わ! かった陶芸 (明窓窯)

 作陶や技術的方法、疑問、質問など陶芸全般 
 特に電動轆轤技法、各種装飾方法、釉薬などについてお話します。

現代陶芸144(三島喜美代)

2012-06-20 21:47:23 | 現代陶芸と工芸家達

転写法により、新聞や雑誌の記事を粘土製の本体に焼付ける作品を通し、現代の情報の氾濫と

多様化及び偽情報などが蔓延し、その恐ろしさと危険性を表現している様に見える巨大な作品を

作り続けているのが、大阪在住の三島 喜美代氏です。

1) 三島 喜美代(みしま きみよ): 1932年(昭和7年)~ 

 ① 経歴

   ) 1932年 大阪市十三(じゅうそう)で、志水喜代次氏の長女として生まれます。

      1951年 大阪府立扇町高等学校を卒業します。在学中に、関西行動展に出品しています。

      1952年 三島茂司氏が主宰する、アトリエ・モンターニュー洋画研究所に入所します。

       翌年 三島氏と結婚します。

      1954~1969年 独立美術協会に所属します。雑誌や新聞を画面に貼り付ける、コラージュを

       駆使した絵画を制作し、注目を集めます。1963年同協会の独立賞・須田賞を受賞します。

      1964年 「現代美術の動向展示」(京都国立近代美術館主催)と「国際青年作家展示」に

       出品します。

      1965  「シェル美術賞展」で佳作賞を受賞します。翌年には「毎日美術コンクール展」に

       出品します。

      1971年 新聞や雑誌の記事を転写の技法を用いて、土に焼き付ける作品を作る様になります。

       同年毎日新聞社主催の「日本陶芸展・前衛部門」に「包」を出品します。

        新聞紙で何物かを包んだ様な形状をした、大物2個と小物1個の作品です。

      1974年 イタリア・ファツェンツァ「国際陶芸展」で金賞を受賞します。

       同年「日本国際美術展」(毎日新聞社主催)に招待出品します。その他「現代美術四半世紀展」

       (セントラル美術館)、「現代日本美術展」(毎日新聞社主催)に出品しています。

      1976年 「ブラッドホード国際版画ビエンナーレ展」、「クラコウ国際版画ビエンナーレ展」、

       「日本陶磁器名品展」(ドレスデン)、「現代日本陶芸展」(オーストラリア・ニユージーランド)

       などの海外の展示会に出品しています。

      1978年 「現代日本の陶芸展」(京都国立近代美術館)、「現代工芸作家展」(京都市美術館)

       などに出品します。

      1979年 「今日の日本展」(アメリカ・デンバー)、「まがいものの光景、現代美術とユーモア展」

       (国立国際美術館)などに出品しています。

      その後も、台北「日華現代陶芸展」、「現代日本陶芸展」(ローマ)、「日本の現代陶芸・カナダ

      巡回展」「日本現代美術展」(スイス市立美術館)、「インパクト・アート展」(韓国ソウル)などの

      他、パリ、ニュヨーク、ボストン、エジプトなど多くの外国でも作品を出品しています。

    1986~7 年 ロックフェラー財団奨学金を得てニューヨークへ留学しています。

  ・ 個展も、画廊あの(1964 大阪)、南画廊(1974 東京)、ギャラリー16 (1988 京都)、

     INAXギャラリー (1990 東京、大阪)、カサハラ画廊 (1992 大阪)、 村松画廊(2001 東京)

      ギャラリー新居( 2004 東京・大阪)、伊勢現代美術館 (2004 三重)など多数開催しています。

  ② 三島 喜美代氏の陶芸

   ) 絵画から陶芸へ

     a) 新聞や雑誌などの記事を切り抜き、キャンパスに貼り付け、その上に彩色するコラージュの

      絵画を製作し、独立美術協会で活躍していましたが、やがてより立体的な作品に印刷物を

      貼り付ける(焼き付ける)作品を作る様になります。その手段に土を選びます。

    b) 陶芸を独学で学ぶ

      陶芸の技術は、陶芸家の工房や陶芸教室を訪ねたり、陶芸の技術書を読んで習得したそうで

      特別師匠に師事する事は無かったとの事です。

  ) 転写の技法による絵付け

     転写の技法は明治時代から、量産陶磁器に使用されていました。

     胴版画による転写法明治20年頃より、その後は石版画が使われていました。

     この量産向けの技法を芸術作品に取り入れた事が、目新しい事と見なされ注目を集めます。

     現在では、下絵用と上絵用の転写紙が市販され、どなたでも簡単に使用する事ができます。

  ) 三島氏の技法

    a) 粘土で板状のタタラを作り、組み合わせて作品を作ります。これを素焼き後白いマット釉を施し

       本焼きします。上絵付け用のインクで、シルクスクリーン印刷した転写紙を水で貼り付け、

       800℃程度の温度で焼付けます。

    b) 粘土と磁土を半々に混ぜ、麺棒で薄く延ばし、その両面に下絵用の転写紙で絵付けし、

       軟らかい内に形を作ります。 そうする事により、自由な形や豊かな表情の形を作る事が

       できます。 その後透明釉をスプレー掛けし本焼きします。

  ) 三島氏の作品

   a) 「PACKSGE-78」(1978年) 京都国立近代美術館蔵

      ジュースの瓶の様な物約30個を、新聞紙で包み、乱雑に置かれている作品です。

   b) 「PAPER BAG-80」 (高 52 X 横 39 X 奥行 28cm)(1980年)

      セメント袋の様な袋に、何かが入っている様子の作品で、開けられた口はネジって閉められて

      います。大きな赤文字とその下に黒文字が印刷されています。

   c) 「NEWS PAPER-P」(高 55.5 X 横 40.5 X 奥行 27.5cm)(1980~1981年)

      積み上げられた新聞紙の束や、紐が掛けられた新聞紙の束、日本の新聞、英字新聞などが、

      やや乱れて積まれている作品です。

   d) 「COLUMN(コラム)-1」(高 145 X 径 100 X 奥行 98cm)(1983~1984年)

      鋲(びょう)が打たれた黒いドラム缶の上部に、継ぎの当たったブルーシートが被せられ、

      ロープが掛かっている作品です。

   e) 「NEWS PAPER-84-W」(高 135X 横 110 X 奥行 105cm)(1984年)

      くしゃくしゃに丸められた英字新聞がうず高く積み上げらている作品です。

      中央縦にロープが掛けられ、束ねてあります。これらが陶芸用の窯の中に置かれています。

     これらの作品は、あふれる情報とその儚い(はかない)存在を表現し、その情報の危うさや

     恐ろしさを表現したものと思われています。

以下次回(藤田昭子)に続きます。     

コメント (1)    この記事についてブログを書く
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする
« 現代陶芸143(坪井明日香2) | トップ | 現代陶芸145(藤田昭子) »

1 コメント

コメント日が  古い順  |   新しい順
転写紙、絵具について (今野 四郎)
2021-09-17 11:36:19
NHKの日曜美術館で三島喜美代さんを知り、興味を持ちました。シルクスクリーンの版を作成することまではできるようになりました。陶芸作品に転写する転写紙、絵具をネットなどで探しましたがなかなか見つかりません。彼女の使用している転写紙、絵具の情報をお持ちでしたらお教えいただければ幸いです。
返信する

コメントを投稿

現代陶芸と工芸家達」カテゴリの最新記事