わ! かった陶芸 (明窓窯)

 作陶や技術的方法、疑問、質問など陶芸全般 
 特に電動轆轤技法、各種装飾方法、釉薬などについてお話します。

現代陶芸56(藤原啓2)

2012-02-25 21:41:35 | 現代陶芸と工芸家達
前回に続き、藤原啓氏の話を続けます。

② 藤原啓の陶芸

  ) 手回し轆轤を使って成形しています。

    「茶碗の口を作る時、起伏を付けなければいけませんが、手ロクロ自体のスピードが一定でなく

     完全にスムーズに動いておらず、中心が取り難いので自然に起伏がつき、また高台を削る

     時にも、自然に歪みが出て、かえって面白い作品が作れる場合が多い。」と語っています。

  ) 備前焼は一つ挽きで作る。

    どんな小さな作品も、一個づつ土を轆轤上に置いて成形します。

    他の窯場では、「棒挽き」といって、轆轤に大きな塊を置き、その塊の土から皿や茶碗等を

    数個~数十個挽いてするのが、一般的です。

    備前が一つ挽きの理由は、底になる土を叩き締め、その上に土を置く事により、底割れを

    防ぐ事が出来るからです。

  ) 備前の土は手触りが良くて、粘りが強く大きな作品でも、だれる事なく一気に轆轤挽きする

     事が可能です。但し肉厚に差があったり、急なカーブを付けると、割れが出ると言われています。

     更に、収縮率が大きく約20%程度(一般の土は12~13%)有るとの事です。

  ) 備前焼きの作品は、大変人気があり高価な物が多いです。

     特に「窯変」と呼ばれる作品は、顕著です。その理由は窯焚きに一週間~十数日掛かる事と、

     出来の良い作品の割合が少ない為と言われています。良くて一割程度で一窯で数個と言う
 
     場合も有るそうです。

  ) 焼きの良い作品を作るには、「窯詰」も大切です。

    「火の廻り具合、作品と作品の距離、くっつき具合、大小の作品の置き具合、火の焚き口からの

    距離など、いっさいが作品の焼き具合に影響します。」と藤原啓氏は述べています。

    「作品の何処にどの様な文様を付けるかを考え、火の流れ方、火の動き、松灰の飛び方向と、

     灰の量などを総合判断して窯詰めを行いますので、最も苦労する作業である。」とも記して

     います。「窯変」が取れる場所は、ある程度決っていて、その位置に置きますが、絶対的な

     物でないそうです。窯詰めには3日~一週間程度の日数が必要との事です。

     尚、啓氏の窯は、一度に大小の作品が800~1000個位入る大きさで、年に1~2度窯焚きを

     するそうです。それ故、失敗しない様に心掛けているそうですが、窯を開けるまで判別できず、

     苦労が絶えません。

  ) 窯焚き: 備前の土は火に対して非常に敏感で、少しの無理でも「ひび割れ」や「破裂」が

     起こります。

   a) 土の耐火度が低い為、時間を掛けて少しづつ温度を上げる方法ですので、非経済的で、

     非科学的なのが備前焼きなのです。

   b) 焼成は酸化焼成が基本ですが、酸化還元を交互に行いながら、温度を上昇させます。

   c) 平均的な焼き方ではなく、時には急に温度を上げたり、逆に焚き口を大きく開いて温度を

     急激に下げる作業を行います。これは温度上昇と共に、灰が熔け流れ落ちてきます。

     この状態では、器肌がピカピカに光り、備前焼特有の渋みが出ません。温度を急降下させる

     事により、灰の流れを止めます。その後、温度を上げて器に降り積もった灰を熔かし、

     より重厚な灰被りを造りだします。

   d) 「窯変」を採る為には、作品をい「じめる事」とも大切と述べています。

     即ち、作品に直接薪をぶつけたり、窯の横の小窓を開けて冷たい空気を送りこみます。

     こうする事により、作品の向きを変えたり、傷や変形をもたらし、灰の熔け具合にも変化が

     出るそうです。

   f) 温度計やゼーゲルコーンを使わず、炎の色と煙突からの煙(炎)から、焼きの終わりを
  
      判断しているとの事です。尚、焼成温度は1300℃との事です。

  ) 最後に、藤原 啓氏の好きな言葉に、「夢」「陶酔」「無心」「豪放」が有ります。

 尚、「窯変」の種類などは次回に述べる予定です。


 次回(藤原雄)に続きます。

 参考文献: 日本のやきもの 備前 文=藤原啓、雄氏、(株)淡交社(1985年 初版)
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