます。
d) 以上の事から、施釉時の水分が無くなっていれば、750~800℃までは、急激な温度上昇が
可能になります。窯の容量や燃料によっては、ここまで3時間程度(従来の半分程度)で
済ます事も出来ます。但し、窯の大きさや構造の違いによって、窯内の温度がバラツク場合が
あります。特に急上昇の場合に起こり易いです。その為、本格的な焼成に入る前に、窯の
温度を均一化する時間が欲しいです。
e) 還元や酸化に必要なのは、温度と窯の雰囲気です。温度は約950~1200℃と言われ、
それ1200℃以上は酸化焼成するのが一般的です。この範囲内で温度を急上昇させても、
酸化還元に影響を与える事は少ないです。重要なのは、窯の雰囲気です。但し極端な酸化や
還元では、早く温度を上げたくとも、温度上昇は鈍ります。
f) 本当に必要な温度は、1200℃以上になります。この期間に長時間晒されて焼き物は、
焼き締まり、釉も滑らかに熔けます。所定の温度(陶器の場合1230~1250℃)になったら
「寝らし」作業に入り、一定時間温度を持続させます。技術書を読むと1時間程度の物が多い
ですが、30分でも十分ですし、窯の容量にもよりますが、短い場合には10分で済む場合も
あります。短い時間であれば、燃料費(電気代)も安くできます。流れ易い釉の場合は、
「寝らし」時間は短めにする方が安全です。
尚、焼成時間を短くした場合、最高温度をやや高めに設定した方が、良い結果が出ます。
以下次回に続きます。
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