前回に続き、藤原啓氏の話を続けます。
② 藤原啓の陶芸
) 手回し轆轤を使って成形しています。
「茶碗の口を作る時、起伏を付けなければいけませんが、手ロクロ自体のスピードが一定でなく
完全にスムーズに動いておらず、中心が取り難いので自然に起伏がつき、また高台を削る
時にも、自然に歪みが出て、かえって面白い作品が作れる場合が多い。」と語っています。
) 備前焼は一つ挽きで作る。
どんな小さな作品も、一個づつ土を轆轤上に置いて成形します。
他の窯場では、「棒挽き」といって、轆轤に大きな塊を置き、その塊の土から皿や茶碗等を
数個~数十個挽いてするのが、一般的です。
備前が一つ挽きの理由は、底になる土を叩き締め、その上に土を置く事により、底割れを
防ぐ事が出来るからです。
) 備前の土は手触りが良くて、粘りが強く大きな作品でも、だれる事なく一気に轆轤挽きする
事が可能です。但し肉厚に差があったり、急なカーブを付けると、割れが出ると言われています。
更に、収縮率が大きく約20%程度(一般の土は12~13%)有るとの事です。
) 備前焼きの作品は、大変人気があり高価な物が多いです。
特に「窯変」と呼ばれる作品は、顕著です。その理由は窯焚きに一週間~十数日掛かる事と、
出来の良い作品の割合が少ない為と言われています。良くて一割程度で一窯で数個と言う
場合も有るそうです。
) 焼きの良い作品を作るには、「窯詰」も大切です。
「火の廻り具合、作品と作品の距離、くっつき具合、大小の作品の置き具合、火の焚き口からの
距離など、いっさいが作品の焼き具合に影響します。」と藤原啓氏は述べています。
「作品の何処にどの様な文様を付けるかを考え、火の流れ方、火の動き、松灰の飛び方向と、
灰の量などを総合判断して窯詰めを行いますので、最も苦労する作業である。」とも記して
います。「窯変」が取れる場所は、ある程度決っていて、その位置に置きますが、絶対的な
物でないそうです。窯詰めには3日~一週間程度の日数が必要との事です。
尚、啓氏の窯は、一度に大小の作品が800~1000個位入る大きさで、年に1~2度窯焚きを
するそうです。それ故、失敗しない様に心掛けているそうですが、窯を開けるまで判別できず、
苦労が絶えません。
) 窯焚き: 備前の土は火に対して非常に敏感で、少しの無理でも「ひび割れ」や「破裂」が
起こります。
a) 土の耐火度が低い為、時間を掛けて少しづつ温度を上げる方法ですので、非経済的で、
非科学的なのが備前焼きなのです。
b) 焼成は酸化焼成が基本ですが、酸化還元を交互に行いながら、温度を上昇させます。
c) 平均的な焼き方ではなく、時には急に温度を上げたり、逆に焚き口を大きく開いて温度を
急激に下げる作業を行います。これは温度上昇と共に、灰が熔け流れ落ちてきます。
この状態では、器肌がピカピカに光り、備前焼特有の渋みが出ません。温度を急降下させる
事により、灰の流れを止めます。その後、温度を上げて器に降り積もった灰を熔かし、
より重厚な灰被りを造りだします。
d) 「窯変」を採る為には、作品をい「じめる事」とも大切と述べています。
即ち、作品に直接薪をぶつけたり、窯の横の小窓を開けて冷たい空気を送りこみます。
こうする事により、作品の向きを変えたり、傷や変形をもたらし、灰の熔け具合にも変化が
出るそうです。
f) 温度計やゼーゲルコーンを使わず、炎の色と煙突からの煙(炎)から、焼きの終わりを
判断しているとの事です。尚、焼成温度は1300℃との事です。
) 最後に、藤原 啓氏の好きな言葉に、「夢」「陶酔」「無心」「豪放」が有ります。
尚、「窯変」の種類などは次回に述べる予定です。
次回(藤原雄)に続きます。
参考文献: 日本のやきもの 備前 文=藤原啓、雄氏、(株)淡交社(1985年 初版)
② 藤原啓の陶芸
) 手回し轆轤を使って成形しています。
「茶碗の口を作る時、起伏を付けなければいけませんが、手ロクロ自体のスピードが一定でなく
完全にスムーズに動いておらず、中心が取り難いので自然に起伏がつき、また高台を削る
時にも、自然に歪みが出て、かえって面白い作品が作れる場合が多い。」と語っています。
) 備前焼は一つ挽きで作る。
どんな小さな作品も、一個づつ土を轆轤上に置いて成形します。
他の窯場では、「棒挽き」といって、轆轤に大きな塊を置き、その塊の土から皿や茶碗等を
数個~数十個挽いてするのが、一般的です。
備前が一つ挽きの理由は、底になる土を叩き締め、その上に土を置く事により、底割れを
防ぐ事が出来るからです。
) 備前の土は手触りが良くて、粘りが強く大きな作品でも、だれる事なく一気に轆轤挽きする
事が可能です。但し肉厚に差があったり、急なカーブを付けると、割れが出ると言われています。
更に、収縮率が大きく約20%程度(一般の土は12~13%)有るとの事です。
) 備前焼きの作品は、大変人気があり高価な物が多いです。
特に「窯変」と呼ばれる作品は、顕著です。その理由は窯焚きに一週間~十数日掛かる事と、
出来の良い作品の割合が少ない為と言われています。良くて一割程度で一窯で数個と言う
場合も有るそうです。
) 焼きの良い作品を作るには、「窯詰」も大切です。
「火の廻り具合、作品と作品の距離、くっつき具合、大小の作品の置き具合、火の焚き口からの
距離など、いっさいが作品の焼き具合に影響します。」と藤原啓氏は述べています。
「作品の何処にどの様な文様を付けるかを考え、火の流れ方、火の動き、松灰の飛び方向と、
灰の量などを総合判断して窯詰めを行いますので、最も苦労する作業である。」とも記して
います。「窯変」が取れる場所は、ある程度決っていて、その位置に置きますが、絶対的な
物でないそうです。窯詰めには3日~一週間程度の日数が必要との事です。
尚、啓氏の窯は、一度に大小の作品が800~1000個位入る大きさで、年に1~2度窯焚きを
するそうです。それ故、失敗しない様に心掛けているそうですが、窯を開けるまで判別できず、
苦労が絶えません。
) 窯焚き: 備前の土は火に対して非常に敏感で、少しの無理でも「ひび割れ」や「破裂」が
起こります。
a) 土の耐火度が低い為、時間を掛けて少しづつ温度を上げる方法ですので、非経済的で、
非科学的なのが備前焼きなのです。
b) 焼成は酸化焼成が基本ですが、酸化還元を交互に行いながら、温度を上昇させます。
c) 平均的な焼き方ではなく、時には急に温度を上げたり、逆に焚き口を大きく開いて温度を
急激に下げる作業を行います。これは温度上昇と共に、灰が熔け流れ落ちてきます。
この状態では、器肌がピカピカに光り、備前焼特有の渋みが出ません。温度を急降下させる
事により、灰の流れを止めます。その後、温度を上げて器に降り積もった灰を熔かし、
より重厚な灰被りを造りだします。
d) 「窯変」を採る為には、作品をい「じめる事」とも大切と述べています。
即ち、作品に直接薪をぶつけたり、窯の横の小窓を開けて冷たい空気を送りこみます。
こうする事により、作品の向きを変えたり、傷や変形をもたらし、灰の熔け具合にも変化が
出るそうです。
f) 温度計やゼーゲルコーンを使わず、炎の色と煙突からの煙(炎)から、焼きの終わりを
判断しているとの事です。尚、焼成温度は1300℃との事です。
) 最後に、藤原 啓氏の好きな言葉に、「夢」「陶酔」「無心」「豪放」が有ります。
尚、「窯変」の種類などは次回に述べる予定です。
次回(藤原雄)に続きます。
参考文献: 日本のやきもの 備前 文=藤原啓、雄氏、(株)淡交社(1985年 初版)
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